「負けヒロインが多すぎる」と豊橋市に関する考察 part.1
Xに投稿したところ、たくさんの方にご覧いただけた内容ですので、noteにもアップしていきます。
①愛知県豊橋市の現在地
豊橋は、人口約36万人を有し、それなりの経済規模がある街ながら、自己肯定感の低い街である。
名古屋と浜松に挟まれ、新幹線は大部分が通過する。愛知県内では仲間外れであり、隣近所の豊川・新城・田原にある稲荷・自然・海といったわかりやすいコンテンツもない。
実はうどん(にかけ、カレー)、製菓(ブラックサンダーが代表的)、練り物、農作物(大葉、柿、他)など、食に関するコンテンツは良質なものが揃っているが、個々のコンテンツが個々のまま主張し、一貫性のあるアイコンが存在していなかった。
東京・大阪から下に見られる名古屋から、更に下に見られる街、その立ち位置が長年続いた結果、自己肯定感低下やアイコン不在に陥っていた、と筆者は見ている。
②豊橋市に起きた「事件」
そんな豊橋に【事件】が起きた。
とあるアニメが豊橋を舞台にしている。そのアニメは、SNSでの瞬間最大風速を狙うなどの飛び道具を使わず、ひたすら高品質な映像と、世界観を徹底する音楽と、尖った魅力のある登場人物とに彩られ、失恋を経験した高校生の復活を描く、まっすぐで瑞々しい青春群像劇。
「負けヒロインが多すぎる!」通称「マケイン」である。
このアニメは原作小説が売り切れ続出し大増版に至るまでの大ヒットとなり、流行したアニメによくある「聖地巡礼」で、豊橋市は現在局地的に盛り上がっている。
アニメ化に際し、豊橋市の広報の表紙を飾るなど、市がそれまでドラマのロケ誘致などで模索してきた「コンテンツパワーによる観光需要と街の活気の創出」への期待は大きく、JR東海とのコラボ効果もあり、マケインは2024/11/6現在、その期待に応えられている。
③「負けヒロイン」が、八奈見杏菜が、豊橋市に光を当てている
だが、この「マケイン」、そしてその主役の1人である「八奈見杏菜」は、ただのアニメの主役ではない。
彼女は、旺盛、どころか気がつけば何か食べているレベルの食欲をもって、もともと豊橋及びその周辺の街が持っていた「良質な食のコンテンツ」に、これでもかと光を当てているのだ。
ヤマサのちくわをまるかじりし、コンドーパンをもりもり食べ、むらたのたこやきを1箱あっという間に完食し、壺屋は改札内外の味比べを試みる。豊橋市内でやたらと見かける青い髪の女子高生「八奈見ちゃん」は、実は豊橋で1番豊橋のグルメを美味しそうに食べる存在だったのである。
このように、「八奈見ちゃん」はただのアニメキャラクターではなく、豊橋の魅力ある個々の食のコンテンツをつなぎ、一貫性のあるアイコンとなり得る存在なのではないか。
同じく愛知県内の一大観光地・犬山における犬山城のような存在に昇華しうる【豊橋親和性】とポテンシャルを秘めているのではないか。
④八奈見ちゃんは、豊橋のアイコンとなれるか
ようやく、自己肯定感が低く、アイコンのない豊橋に、アイコンになり得る存在が現れた。
今後八奈見ちゃん以上の豊橋親和性を持つキャラクターが、マケイン以上の爆発力を持つコンテンツが、未来永劫豊橋に現れない可能性は決してゼロではない。三遠ネオフェニックスがアイコン的存在になるかもしれない。ただ、仮にそうだとしても、マケインは確実にアイコン創出好機のひとつである。
日本のアニメは世界にファンが存在する。子ども 及び 子どもを卒業していない大人だけのコンテンツではない。街の一部として、豊橋の個性の一部として、マケインが、八奈見ちゃんが確かにそこにある、そんな街づくり、街とアニメが一体となった中長期的なコンテンツ作りが、今後の豊橋市に求められるのではないか。
マケインのオープニングテーマの歌詞の抜粋をもって、期待と共に本文を締めたい。
何度も何度も負けてやれ
そのたび強くなる
きっといつかはいつかはハッピーエンド
「つよがるガール」より