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#148 「シンエイ事件」大阪地裁

2006年8月9日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第148号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【シンエイ(以下、S社)事件・大阪地裁判決】(2003年5月30日)

▽ <主な争点>
退職金支給に関する労使慣行の有無等

1.事件の概要は?

本件は、S社を退職したXが、同社において退職金に関する労使慣行が存在する、または、Xの退職に際してS社がXに対し、勤続期間に応じた退職金等を支払う旨約したとして、これに基づいて算定された退職金と既払い退職金との差額等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<S社およびXについて>

★ S社は、内装工事等を主たる業務とする会社である。

★ Xは平成2年12月から14年8月までS社の従業員であった。

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<本件文書および本件計算書等について>

▼ 14年8月上旬、S社はXに対し、同社の業績が低迷しているため、同年9月末での退職を勧奨した。これに対し、Xは同年8月末日で退職する旨回答し、その際、退職金の支払いと雇用保険に加入していない分の加算を要望した。

▼ S社代表者であるAはXに対し、12年の勤続期間に応じた退職金と雇用保険に加入していないので、その雇用保険支給相当額を加算して支払う旨を述べ(以下「本件発言」という)、Xもそれを承諾した。

▼ A代表はXの退職金をどうするかについて計理士に相談し、計理士が作成した「退職金の件」と題する文書(以下「本件文書」という)を受領した。

★ 本件文書には「(1)一般的な退職金の算定方法は、基本給に勤続年数に応じた支給率を乗じる方法によること、(2)東京都の場合の支給率に基づいた勤続12年での支給率、(3)雇用保険の基本手当の給付金額」などが記載されていた。

▼ 本件文書はS社の事務担当者Bが保管していたが、BはXに対し、本件文書を交付した。なお、本件文書にはS社の会社印は押印されていなかった。

▼ その後、A代表はXに対し、雇用保険支給相当額として、約120万円(基本手当日額の180日分)から、基本給40万円の場合の雇用保険料12年分の本人負担分を控除した約85万円を6ヵ月にわたり分割して支払う旨の書面(以下「本件計算書」という)をS社の会社印を押印した上で交付した。

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