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#55 「全日本空輸事件」大阪地裁(再掲)

2004年9月22日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第55号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【全日本空輸(以下、A社)事件・大阪地裁判決】(1998年9月30日)

▽ <主な争点>
一旦承認した年休の取り消し

1.事件の概要は?

本件は、長期有給休暇取得の許可を得た客室乗務員のTが、後になってA社がその休暇許可を取り消したので、予定していた旅行を中止せざるをえなくなったとして、旅行のキャンセル料などの損害賠償の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Tについて>

▼ Tは昭和56年5月、A社に雇用され、大阪空港支店客室部客室乗務課に属する客室乗務員(キャビン・アテンダント)である。

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<Tの長期休暇の承認が取り消されるまでの経緯等について>

★ A社では、公休、年次有給休暇、夏季特別休暇等を組み合わせて、連続16日間を限度として長期休暇が取得できることとなっており(以下「本件長期休暇制度」という)、A社大阪空港支店客室部では、本件長期休暇制度部内運用要領(以下「本件運用要領」という)として、次のような取得制限事由等を定めている。

(1)原則一人につき年度一回
(2)長期欠勤者、年度内休職明けの者は原則取得不可
(3)結婚による長期休暇をすでに取得した者は不可
(4)その他業務上の都合が生じた場合は不可もしくは時期を変更することがある

▼ TはA社に対し、平成6年11月15日頃までに本件運用要領に基づき、7年1月4日から同月19日まで、公休(計6日間)に該当しない日を年次有給休暇と指定して、長期休暇(以下「本件長期休暇」という)を取得する旨の申請を行い、A社は6年11月29日付けで上記申請を承認した。

▼ 6年11月頃、Aは業務に起因して両肢関節炎に罹患し(以下「本件疾病」という)、同月21日頃、本件疾病により10日間の安静加療を要する旨の診断書をA社に提出し、同年12月2日頃、さらに一ヵ月の安静加療を要する旨の診断書を同社に提出し、同年11月21日より12月13日まで欠勤した。(※この欠勤は、本件疾病が業務災害と認定された7年4月頃、公傷休暇に振り替えられた。)

▼ A社は6年12月に入って、本件長期休暇の承認を取り消した。Tは同月28日、前日に公表された7年1月分の客室乗務員のスケジュールを確認し、本件長期休暇期間中にもTの勤務が予定されていたことから、本件長期休暇の承認が取り消されていたことを知った。

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