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#166 「住友スリーエム事件」東京地裁

2006年12月20日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第166号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【住友スリーエム(以下、S社)事件・東京地裁判決】(2006年2月27日)

▽ <主な争点>
新人事処遇制度への移行に伴う職務格付け

1.事件の概要は?

本件は、S社の従業員であるXが平成15年1月から施行されている人事処遇制度において、同社がXをプロフェッショナルラダー(以下「Pラダー」という)ジョブグレード(以下「JG」という)8の地位に格付けしたのは不当であり、PラダーJG9に格付けるべきであったと主張し、PラダーJG9の地位にあったことの確認とPラダーJG9ならば得られたであろう賞与額と現実に支給された賞与額との差額合計約80万円の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<XおよびS社の旧制度について>

★ XはS社の従業員であり、14年12月当時、研磨材・テープ製品製造部研磨材製造技術室の主任として勤務していた。なお、S社はユニオンショップ制を採用しており、Xは3M労働組合(以下「労組」という)に所属している。

★ S社では、14年12月まで職能資格制度における職群による処遇を前提とする賃金制度(以下「旧制度」という)をとっており、Xの当時の地位は主任170号俸(基本給52万5215円)であった。

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<新人事処遇制度の実施等について>

▼ S社は15年1月から、職務(仕事・役割)を格付けするジョブグレード制度(以下「新人事処遇制度」という)を実施することになった。

★ 新人事処遇制度は、まず各職務に要求されるレベルを整理し、格付けランク基準を設けた上、各社員が現に担当している職務の遂行状況(パフォーマンス)を評価して格付け処遇するものである。なお、S社は労組との間で労働協約を取り交わし、新人事処遇制度を承認する旨合意している。

▼ S社は新人事処遇制度実施に伴い、分析評価等の結果を総合し、各社員間に評価の偏りがないよう比較検証した結果、Xを技術職であるPラダーとし、JG格付けについては、JG8が相当と判断した。この格付けにより、Xの基本給は月額46万5000円となり、調整給として月額6万0215円が支給されることになった。

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