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#486 「東和工業事件」金沢地裁

2019年5月8日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第486号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【東和工業(以下、T社)事件・金沢地裁判決】(2015年3月26日)

▽ <主な争点>
コース別賃金制度における総合職と一般職の区別が労基法4条違反となるかなど

1.事件の概要は?

本件は、契約期間の定めのない労働者としてT社に雇用されていたXが同社に対し、以下の理由により、各支払請求をしたもの。
(1)T社において総合職と一般職から構成されるコース別賃金制度が導入されて以降、同社はXに総合職の賃金表を適用すべきであったのに、一般職の賃金表を適用してきたと主張し、主位的に不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害賠償金として、1864万3460円(総合職と一般職の賃金差額相当額である694万8600円、慰謝料1000万円および弁護士費用169万4860円)等、予備的に不当利得返還請求権に基づき694万8600円等
(2)時間外労働賃金に未払分があるとして、T社との雇用契約に基づき29万4595円等、ならびに労働基準法114条の付加金として29万4595円等
(3)上記(1)の点につき、T社は退職金の支払上もXを一般職と扱ったと主張し、同社との雇用契約に基づき、未払の退職金として281万2000円(総合職の退職金相当額である685万9000円からXがすでに支払を受けた退職金等を控除した残額)等

2.前提事実および事件の経過は?

<T社およびXについて>

★ T社は、機器・環境産業機械関連設備等の設計施工等を業とする会社である。

★ Xは、昭和62年4月、期間の定めのない労働者としてT社に雇用され、本訴提起後の平成24年1月に同社を定年退職(満60歳)した女性である。

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<本件コース別雇用制等について>

★ T社は平成14年6月頃までに本給(年齢給および職能給)の賃金表を総合職と一般職に分けて設定する賃金制度(以下「本件コース別雇用制」という)を導入した。同制度導入の基本的目的は、これに伴う賃金制度の変更であり、具体的には年功序列型給与体系を見直し、業務上の成長によって昇給を果たすという意識付けを従業員に与えることにあるとされる。

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