うみねこのなく頃に EP2

 本作「Turn of the golden witch」はシリーズ二作目であり、前作の夏妃さんポジションが楼座さんに変わって、物語を新たな展開で楽しむことができます。また、今作から推理バトルが本格的に始まります。

EP2あらすじ

 右代宮家の使用人である紗音は、六軒島の魔女ベアトリーチェの助力により、右代宮家当主金蔵の長女絵羽の息子である譲治と密かに恋人関係にあった。
 同じく使用人の嘉音は金蔵の長男蔵臼の娘朱志香に秘めた想いを打ち明けられるが、「家具」としての自分を卑下するあまりその想いを拒絶してしまう。

 そして1986年の親族会議、台風に見舞われ外界から閉ざされた六軒島には魔女ベアトリーチェが訪れ、惨劇の幕が上がる。

 それらを俯瞰視点から観劇する魔女ベアトリーチェと右代宮戦人。二人はそれぞれ「魔女が犯人である」「人間が犯人である」との主張で推理対決を行なっているのだった。

EP2の殺人事件について

 本作の殺人事件は以下の碑文に見立てられて行われている。
 また、いずれも人間には到底不可能な事件であり、それを魔女の犯行か人間の犯行かを推理で追及するのが本作のテーマである。

第一の晩に六人の生贄を捧げよ      
第二の晩に寄り添う二人を引き裂け    
第三の晩に誉れ高き我が名を讃えよ    
第四の晩に頭を抉りて殺せ        
第五の晩に胸を抉りて殺せ        
第六の晩に腹を抉りて殺せ        
第七の晩に膝を抉りて殺せ        
第八の晩に足首を抉りて殺せ       
第九の晩に魔女は蘇り誰も生き残れはしない
第十の晩に旅は終わり黄金の郷に至る。  

第一の晩 犠牲者‥‥蔵臼・夏妃・絵羽・秀吉・留弗夫・霧江
 金蔵によって立ち入らぬよう厳命されていた礼拝堂にて、テーブルに着席した状態で親族6名が腹部を切り裂かれた上で臓物の代わりと言わんばかりにお菓子を詰め込まれた姿で殺害されているのが発見された。テーブルには3本の金塊と魔女からの手紙があった。
 1本しかない礼拝堂の鍵は前日から真里亞が持っており、現場は密室であった。

第二の晩 犠牲者‥‥朱志香 、嘉音
 礼拝堂の事件発覚後、施錠された朱志香の部屋で死体となった朱志香が発見された。また、行動を共にしていたはずの嘉音も行方不明であった。
 部屋の鍵は朱志香の部屋内で発見されたが、使用人がもつマスターキーで施錠可能なため、厳密には密室ではなかった。
 物語内では行方不明の嘉音だが、上位世界にて死亡が明示された。

第四〜六の晩 犠牲者‥‥紗音、郷田 、譲治
 四人の生存者である戦人・楼座・真里亞・源次は、施錠された夏妃の部屋にて三人の死体を発見。夏妃の部屋の鍵は死体の譲治の手に握られており、マスターキーは楼座が全て所持している。楼座は戦人・真里亞と行動を共にしており、単独で行動していた源次には部屋を施錠する手段が無いため、またもや現場は密室であった。

第七、八の晩 犠牲者‥‥南條・熊沢
 南條と熊沢が厨房で殺害され、使用人室に安置したとの報告を受け、生存者全員で確認に向かうと、施錠され密室となっていたはずの使用人室から二人の遺体が消失。使用人室には魔女からの手紙とマスターキー2本が残されていた。
 中庭にて二人の遺体が見つかる。

本作の特徴

 前作EP1ではほとんど描かれなかった殺人の描写が、今回は「魔女が現れて魔法を行使して殺害」という形で描かれています。死体が動くなんてまだ序の口で、腕から光る剣は生えてくるし悪魔とパーティーしたりもうやりたい放題。
 また、魔方陣や魔女の手紙などの異常な状況も相まって魔女による殺人を強く印象付けることになります。
 この魔法描写をいかにして人間で説明するかが、「うみねこ」の醍醐味と言えるでしょう。

 また、今作から「赤き真実」が登場します。魔女ベアトリーチェによる赤文字の発言は証明不能で真実であり、たびたび戦人の推理を一刀両断しています。例えば、これによって合鍵の存在を否定されれば合鍵を用いたトリックは成立しません。世の嘘つきを恐怖に陥れるシステムです。

