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#129 「富士通事件」東京地裁

2006年3月22日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第129号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【富士通(以下、F社)事件・東京地裁判決】(2005年10月3日)

▽ <主な争点>
競業会社転職者への早期退職優遇制度適用除外

1.事件の概要は?

本件は、F社を退職して転職したXが同社に対し、主位的に、Xには早期退職優遇制度が適用されるべきであると主張して、同制度に基づく特別加算金の支払いを求め、予備的に、仮に同制度が適用されないとしても、F社がXの退職手続きに協力せず、また退職するまでに同制度が適用されない合理的理由を正式に知らせなかったことが信義に反する不当な行為であると主張して慰謝料を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<F社およびXについて>

★ F社は通信機器・装置・システムの製造および販売等を業とする会社である。

★ Xは昭和55年4月、F社に入社し、主としてコンピュータのソフトウェアの開発に従事し、平成14年4月、F社を退職した。退職時の年齢は45歳であった。

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<本件プログラムおよび本件ガイドラインについて>

▼ F社は平成13年7月、中高齢層の従業員に対して定年前の転職・独立など転進の機会を付与することを目的とするネクストキャリアプログラム(以下「本件プログラム」という)の実施を社内ウェブ上で告知した。本件プログラムの内容のうち、早期退職の場合の特別加算による退職金の拡充についての要旨は次のとおりである。

(1)概要
選択定年(定年退職扱い)の年齢を50歳から45歳に引き下げ、あわせて45歳から55歳の者について退職金に特別加算を行う。

(2)特別加算
退職時年齢45歳の場合、月収または月俸の10ヵ月分を特別加算する。

(3)適用者
退職時年齢45歳以上かつ勤続5年の正規従業員。ただし、F社と競合関係にある企業への転職等、F社として本件プログラムを適用することが望ましくないと判断する場合は、適用外とする。

▼ F社は本件プログラムについてのガイドライン(以下「本件ガイドライン」という)を定め、本件プログラムと同様にF社の社内ウェブ上で告知した。本件ガイドラインには、下記のいずれか一つに該当する場合は、原則として適用対象外とする旨の定めがある。

(1)退職することで会社の業務に著しく支障をきたす場合

(2)転職先が本件プログラムの主旨に相応しくない場合
 (a)グループ会社
 (b)競業会社
 転職先がF社またはF社の子会社と競業関係に該当する場合は適用対象外とする。なお、競業会社に該当するかどうかは、規模・シェア等を勘案し、F社が個別に判断する。

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<Xが本件プログラムの適用を除外されるに至った経緯>

▼ Xは14年4月、F社に対し、退職願を提出するとともにコンピュータ製品の輸入・販売を業とするS社に転職するとして、本件プログラムの適用を申請した。

▼ Xは同年5月、S社に入社して、ソフトウェア&テクノロジー営業本部に所属したが、同月、F社から送付された「ネクストキャリアプログラムの適用について」と題する書面を受領した。

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