#246 「東和システム事件」東京地裁
2009年11月11日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第246号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【東和システム(以下、T社)事件・東京地裁判決】(2009年3月9日)
▽ <主な争点>
プロジェクトリーダーの管理監督者性等
1.事件の概要は?
本件は、T社のシステムエンジニアであるAら3名が時間外手当および新職制下と旧職制下の職務手当の差額等の支払いを求めるとともに、併せて、時間外手当請求権および新職制下での課長職としての職務手当請求権等の各存在確認を求めたもの。
なお、Aらは課長代理の職位にあったところ、T社では時間外手当支払いの要否の問題を契機に職制改革を行い、課長代理を課長と副長に分けたが、Aらを旧職制下の課長代理のまま処遇し続けた。その後は課長補佐という職位を新設し、Aらをそれに任命した。
2.前提事実および事件の経過は?
<T社およびAら3名について>
★ T社は、ソフトウェア開発、受託計算等を業とする会社である。同社は従業員約430名を擁し、うち旧職制下の課長代理以上の職位にあるものは、約120名である。
★ Aら3名は、いずれもT社に勤務し、それぞれ平成2年ないし5年頃から課長代理の職位にある。Aらは、第1または第2システム統括部に配属され、SEの業務を担当している。
★ Aらは、電算労コンピュータ関連労働組合T社支部(以下「支部」という)の組合員である、T社には、他に労働組合として、従業員の相当数で組織される東和システム労組(以下「T社労組」という)がある。
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<T社における職制および管理職の処遇等について>
★ T社における従来の職制(旧職制)は、統括部長・部長・部長代理・次長・課長・課長代理・班長・一般職に分かれている。
★ T社は、17年9月からT社労組の所属員に対しては、統括部長・部長・部長代理・次長・上席課長・課長・副長・班長・一般職という職制(新職制)で処遇している。なお、Aらは課長代理の職位にある。
★ T社における管理職には、(1)職位に対応した職務手当、(2)基本給の30%相当の特励手当が毎月所定内賃金として支払われ、(3)退職金は、課長代理以上は退職金基礎給の算定基準が退職時の俸給の70%で、会社都合および定年退職の場合の支給率が110%、部長以上は120%である。
★ これに対し、課長代理より下では、退職金基礎給の算定基準が退職時の俸給の50%で、会社都合および定年退職の場合の支給率が100%である。
★ Aらの給与は、基準内給与として、基本給(年齢給+職能給)、職務手当、技術手当、住宅手当、家族手当からなっている(特励手当が、基準内給与か否かは争いがある)。なお、家族手当は時間外手当算定の基礎とされていない。
★ T社の就業規則では、所定労働時間を超え、法定労働時間の範囲内の時間外労働に対しても、1.25を乗じた割増賃金を支払う定めとなっている。
▼ T社と支部の労使交渉では、残業代の支払いが要求の1つとして取り上げられてきた。同社は16年10月、「課長代理の給与制度改訂」という通知を支部に対して行ったが、その骨子は課長代理を非管理職へ変更し、特励手当を支給せず、残業代は支払うというものであった。
▼ T社は17年9月、給与規程を新職制へ11月1日付で改訂する旨、支部に対して通知した。新職制の骨子は、(1)職位は前述のとおりとすること、(2)「管理職」は課長以上とすること、(3)課長以上の職務手当を各1万円増額することであり、(4)課長代理から副長となる者については、非管理職となって特励手当が支給されなくなること、である。
▼ 同年10月、新職制導入に際し、AらはT社に対し、課長職に任命されることの申し出をした。同社は新職制導入後、Aらを旧職制のまま、課長代理として処遇し、職務手当は1万5000円を支給し、特励手当は支給するが、時間外手当は支払わないものとした。
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