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#190 「ブレックス・ブレッディ事件」大阪地裁

2007年9月5日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第190号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【ブレックス(以下、BK社)・ブレッディ(以下、BD社)事件・大阪地裁判決】(2006年8月31日)

▽ <主な争点>
業務委託契約に基づく店長の労働者性

1.事件の概要は?

本件は、BD社がBK社とのフランチャイズ契約に基づいて経営する店舗において、店長として労務を提供したXが、(1)BD社に対して、平成16年9月1日から同月15日までの、最低賃金法に定める最低賃金額から既払額を控除した未払い賃金8,970円(日額598円の15日分)と、16年9月16日から同年11月8日までの、時間外労働・深夜労働および休日労働の割増賃金など84万0611円、および上記各賃金の合計金額(84万9581円)と同額の付加金、ならびに不法行為または労働契約上の債務不履行に基づく損害賠償として350万円(慰謝料300万円、弁護士費用50万円)を、(2)BD社の取締役であるAおよびCに対して、会社法の施行に伴う廃止前の有限会社法30条の3第1項* に基づき、上記(1)と同額の損害金、および(3)BK社に対し、不法行為に基づく損害賠償として、上記(2)と同額の損害金の支払いを請求したもの。


* 有限会社法30条の3第1項
「取締役がその職務を行うにつき、悪意または重大なる過失ありたるときはその取締役は第三者に対してもまた連帯して損害賠償の責に任ず」

2.前提事実および事件の経過は?

<BK社、BD社およびXについて>

★ BK社は、各種菓子類の製造、販売などを目的とする会社であり、パンの製造、販売などを行う各加盟店(以下「ベイビーブレッド」という)とフランチャイズ契約を締結している。

★ BD社は、16年8月31日に設立された、パンの製造、加工および販売を目的とする会社で、Aは同社の代表取締役、Cは取締役である。

★ BK社とBD社は、16年8月31日、BD社をフランチャイジー(チェーンストアの1つ)として、南海高野線初芝駅構内にあるベイビーブレッド初芝店(以下「本件店舗」という)の出店および経営などに関するフランチャイズ契約(以下、「本件フランチャイズ契約」という)を締結した。

★ X(昭和38年生)は、同年9月1日、BD社との間で本件店舗にて労務を提供するとの合意をし、同年11月8日まで本件店舗の店長として就労した者である。

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<Xの採用から退職までの経緯および勤務状況等について>

▼ BD社のAおよびCはそれぞれ別会社の経営に携わっており、パンの製造・販売に関する店舗の経営に携わった経験がなかったため、本件フランチャイズ契約の締結にあたり、具体的な店舗経営を第三者に依頼することとし、BK社のO専務に同社から本件店舗店長の派遣を依頼した。

▼ BK社はBD社の求めに応じて、本件店舗の店長候補者を自社の従業員として採用し、BD社に出向させる方針で、公共職業安定所の求人票により本件店舗の店長候補者を募集し、Xはこれに応募した。

▼ BK社は面接後、同社では採用しないが本件店舗での就労を希望するのであれば、BD社に紹介する旨をXに伝えたところ、Xがこれを了承したので、本件店舗の店長候補として、Aに紹介した。

▼ Aは、BK社での店長研修が同年9月1日から予定されていたことから、同日の研修後にXの採用面接を行った結果、Xが本件店舗での労務提供の条件に同意したので、本件店舗の店長として採用することにした。

★ Xの採用条件は、「(1)本件店舗の出店、運営に関する費用はBD社が負担する、(2)BD社はXに対して、店長として本件店舗の管理運営を任せ、Xとの間で業務委託契約を締結する、(3)報酬は、同年9月1日から同月15日までの研修期間につき日当5,000円、同月16日からは月額25万円とし、売上げによる利益が出たらさらに加算する、(4)税務申告はXが個人事業者として行い、BD社では社会保険、雇用保険に加入しない」というものであった。

★ XはAおよびCに対し、社会保険に加入するよう求めたところ、A自身が経営するM社(青果業)において、1、2ヵ月間程度、社会保険および雇用保険に加入することにし、Xはこれに応じた。

▼ Xは上記の研修が終了した翌日から本件店舗の店長として、具体的な労務の提供を開始し、同年11月8日まで店長として就労したが、体調を崩して以後退職した。

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