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#612 「医療法人社団A事件」横浜地裁

2024年5月8日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第612号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【医療法人社団A(以下、A法人)事件・横浜地裁判決】(2021年10月28日)

▽ <主な争点>
日常的なセクハラ言動を理由とした普通解雇の有効性など

1.事件の概要は?

本件は、A法人の職員であったXが複数の女性職員に対してその身体に触れ、性的な発言をするなどのセクシュアル・ハラスメントをしたことを理由として解雇(本件解雇)されたことから、本件解雇は解雇権を濫用したものとして無効であると主張して、同法人に対し、雇用契約上の地位の確認を求めるとともに、雇用契約に基づき、(1)2018年12月分の賃金57万6667円および2019年1月分から本判決確定の日までの賃金月額84万円ならびにこれらに対する遅延損害金、(2)2018年12月分以降の冬季賞与100万円および2019年6月分以降の夏季賞与40万円の各支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<A法人、B代表、C事務長およびXについて>

★ A法人は、診療所を経営することを目的とする医療法人社団である。2021年時点で甲診療所と乙診療所を運営しており、各診療所の職員は常時10名はおらず、医師を除くとX以外の全員が女性であった。

★ A法人の代表者であるBは、同法人の理事長および甲診療所の院長を務め、Bの妻であるCは理事および事務長を務めており、甲診療所で執務をしている。

★ X(1971年生)は、2010年10月、A法人に採用され、診療所の開設および運営に関わる付帯業務一般に従事し、「次長」という肩書を用いて、主に乙診療所および丙診療所で勤務していた者である。


<本件ヒアリング、本件解雇に至った経緯等について>

▼ A法人は2018年10月、「Xからセクハラを受けた」との診療所職員らからの申告を受け、Xに対するヒアリング(以下「本件ヒアリング」という)を実施した結果、同月30日、Xに対し、同年11月30日付で解雇する旨の意思表示をした(以下「本件解雇」という)。

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