見出し画像

【短歌25首】薄片(抄) / Orient / dye / TORCH


薄片(抄) 8首 ※たにゆめ杯4に応募した作品の一部です
Orient 7首
dye 5首
TORCH 5首




 薄片(抄)




Winter is coming soon 最新の3Dモデルわずかに破綻


画用紙を黄の画用紙を買いに行く眩暈のような喧嘩の後で


衝撃で泣いていたあいだに回った地球の角度ぶんのピザ・カッター


念入りに破いて撒いた紙だから目で追えるまだ、まだ目で追える


さだめにもかたいところとやわらかいところがあって錫のスプーン


この井戸をもし出られれば掘り当てたなまやさしさをあなたに渡す


水槽に粗く砕いて投げ入れた硝子の靴に差し入れる足


なんだろって傷口だってわかるまでいつまでもいつまでも見ていた




 Orient




溶剤と歯ブラシで何でもできる 聞くのは悪い冗談ばかり


枠線にちょうど収まる大きさの倫理を抱いて高速に乗る


この箱の二酸化炭素 彗星の尾が消えるのはオーバードライブ


眠剤の音色で弾いてくれているエレピにこちらから泣きに行く


花束、なんて貰わない方がいい面会室は初夏でも曇る


神様はどうせ来るのだし君たちと無視をする通話を繋ぎつつ


殺すのは凡庸 殺すのはダサい 返り血の似合わないイエベ春




 dye




咳止めの海から上がり野良猫の黴菌のことくりかえし説く


暮らせば煙 忘れさせゆく旧市街に錯じる切実な係り結びを


ウイルス性発疹やおら薄れつつ生きるなら炎のスノードーム


盤面に青痣やがて布をなす われわれのいち あのかたのせん


降る前と降った後とのわざわいの薄い氷にまた傘を置く




 TORCH




届くなら信仰なんてしていない無数の側根のうちの一


お互いを折り目がつかない手加減で曲げあいながら紋様になる


私の好きな本をくまなく知りながら異様な色の夜空へ発つの?


揺るぎないあなたを死んで次に行くへこんだ車で行くCONTINUE


しつこいな 私が闇になりかわりお前の偽の闇を焼き消す





▼画像版


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?