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#78 「日本体育会事件」東京地裁

2005年3月9日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第78号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【日本体育会(以下、N法人)事件・東京地裁判決】(2004年1月13日)

▽ <主な争点>
育休後の配置に関する配慮義務

1.事件の概要は?

本件は、大学・高校・専門学校等を設置しているN法人に勤める女性職員Xが育児休業後の勤務場所・時間に関する労働契約上の配慮義務を同法人が怠ったと主張して、不法行為または債務不履行に基づく損害賠償を請求したもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<N法人について>

★ N法人は、日本体育大学(以下「大学」という)、日体荏原高等学校(以下「高校」という)、日体柔整専門学校(以下「専門学校」という)その他の学校を設置している学校法人である。

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<Xの採用後の配属先と勤務時間等について>

▼ Xは大学でのアルバイト勤務などを経て、平成4年4月、N法人の正職員として採用された。採用後の配属先と勤務時間は以下の通りである。

[4年4月~]

<配 属 先> 専門学校
<勤務時間> 始業時刻 14時30分  終業時刻 21時30分

[10年3月]

専門学校の期限付助手として勤務していたYと職場結婚

★ Yは同年6月末をもって、期間満了を理由に雇止めされたが、仮処分申立てを経て、職場復帰の見通しとなった。N法人では夫婦が同じ職場で勤務することは職場運営上好ましくないとの考えが支配的であったため、Xに対して、11年1月中の大学への異動を示唆していたが、これは実現しなかった。

★ N法人は以前から設置校ごとに職員の採用、異動等の人事を行っており、労働条件も異なっていたため、設置校間の人事異動が行われることはまれであり、10年11月当時、他の設置校の職員が大学に異動した例はなかった。

[11年7月19日~12年8月31日]

出産休暇・育児休業(11年9月1日に第一子を出産)

[12年9月1日~同月30日]

<配 属 先> 専門学校(職場復帰)
<勤務時間> 始業時刻 14時30分  終業時刻 17時30分

★ Xは17時30分から21時30分までの勤務について、年次有給休暇を時間単位で取得するとともに、育児短時間勤務を取得した。

[12年10月1日~13年3月31日]

<配 属 先> 大学図書館(新設された派遣研修制度に基づき、研修を受ける)
<勤務時間> 始業時刻 8時30分  終業時刻 16時30分

[13年4月1日~同年9月30日]

<配 属 先> 専門学校
<勤務時間> 始業時刻 14時30分  終業時刻 17時30分

★ Xは17時30分から21時30分までの勤務について、年次有給休暇を時間単位で取得するとともに、育児短時間勤務を取得した。

[13年10月1日~]

<配 属 先> 高校
<勤務時間> 始業時刻 9時20分  終業時刻 16時00分

★ Xは8時20分から9時20分までの勤務について、育児短時間勤務を取得した。

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<N法人の育児休業等に関する規定の定めについて>

★ N法人の「育児休業等に関する規程」には、次のような定めがある。

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