見出し画像

生成AIを活用したプロダクトデザイン開発

こんにちは、LEFTE inc. の代表の田中です。
LEFTEのデザイン開発では画像生成AIを活用しています。
今回はデザイン開発における画像生成AIの活用法と、AI時代のデザイナーの役割についてお話します。

( ChatGPT-4o )


1:プロダクトデザインのプロセス

そもそもプロダクトデザインはどのように進めるのか簡単に紹介させていただきます。

大雑把にいうと大きく3つ「目的を決める」「手段を決める」「造形を決める」というプロセスがあります。

(目的:WHY、手段:HOW、造形:WHAT)


プロダクトデザインの基本的な流れは、商品企画者と共に「目的」を決め、設計者も加えて「手段」を決め、最後に造形を決めるという順になります。
(すでにコア技術を持っている企業などは「手段」が先にあり、その技術で叶えられる「目的」を考えて新しい事業を立ち上げることもあります。)

ただし、目的と手段が決まるまで「造形」を考えなくて良いかと言われたらそうではありません。「造形」を「視覚的なVisual」と「立体的なShape」の要素に分けるとしたら、その「Visual」を初期から同時に進めることで目的や手段の議論を活性化させることができます。

「Visual」を同時進行すべき2つの理由

1:ユーザー目線で捉える
実際にどんな機能やコンセプトがあるかに関わらず、ヒトはまずその見た目によって直感的に何かしらの印象を抱きます。
「Visual」があることで、ユーザー目線での印象や利用シーンを思い浮かべることができ、目的の解像度を上げたり目的に適した手段を考えやすくなります。
2:チームの認識を合わせる
目的や手段だけを考えていると、こうなったらいいな〜といった絵空事や、逆にこれは技術や法律的な細かすぎる議論が進んでしまいがちで、自分たちがユーザーに何を届けたいのか共通認識が無い状態で話が進んでしまうことがあります。
「Visual」があることで、チーム内の認識が揃い、協力して良いものにしていこうというモチベーションになります。


2:画像生成AIの活用法_基本


そして「Visual」を早めにスタートするために有効なのが画像生成AIです。
前項でも述べたように、早めに始める「Visual」づくりは「目的」「手段」の議論を円滑に進めるためという意味合いが強いです。
ですので、最適なのものをじっくり考える段階ではなく、「目的」や「手段」が曖昧な段階において素早く様々な可能性を提示することが求められます。ミーティング中にポンチ絵をさっと描いてコミュニケーションすることは良くありますが、それだけではなかなか伝わらないこともあります。

Chat-GPT や Midjourneyのように、漠然としたテキスト指示でもある程度推測&補完して良さげな画像を生成してくれるAIは、企画や要件が曖昧な開発初期に向いています。また、これらのAIはヒトの指示不足を補ってくれることで、ヒトの想像を超えた造形を出してくれることがあります。それによってデザイナー自身の視野を広げてくれたり、俗にいうマクドナルド理論※のように議論を活性化させてくれます。
(※ バカバカしい案が出ることによって、皆がよりマシな案を積極的に出すようになるという理論。)


3:画像生成AIの活用法_追加学習


開発が進んで企画や要件が具体的になるにつれ、「言葉にしづらいけどこんな造形要素を入れたい」「基本的なプロポーションは崩さずにディテールのアイデアが欲しい」という場面も出てきます。そんなときには、StableDiffusionのように画像で追加学習させることができるAIが活用できます。
「こんな要素を入れたい」「基本立体はこれ」という画像をAIに取り込むことで、思い通りの画像を出しやすくなります。

例えば下のような複雑な形はテキストで表現しづらいですし、ヒトの手で絵やデータを作るのもすごく大変です。
イメージ近い何かしらの画像(オブジェでもドレスでも植物でも)をAIに学習させて、テキストで「car, mobility」などと追記することで下記のような画像を狙って出すことができるようになります。

(プロポーションも崩れないように指示しています。)


4:AI時代のデザイナーの役割とは


頭の中にあるイメージを2Dや3Dで表現するスキルはデザイナーにとって間違いなく重要です。しかし、画像生成AIが便利になっていくにつれて表現することが簡単になっていきます。筆が使えなくても絵が描けるようになったように、イラストレーターやCADが使えなくても思い通りの表現ができるようになっていくでしょう。

そんな時代において、デザイナーはどう変化していくべきか。重要なのは
「現実力」と「整理力」だと思います。

現実力:
AIはネット上の情報やヒトのテキスト入力などデータをもとに回答するので、現実世界に起きていることの全てを把握しているわけではありません。つまり、現実世界における人々の困りごとや願望に気づくのは、やはりヒトの役目だと思います。
さらに工業製品の場合は、実装される対象もやはり現実世界です。とても魅力的なアイデアをAIが生み出してくれたとしても、それで終わりではありません。いわば、バーチャル世界のアイデアを現実世界の物理法則や身体性に適したデザインに昇華していく必要があります。

整理力:
いくらAIが優秀でも、指示するのはヒトです。プロジェクトの目的や手段に適したデザインを生み出すためには何を指示すれば良いのか、デザインに求められる要素を整理する力(要素を言語化し、階層・優劣などを構造化するなど)が求められます。
また、何となく良さげな画像は無数に表現できるようになりましたが、その中のどれがより適しているのか判断するために、無数のアイデアをさまざまな切り口で整理する力(それぞれのメリデメや特徴を言語化しマッピングするなど)も求められます。
※ デザインを狭義の造形行為・表現行為と捉えるのであれば、整理力はディレクションになるでしょう。



最後に

デザインという行為は斬新なアイデアを思いつくだけでなく、現実世界の生活や心に適した状態にして社会に届ける責任がある行為だと思っています。
画像に限らず、動画や3Dデータを生成したり、数式を解いたり、提案書を構築したり、、、AIは目覚ましいスピードで進化しています。もしかしたら現実力や整理力もAIが対応できるようになるかもしれません。
時代時代の現実世界から目を背けずに、ヒトとテクノロジーそれぞれが活きる道を模索し、未来を作っていきたいと思います。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?