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#404 「X産業事件」福井地裁

2016年2月3日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第404号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【X産業事件・福井地裁判決】(2014年11月28日)

▽ <主な争点>
上司からのパワーハラスメントを原因とする自殺と損害賠償請求など

1.事件の概要は?

本件は、B(Aの父)が「Aが自殺したのはYおよびZ(ともにAの上司)のパワーハラスメント、X産業(X社)による過重な心理的負担を強いる業務体制等によるもの」とし、YおよびZに対しては不法行為責任、同社に対して主位的には不法行為責任、予備的には債務不履行責任(安全配慮義務違反)に基づき、損害賠償金1億1121万円余およびこれに対する遅延損害金の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<X社、A、B、YおよびZについて>

★ X社は、消火器販売、消火設備の設計施工保守点検等を業とする会社である。

★ A(平成3年生)は、平成22年2月からX社でアルバイト勤務をはじめ、高校卒業後の同年4月、同社との間で正社員として労働契約を締結した者である。

★ Bは、Aの父である。

★ Yは、リーダーとしてAの上司に当たる者であり、Zは、メンテナンス部部長としてAの上司に当たる者である。

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<本件自殺に至った経緯等について>

★ AはX社のメンテナンス部に配属され、各企業が事務所および作業所・工場等に消防法によって設置した防火施設の消防法によるメンテナンス等について、消防設備や消火器等の保守点検業務に従事していた。

▼ Aは当初消火器の点検などの比較的簡単な作業に従事していたが、作業に慣れるにしたがって、22年7月頃から消火栓や火災報知器などの点検業務にも従事するようになった。この点検業務に当たっては、Aの直属の上司に当たるYに同行し、Yから指導を受けることが多かった。

▼ YはAの仕事の覚えが悪いことから、自分が注意したことは必ず手帳に書いてノートに書き写すように指導していたが、Aの仕事上の失敗が多く、いらだちを覚えるようになり、「一人で勝手に行動しない。分かりもしないのに返事をしない」と言うようになった。

▼ AはYの上記指導にしたがって、指導内容やこれを巡って自問自答する内容をノートに記述するようになった。

▼ Aは22年12月6日、自宅の自室において午前6時30分頃、縊死した(以下「本件自殺」という)。

★ Aには特異な性格傾向や既往症、生活史、アルコール依存症などいずれにおいても特に問題はなかったと認定されている。

3.Aの父Bの主な言い分は?

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