メジャーリーグで高額年俸を勝ち取ると賞賛を受けるのに国内だと「金満」と言われるのか
私が応援するソフトバンクホークスはよく「金満球団」といわれる。だが、「金満球団」は本当に悪なのか?高い年俸を提示し、他球団から選手を獲得することは日本球界にとって悪しきことなのかを検証してみたいと思う。
なぜホークスは「金満球団」と呼ばれているのか
2005年にソフトバンクホークスとなってから、ホークスは数々の補強を行ってきた。
2010年には内川選手、細川選手、近年はオスナ選手、山川選手、近藤選手。そのため、「強奪」とか「金にものを言わせて…」といった批判を受けている。ホークスは巨人と同じ「他球団の主力選手を資金力背景に強奪する」悪しき「金満球団」という扱いである。でも、メジャーに移籍した選手にはそのようなことは言われている感じはしないし、メジャーの球団が金満だと批判されることはない。
ドジャースから10年1000億円の契約を提示された大谷翔平
皆さんの記憶に新しいのは、大谷翔平選手のドジャース移籍の時の年俸だろう。なんと10年1000億の契約。日本中いや、世界中が衝撃と歓喜に沸いた契約だった。
当然、大谷選手の人柄もあり、この大型契約に関して批判的な報道はされなかったのもあると思う。
ただ、ドジャースのことを「莫大な資金力でエンゼルスから大谷を強奪した球団」というより、「強くて、環境もいい球団でプレーした方が大谷選手には良いのでは」と好意的に捉えていた人の方が圧倒的に多かったのではないだろうか?
そもそも年俸で選手の評価を行うことは間違っているのか?
では、なぜ国内移籍の際、年俸の高額提示が悪とみなされてしまうのか。
社会人だって、業績が良ければボーナスで幾分か給料が上乗せされるはず。ただほんの一部の社員を除いてヘッドハンティングのような経験はしないし、給料が倍になることはない。どこか無意識のうちに自分と比べてしまっているのがその原因になってしまっているのではないだろうか?
だが、プロ野球選手には大きな特徴がある。
選手はプロ入りする時に球団は選べない
90年代〜2000年代始めに逆指名制度(希望入団枠制度)というのがあった。
だが、現在のドラフト制度には選手の希望というのは1ミリも反映されない。交渉権を獲得した球団と「その球団に入る」か「プロ野球選手にならない」の2択に迫られる。
だから、多くの社会人と違い、選手(自身)と希望する球団(企業)が相思相愛だったとしても入団できないことが起こり得るのである。
プロ野球選手は全て数字で可視化される特殊な職業
これもプロ野球選手にある特徴。野球というスポーツは団体競技だが、個人の成績が全て可視化されるスポーツでもある。
同一リーグで同一ポジション、または同じ打順の選手との比較対象ができるのである。
例えば、西武の源田選手とホークスの今宮選手のように。
一般企業であれば他社の同じポジションの人と仮に年収差があったとしても、その人の実力は測ることができない。
ただ、野球選手の場合、対戦投手はほぼ同じ。そのため、打率や本塁打などの打撃成績や守備率やUZRなどの守備指標まで細かく比較することが可能。そのため他球団の選手であろうと実力が測りやすいのだ。
そうなるとどうだろう?多くの選手がより自分のことを評価してくれるチームに移籍したくなるのではないだろうか。
球団にとって選手は「コスト」なのか「人財」なのか
よく会社の人事系の方々が使う「人財」。自社の会社で勤めている社員を大事にするという意味合いで「人材」を「人財」として使用している。これは最近の人的資本経営へと繋がっている。
そして、2023年度の各球団の平均年俸を下記に示す。巨人、ホークスが他球団より頭1つ、2つ出ていることがわかる。
これは、移籍した選手に払った年俸によるものと捉えることもできるが、それだけではない。きちんと生え抜きの選手にも払っているのだ。
各球団の生え抜き選手最高年俸額を下記に示す。
球団の市場価値とは?
