#134 「日本海事協会事件」東京地裁
2006年4月26日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第134号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【日本海事協会(以下、N協会)事件・東京地裁判決】(2003年9月19日)
▽ <主な争点>
62歳までの定年延長適用の可否/解雇無効確認請求の是非
1.事件の概要は?
本件は、N協会を定年退職したとされたXが同協会に対し、「62歳まで定年延長して勤務すべきところ、同協会から60歳定年を強制され、不当に解雇された」と主張して解雇無効の確認を求めるとともに、解雇がなければ受けられた賃金および賞与等の支払いを求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<N協会およびXについて>
★ N協会は、船級の登録、船舶の検査、造船材料、船用品および船用品材料の試験・検査等を業とする財団法人である。
★ X(昭和17年2月生)は昭和42年4月、N協会に技師補として入社し、船用品の材料の試験および検査等の職務に従事した後、技師、副参事となった。
--------------------------------------------------------------------------
<Xの休職から定年退職に至るまでの経緯>
▼ Xは平成8年4月、参事となり、支部長として勤務した後、9年4月、特別研究員(部長職位待遇)として研究センターに勤務し、船舶の腐蝕についての調査・研究等を行っていた。
▼ 12年4月、Xは研修所の講師(部長職位待遇)になったが、同年10月には講師を解かれて研修所付となり、役付職員ではなくなった。
▼ N協会は同年9月頃、Xの健康面等を考慮し、定年である14年3月末まで休養してはどうかとXに対して勧めた。
▼ 同年12月下旬、Xは休職届を提出し、翌13年1月4日から同年2月15日まで年次有給休暇を取得した。さらに同月16日から同年5月16日までの90日間、頭部の病気等を理由に欠勤を継続した。
▼ N協会はXに対し、同年5月17日付で総務部付とし、休職を命じたが、Xは休職発令に対して異議を唱えることはなく、翌14年3月31日まで全く出勤しないまま、病気休職を続けた。その間、Xが復職を願い出たことはなかった。
▼ N協会は14年3月末日をもって、Xを定年による退職の扱いとした。
--------------------------------------------------------------------------
<N協会の就業規則について>
★ N協会の就業規則には以下のとおりの規定がある。
第56条 職員は、満60歳に達する日が1月1日から3月31日までの間にある者はその年の3月31日を、4月1日から12月31日までの間にある者は翌年3月31日をもって定年退職とする。
第50条 次の各号の一に該当する場合においては、職員に休職を命ずることがある。
(1) 業務によらない負傷または疾病のため欠勤90日を超えるとき
(2) 以下略
第51条 前条1号の休職期間は6ヵ月間とする。ただし、情状によっては休職期間を延長することがある。
--------------------------------------------------------------------------
<本件内規の規定および適用について>
★ N協会には、以下の内容の「役付職員の定年に関する規則」(以下「本件内規」という)が存する。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?