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【長歌】鹽の歌

長歌(ちょうか)は、和歌の形式の一つ。
五七、五七、…、五七、七の形式で、すなわち五七を三回以上繰り返し、最後を七音を加える。(…)主に公の場でうたわれるもので、反歌を伴う。

Wikipediaより




 しおの歌


闇雲に 帽へ繊維を 押し込んで
うるうる靡く 水面に 佇めば起つ
縹渺の 風はぬかるみ。

歩み去る
音と光の 彩りに 曝されきった 影も影
児はふりかえり ふりかえり
錆びた右手に 曳かれつつ 次元を棄てる。

騒擾を 果ての果てまで 見送った
ただ一体の 擬人艇
つるりと色の ない顔で
おのが最後を 取り掛かる 主も無しに。

しめやかに いま水槽を 沈みゆく
未来の破片 過去の砂 爛れた銀河系のごと
その最深に 鎮もれる 旧年代の 統括機
0から23の 黒い 水晶塊は
明澄を 未練がましく 垂れ流し 既に狂えり。

棚に架す 硝子の線は 幾条も
死んだばかりの 腱に似て
しどけなく垂れ 戦ぎ 縒れ まだ生きている。

息を継ぐ 必要もなく かの腕は
背に負う鋏 さしのべて 鈍く振るえば
跋跋ばつばつと 記憶を絶やす
跋跋と 歴史を壊す。

えくせるぎ 再び神に 還すまで
しかし神さえ 面影は 鹽に崩れて。

シグナルの 翡翠の色の 粟粒は
明から滅へ 音もなく
頷くほどの 軽さもて かたがたに散る。

さようなら
わたしの前で 表情が 形を変える 驚きよ
あなたの内で 海の音が
翻筋斗を打つ うるささよ
思い出し尽く 紫の 割れた天蓋。

鳴る瘴気 豈に跫音は 聞こえるか
豈にバイタルは 豈に星は もはや問う無し
跋跋と 喜び閉じる
跋跋と 悲しみ閉じる。

逃れられない肉体と
逃れ難い 夢の彼方に 引き裂かれ
誰も時間の 露と消ゆ
荒れ野の息の 退いた後 蛇口の滴。

劫末の カンマに代わり 仰ぎ見る
塵ひとつなく 濁る空
さもあらばあれ とだに思わず。


【反歌】

赤な黒な3↑↑3さんテトレーションさん回のハグを嘉する天使の空中戦




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