選手の年俸に他球団よりも資金を使っているホークス。ただ、それだけではない。毎年の様に、本拠地(みずほPayPayドーム福岡)の改修を行い、顧客満足度の向上を目指している。
これだけ資金を投じるのは、それに準ずるリターンがあるからだ。なんとホークスはスポーツビジネスとして成功しており、「アジアで最高の売り上げを出すスポーツチーム」なのである。https://www.data-max.co.jp/article/36272
売り上げが伸ばせる分野には積極的に投資する。
そのビジネスによる当たり前のスタンスが、ホークスの強さ、ホークスの選手に年俸という形での投資に繋がっていると感じている。
メジャーリーガーとNPB選手の年俸推移
上記にあげた生え抜き最高年俸選手のうち5選手が翌年メジャーリーグへ挑戦していた。
2000年にメジャーに移籍した大魔神佐々木投手は4億8000万で契約。当時メジャーで活躍していた野茂英雄で3億8000万、ア・リーグ最高年俸のアルバート・ベル選手で約1200万ドル(当時レートで約14.4億)と約3倍だったことを考えるとそれほど安く値踏みされたわけではない。
2014年の田中将大投手以降の3選手については、田中投手は約5.5倍、鈴木選手が約2.6倍。山本由伸が昨オフ移籍したが、契約上今年度の年俸は微増のようにみえると思うが、12年487.5億での契約。単純に12でわると単年40億円超とすると6倍以上の上昇率。
では、なぜここまで大型契約となるのだろうか。
下記にNPB選手とメジャーリーグの選手の平均年俸の推移を示す。
NPBの平均年俸は2000年からの15年で1.2倍程度の上昇であるのに対し、メジャーは2.2倍程度。グラフの形もNPBは頭打ちのようなグラフになっているのに対し、メジャーは指数関数的に増加している。
つまり、NPBのプロ野球選手の年俸をあげていかない限り、メジャーリーガーとの年俸格差は拡大する一方だということを示している。
プロ野球選手にみる「優秀な人材は海外に流出する」兆候
上に示したとおり、日本とメジャーでのプロ野球選手の年俸格差は開いている。しかも、ここ数年の円安の影響で両者を円ベースで比較するとより拡大しているようにみえる。
こうなるとNPBの主力選手はどう思うだろう?
夢のメジャーでしかも破格の金額がもらえる。言語や環境の違いというデメリットを差し引いてもメジャーに挑戦したいと思うのは当然の感情ではないだろうか?
プロ野球選手だけではなく、他の業種でも水面下では同様の現象が起こっていると考えられる。ただ、優秀な人材の海外流出に対する日本国内へ及ぼす影響が顕在化して現れているのはプロスポーツの世界なのではないだろうか。
メジャーに流出を止めるためには国内球団も年俸をあげる努力を
海外への選手流出への手立てとして、国内球団が選手年俸をあげる努力が必要であると考える。だが、12球団のなかにはそれだけの資金力はないところもあると思う。そこで、どうすれば解消できるか考えてみた。
メジャーのビジネスモデルより探る
まずは、メジャー球団がどのように運営しているかを調べてみた。
こちらのサイトに図できれいにまとめられていたので、下に示したいと思う。
つまり、MLBの収益源は
・放映権収入
・チケット販売
・グッズ販売
・スポンサー料
などが挙げられる。
NPB同様、各球団のチケット販売が球団別の収益差を生んでいることは確か(下のグラフ参照)だが、キー局の放映権収入については、MLBが一括管理。個別契約になってない分、収益差を生まない。これが利益化できてない球団の下支えになっている。
日本でも「DAZN」のような全球団の試合がみれるコンテンツはあるが、これは各球団との個別契約。親会社がメディアの巨人、中日。地元放送局と密な広島、阪神がNPBでの一括契約に難色を示した模様。
「プレジデント」に記事が載っているが、一括契約を行ったJリーグではきちんと収益化できているようである。
ただ、これはNPBオーナー企業がメディア系である以上避けられないことだったと思う。
現状で出来る手立ては?
プラン1 個人スポンサーを受け入れる
資金力が足りないなら、スポンサーを集めればいいという単純な考えをまず最初に提案する。
ファンクラブやクラウドファンディングで個人から資金調達するのも手だが、個人スポンサーとした。
近年は、「個」の力が大事になる時代。YouTuberやSNSで生計をたてる人もいる。球場でコラボ動画を流したり、球団公式SNSや公式サイトで広告を打つことも容易だと思う。年間でなく、試合単位での契約など様々な方法はある。
つまり、「広告料を数で勝負する」プランである。
プラン2 資金力のない球団は合弁会社として経営
現状は各球団がメインとなるオーナー企業があるシステムをとっている。しかも、ここ20年でオーナーが変わったのはソフトバンク、楽天、DeNAの3球団のみ。
時代によって成長する産業は変化するし、円安円高によっても利益を生む業種は変わってくるだろう。いわゆる「親会社の企業収益によって球団経営が左右される」現状よりも、投資家がポートフォリオを組むように複数の業種の企業で合弁会社としてプロ野球球団を経営することでリスクヘッジとなり、安定して球場や選手に投資できるのではないだろうか。
現状、チケット収入をあげることが球団経営を支えるためには大事。初期資金はかかると思うが、球場と選手に投資し、収益をあげる。このような好循環を作る努力を球界全体で作っていって欲しい。
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