#54 「協生証券事件」東京地裁(再掲)
2004年9月15日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第54号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【協生証券(以下、K社)事件・東京地裁判決】(1999年10月29日)
▽ <主な争点>
上司への侮辱的言動等を理由とする出勤停止処分など
1.事件の概要は?
本件は、Aの数回にわたる上司に対する侮辱的言動等を理由にK社がなした5日間の出勤停止処分に対し、Aが、出勤停止は無効であるとして、出勤停止期間中の給与および慰謝料の支払いを請求したもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<Aについて>
★ Aは平成2年4月、K社に入社し、本店第一営業部に勤務している者である。
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<Aの上司への侮辱的言動等、本件処分に至った経緯等について>
▼ Aは7年11月、健康診断で軽度の結核であるとの診断を受け、従前は吸っていたタバコをやめた。Aと同じ第一営業部の他の社員は、Aが結核に罹患したため、自席から灰皿を撤去し、喫煙するときは事務所のある7階奥の会議室に行って喫煙することを申し合わせたが、同じ階に配置されている第二営業部は室内禁煙の申し合わせに参加していなかった。
★ K社にはタイムカードはなく、出勤簿への押印により出勤を確認していたが、Aの7年4月および7月ないし11月の各月の遅刻回数は、一ヵ月あたりそれぞれ10回を超えていた。
★ Aは7年当時、渋谷地区の顧客開拓のため、資料作りを発案し、毎日実行していた。そのため、夜遅くまで資料を作成していることがたびたびあった。
▼ 7年11月30日の午前9時頃、Aから第一営業部のM次長に対し、自分の顧客に電話してほしい旨の電話があり、同次長は9時半頃に電話をして欲しいとの依頼と理解した。Aが9時半頃出社し、「電話をしてくれたか」と聞いたので、M次長がこれからしようとしていた旨答えたところ、Aは「やる気があるのか」といきなり怒鳴った。
▼ 翌12月1日、第一営業部のC部長と第二営業部のR部長とが7階事務室で話し合いをしていた際、R部長がタバコを吸っていたところ、Aが「タバコを止めろ」といきなり怒鳴りだした。R部長がこれに驚き、「どうしたんだ」と言ったところ、Aは「表に出ろ」と大声を出し、同部長が事務室内で騒ぎになるのを避けるため、Aを応接室に誘導したところ、AはR部長に対し、厚さ5センチ程度の雑誌(『会社四季報』)を投げつけ、雑誌は同部長の後頭部に当たった。
▼ K社内で社員が株式取引等の取扱いルールに違反したときは、賞与額算定の際、これを考慮することとする等のペナルティ制度についての通達を回覧したところ、同月18日、AはT監査部長に対し、「社員ばかりペナルティを問題にして、役員のペナルティ制度はどうなっているんだ」などときつい言葉で苦情を述べた。
▼ 8年1月22日、事務室内でAが突然大きな音を立てて机を叩き、株式売買注文の出し方について法律が遵守されていないとして怒鳴った。C部長が、来客中なので大声を出すなと注意したが、Aは「来客など俺には関係ない。大蔵に連絡して不正、株価操作等についてはっきりさせる。警察にも連絡する」などと大声を挙げた。
▼ 同月25日、N社長はAの上記言動を注意するため、Aを社長室に呼び、不正行為の疑いがあると考えているのであれば決定的なものでなくても良いから証拠を提出するように指示し、7階の雰囲気がおかしくなっているから、今後会社内で物を投げたり、この野郎などとの暴言を吐いたりすることないよう強く注意した。
▼ その後もAがN社長の注意に従わなかったため、K社は同年3月27日、臨時取締役会を開催し、Aに対する処分について審議を行った。
▼ K社は翌28日、Aに対し、処分内容および処分理由を記載した書面を交
付し、Aの上記各言動が、就業規則66条および賞罰規定10条1号、2号、5号、7号に該当し、毎日の出勤状況は、就業規則57条7号に抵触するとして、同年4月1日から同月5日まで出勤を停止し、この期間の給与は、「給与規定」により控除する旨の出勤停止処分(以下「本件処分」という)を行った。
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