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夫の発達障害【夫婦でいる理由②】

交際当初私が彼に安心した理由の1つに、彼の不器用さがあった。

実父は母との家庭と、もう1つの家庭を股にかけていた人だったので、
私は小さい頃から男性というか男女の仲そのものに何の希望もなかったし、結婚制度自体に不信感をもっていた。
また、生まれながらにして実父には私以外にかわいがっている子どもがいたのだから、自分のルーツや価値なんて信じられるはずもなかった。

それ故、私は女心を知っている男性に対して、本気になることはなかった。
そんな器用な人が自分を心から愛することなどないと思っていたし、敏感なので、少しでも怪しい動きがあるとすぐに気が付いてしまう。
だから、自分がもうそれ以上傷つかないために、こちらもそういう人のことは端から遊び相手にしかしなかった。(とても失礼なことをしてきました)

ところが、夫は「モテてきた」と自負する割に、とにかく女性に不慣れな感じがした。
「ああ、この人、嘘がつけない人だ」
誤魔化そうとしてもバレバレなのが自分でも分かっている人だ、と思った。

「こんなに不器用な人、どうやって自分から口説くのか」
「仮に相手から言い寄られたとしても、全然気が付かなさそうだな……」
そう思えた。

だから、夫とは結婚してみようという気になったのだ。

一緒に暮らす中でどんなに夫とのコミュニケーション不全に悩まされても、
「いや、でも私あの人とじゃなかったらそもそも結婚してないな」
という気持ちは常にあった。
もちろんそれだけではないのだけれど、
他の女性関係に変な心配をしなくてもいい、というのはかなり大きい。

実際、今私たちは平日はほとんど顔を合わせず、お互いに外で何をしているかは知らない。
もちろん仕事をしているだろうけれど、業務が終了してからどこで何をしているのか、まったく知らない。
別居に近い状態なので、夫は出勤後どこかで夜を明かして翌日帰宅するのだけど、とくに何も不安はない。

これって、けっこうすごいことだよな、と思う。
事実がどうかは知らない。
重要なのは私自身が、「(そういう心配は)ないな」と直感的に思えること。微塵も疑わずにいられること。

彼はたぶん、そんな暇やお金があるなら、私や娘のことを考えると思う。
脳のキャパシティが少ないのだから、そうしないと日常が回らない。
そこに、他の事柄が入り込む余地がそもそもない。

そういう点は、個人的なトラウマを抱えている私にとって、とても大きい。
私が彼を夫として選び、夫婦でいることの大きな大きな要因。

だから私は夫の気の利かなさにはそれほど不満はない。
気が利かない人を自分で選んだ自覚がはっきりあるから。

彼は、そういう面で私の恐怖心を刺激しない。
私の価値を貶めない。

もしもそういう問題が浮上してきたら、自分の気持ちがどんなに荒れるのか想像もつかないけれど、
たぶんそういうことは起こらない。そう思える。

すごいな、と思うのは、彼は私に対してもそういう心配を一切しないらしいこと。
自分が基準!が激しい人なので当然なのだろうけれど、自分がしないことを私がするかもしれないという発想がそもそもない。
自分がそうであるように、私が他の異性に目移りすることを、想像だにしない。

だから、行き先を告げなくても興味がないみたいだし、
異性の呼び出しで出かけても何の心配もされない。
実際すべて仕事関係といえばそうなんだけど、異性の名前を上げて出かけてくると言っても、
「ああ、(仕事の人なら)行かなきゃね」
と送り出してくれる。

きっと、仕事ではじまった付き合いとはいえ、勤務時間以外に異性と2人きりで会うことをよく思わない人は世の中たくさんいるだろう。
その点、私としてもやましいことなど何もないので、夫の対応はとても気楽だ。

たとえもし、いつか私がその気になってしまったとしても、
夫は全然気が付かないだろうな、と思う。
もうそういうのは面倒だからないと思うけど。

お互いにそういう面での問題は起こりにくいので、
ここは夫婦として、子どもの養護者として、非常に価値ある点だと感じている。

こうして書いていると、ほんとうにここだけ見れば「いい夫」だと私も思う。
いいところもある。私がよく知っている。

その夫が、キレると手が付けられないなんて。
まさか私の首に手をかけるなんて。
それはもう混乱する。

でもそれが、障害。
それが、夫。


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