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#614 「長門市事件」山口地裁

2024年6月5日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第614号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【長門市(以下、N市)事件・山口地裁判決】(2021年4月14日)

▽ <主な争点>
消防職員に対する分限免職処分の有効性など

1.事件の概要は?

本件は、N市の消防職員であったXが部下への暴行、暴言、卑猥な言動およびその家族への誹謗中傷を繰り返し、職場の人間関係および秩序を乱したなどとしてN市消防長から2017年8月22日付で分限免職処分を受けたことについて、処分の基礎となった事実に誤認があり、地方公務員法28条1項1号および3号のいずれにも該当しない上、適正な手続がとられていないとして、同処分の取消しを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<N市およびXについて>

★ N市は、消防組織法9条に基づき、消防本部、甲消防署、乙消防署を設置する地方公共団体である。消防職員には、消防吏員と事務職員がおり、消防吏員の階級は低い方から消防士、消防副士長、消防士長、消防司令補、消防司令、消防司令長となっている。

★ X(1975年生)は、1994年4月にN市の消防吏員(消防士)に任命され、2013年4月から甲消防署において小隊の分隊長、2017年4月からは乙消防署において小隊長を務めていた者である。


<本件処分、本件訴えに至った経緯等について>

★ Xは2008年4月から2017年7月までの間、当時のN市の消防職員約70人のうち、部下等の立場にあった約30人に対し、約80件のパワハラ等の行為(暴行、暴言、卑わいな行動、プライバシーに関する事項を無理に聞き出す行為、土下座の強要、上司への報告に対する報復の示唆等、以下「本件各行為」という)を行った。

▼ 2017年8月21日、N市職員分限懲戒審査会はXに対して弁明の機会を付与した上で、処分について議論し、分限免職が妥当であると判断した。

▼ N市消防長は同年8月22日付でXに対し、消防職員としての資質を欠き改善の余地がなく、本件各行為による同市の消防組織全体への影響が大きいため、地方公務員法(以下「地公法」という)28条1項1号および3号等に基づき分限免職処分(以下「本件処分」という)を行った。

▼ Xは同年11月19日付で、山口県市町公平委員会に対し、本件処分を不服として審査請求をし、同委員会は2018年7月、同審査請求を棄却する旨の裁決をした。

▼ Xは2018年10月、本件訴えを提起した。


<地公法の定めについて>

(分限及び懲戒の基準)
第27条 略
 職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、又は免職されず、この法律又は条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して、休職され、又は降給されることがない。
 略

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