 この「赤き真実」はいわば全体像の見えない迷路における壁のような存在で、基本的に推理の否定に用いられます。しかし、真実である以上逆に言えば推理の根拠にもなるため、魔女にとっても諸刃の剣なのです。壁の位置を全て把握されたら迷路も迷わずに突破されてしまいますしね。

 ただ、言葉遊びの面が強いという部分は人を選びます。赤く無い文字は常に嘘の可能性があり、推理する上ではそれを懸念するのが煩わしい部分はあります。ミステリーにおける叙述トリックを受け入れられない方には楽しめないでしょう。僕は西尾維新先生好きなオタクくんなので全く気になりませんでしたが。

感想

 本作はシリーズでもワーストクラスの描写のグロテスクさで、ある意味これが一番の特徴かもしれません。特に第一の晩の殺害現場は却って清々しいくらいの悪趣味さです。原作及びCS版では文章のみで直接的なCGは無いのですが、アニメ及び漫画版ではこれらをしっかり忠実に画にしており、気になる方はぜひオススメします。一見の価値ありといえばありですので。

 それ以外にも、楼座さんをはじめとした生存者たちの険悪な雰囲気(だいたい楼座さんのせい)は絶妙にイヤ〜な気持ちにさせてくれてこれ以上読み進めることを躊躇させてくるレベルです。立場の弱い使用人が責め立てられ、挙句には自身の誇りすら奪われてしまう描写に、思わず嗜虐心を駆り立てられた人も多いことでしょう。

 本作を語る上で何より楼座さんは抜きにできません。前回は第一の晩で早々に退場したため、ただの虐待ママでしたが、今回は自身の魅力を余すことなく発揮できたのでは無いでしょうか。

 第1ラウンド、親族会議に向かう道中でハロウィンがしたいと騒ぐ娘真里亞を手始めに平手打ち。電車または新幹線の車内の視線を独り占めしたところでフィニッシュ。車内からは退場します。


 第2ラウンドは駅のホームの端。泣きじゃくる娘への息もつかせぬほどのオフェンス。早く親族会議に行ってください。頬を打つ音と泣き声が一体となり交響曲を奏でます。ところが、途中審判(駅員)の乱入により我に帰ったところで半ば強制的に終了。

 さらに続けて第3ラウンドでは、打って変わって先程の駅でハロウィンのお菓子を求めて途中下車します。甘やかすか殴るかの二択です。いよいよ間に合うのか怪しくなってきましたが、飛行機の遅延でなんとかなりました。

 そして第4ラウンドは六軒島の薔薇庭園。前作と同じ舞台です。暴力は当然ながら、さっき道中で買ってあげたお菓子を踏みつけてぐちゃぐちゃにするという蛮行にまで及びます。楼座さんは前作よりも進化している。

 楼座さんの進化は止まるところを知りません。兄や姉を失い暫定的に序列筆頭となった楼座さんはここから「王」の風格を漂わせ始めます。普段は傲慢な兄たちに遠慮していただけで本当の姿は今作のような苛烈な人物だったのでしょう。

 第5ラウンドが行われるのは朱志香の死体発見以降、使用人の中に犯人がいるとして使用人たちを糾弾します。身内での疑い合いを避けたい他の生存者からの顰蹙を買うも一切ブレないその精神はまさに黄金。使用人に対する信頼の証、いわば使用人の誇りそのものであるマスターキーを没収します。この徹底ぶりは味方なら頼もしいけど敵対は絶対にしたくないですね。

 「自分と死体以外は信用できない」という究極の理論により自分と娘以外の全員を排除した楼座さんは最終ラウンドへ突入します。

 最終ラウンドでは魔女の眷属を相手に大立ち回り。銃と体術、そして金塊を巧みに使い、「無双の魔女」と称される活躍を見届けながら物語の幕は閉じます。日頃から真里亞で鍛えていた甲斐がありました。

 こうしてあらゆる場面で「強さ」を示した楼座さんに対して、今作で見る目が大きく変わった人もたくさんいるでしょう。ひぐらしの詩音みたいですね。

 楼座さんの大活躍や悪趣味な描写の数々が気になった方は、ぜひ触れてみてください。いろんな媒体があるので。

 

 

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