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タンクローリーカレー

家の周辺で工事現場を見かけることが増えた。
古い家を取り壊すところ、新設するところ、インフラの補修など様々だ。
そんな光景の中でタンクローリーを見かけると少し特別な気分になる。
コンクリートを流しこむためにやってきたそれは工事の序盤にしか拝めない貴重な存在。
なんだかまるで、会社の朝礼にだけ来て場を引き締めて去っていく社長のようだ。そのくせデロデロとコンクリを流し込む姿は図体に似合わず地味で可愛らしい。良い。
しばらくして家の基礎が出来あがっているのを見かけると、そこに命が宿されたようで少し感動する。

話は変わるが、タンクローリーの"おなか"の中にカレーやシチューを入れられないのだろうか。
コンクリと同じようにデロデロとカレーを皿に流し込んでみたい。
ささやかな夢のひとつ。


ここ数日、家の片付けに精を出している。
大きめのラックを購入し高い位置にも収納できるようになったおかげで足場が広くなった。

同時に断捨離を始めた。
使わないのに保存していた資料や雑誌などの紙媒体をまとめて捨てていく。
膨大な文字数がマンションの小さなゴミ捨て場に収まる景色は爽快だ。なんともクセになる。
けれどもその反面燃やされるであろう文字たちの行方も気になる。
少なからず誰かの言霊であったであろう文字たちは焼却炉からどこへ旅立つのだろう。
空色のゴミ収集車がむかえにくる。


前回のnoteに登場した「無限ゴーヤ」が僕の中で大ブレイクし、同時に自炊欲が高まった。
Instagramを訪ねれば美味しそうなレシピがいくらでも手に入るから、最近は食べてみたい料理を全て保存している。
積読ならぬ積飯だ。

やはり料理は楽しい。調理が好きだし当然食べるのも好きだけど、一番面白いのは今まで使ったことない食材や調味料と出会えることだと思う。
店で食べた"あの味"や"あの風味"の正体はこれだったのかと、作って初めて気付く瞬間がたくさんある。
そして、そんなとき自分の料理スキルがワンランク上がったかのような気分になれるのだ。

料理には他にも些細な楽しみがいくつかある。
・電子レンジの中、ライトを浴びて回転するお皿を眺めること。
・にんじんの皮をピーラーで思い切り剥くこと。
・サランラップの芯は頭をポコンと叩いてから捨てること。
・シェフになりきって白胡麻を振る時と黒胡椒を挽くこと。

きっと探せば他にもまだまだたくさんの楽しみがあると思う。
料理はなぜだか童心をくすぐる要素で満ちている。


7月は強い雨と地面を揺らすほどの雷によく出会うひと月だった。
雷を音と光に分けるならどっちが躰なのだろう。

LEEVELLES 髙木皓平

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