【短歌試作】ゼロごつみ
【前置き】
短歌の楽しみ方のひとつに「いちごつみ」というものがあります。
おもに2人で、交互に行う歌の詠み合いなのですが「直前の歌から1単語を引用し、それを含みながらつぎの歌をつくる」という制約が特徴です。
「1語、摘む」から「いちごつみ」と名の付いたこの形式は、歌人同士の合作など、コミュニケーション性のある短歌形式として盛んに行われています。
では、前の歌から1語も摘まない場合はどうなるでしょう。
「0語、摘む」から「ゼロごつみ」
成立するでしょうか?
「それは単純に制約の存在しない短歌が複数あるだけでは?」
確かにそうですね。
では「摘まない」を「摘んではいけない」とするための制約を用意します。
【ルール】
一度使用した単語は、以降最後まで使用しない
どんな品詞の単語でもカウントする
活用形違い・表記ゆれなども同じ単語として扱い、使用しない
破綻したら終了
直前の歌だけではなく、それまでのすべての歌によって縛りが増えるようにしています。品詞分解をミスっていたらすみません。ツールやWeb辞書を併用し、Excelで記録しながら、やっていきます。
【実作】
1首目
2首目
3首目
4首目
5首目
ーーー破綻、終了ーーー
【どうだった?】
5首で終了という結果になりました。5首!?
案の定、名詞と動詞には困らなかった反面、助詞に苦労させられました。
とりわけ、主語述語の関係を決めるため使われる格助詞は
〈を・に・が・と・より・で・から・の・へ・や〉
の10個しかないので、みるみるうちに枯渇し、結局これ以上の探査は困難であると判断するに至りました。様々な文法上のはたらきを格助詞が内包しているせいで、数が少ないのによく使う、といった状況になっているようです。このあたりはルールを見直す必要がありそうです。
形容詞は「強い(強さ)」しか使いませんでした。これは「強さ」が「強い+さ」で判定され、名詞化の「さ」が使えなくなってしまったせいでもありますが、意外と自分は意識しなければ使わないんだなと気づきました。
同様に副詞も「ついぞ」しか使っていません。形容詞も副詞も、主観的な判断を織り込みやすい品詞です。となると、自分には作中の視点からものを眺める感覚が薄いのかもしれません。
品詞の話ばかりしてしまいました。
共有する語がひとつもない点から、断絶…をイメージして詠んでみたのですが、いかがだったでしょうか? ばらけていく言語をひとりあくせくと繋ぎとめる感じがして、作っていて寂しいものもありました。もし6首目からどこまでも続けるとするならば、関わり合いを諦めた名詞や動詞の羅列が、茫洋と広がっているはずです。それも楽しいかもしれませんね。
終わりです。読んでいただきありがとうございました。
【お知らせ】
Twitterで行われている「いちごつみ」の企画、「イチいち」に、
6/20(土) 20:00~ の回で参加させていただきます。
1時間、タイムラインでいちごつみのやり取りをする企画です。
過去回の記録もアカウント上にあるので、ぜひ見てみてください。
また、はたらきアリ出版『文藝蟻酸』に、短歌連作「RIGIDBODY」30首を載せていただいています。
こちらから装丁や作品の一部が見れたり、通販で買ったりできます。いい雑誌なのでよろしくお願いします。
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