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映画『ペイ・フォワード』を観て

今、とても気になる映画だったので、改めて鑑賞してみた。

(内容にも触れるので、これからご覧になる方はご注意ください・・・)


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これは、結末で意見が分かれるところではあるが、
私は、これはこれで観る側に「ペイ・フォワード(次へ渡せ)」の意味に、ものすごいインパクトを与えた結末だと思う。

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目の前の(家庭内の)世界に、自分の無力感も相まって失望していたトレバー少年(ハーレイ・ジョエル・オスメント=映画シックス・センスの子)は、社会科のシモネット先生のある言葉に、かすかな光を見出す。


自分の周りの世界が好きになれなかったら、

”大きな失望”でしかなかったら、

嫌いな部分をクルリと変えてしまえ。

不可能は可能に(するのは)

君たち次第だ


「自分で世界は変えられる」という先生の言葉を、実に純粋に、素直に受け取り、そこに一筋の光を見出したトレバーの瞳の輝き!

その「(何としてでも)世界を変えたい!!」という想いの根本には、(出ていった)父親からの暴力と、アルコール中毒から抜け出せなくなってしまった母親を救うこと。それが自分自身の幸せであることを、どこか無意識でわかっていたのではないだろうか。

他者へ向けた愛こそが、自身への愛になるのである。


その感覚は、わかる気がする。

人はどこか「誰かの役に立ちたい」と思っている。

役に立てると心底嬉しいものだ。

そこに自身の存在の意味をも見出す。

他者の幸せに、自分の幸せを映し出すのだ。鏡のように。

(それは、ただ単に“自分本位”ということでなく、他者=自分という量子力学的な存在の在り方によると思うが、そこは敢えて触れないでおこう・・・)

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劇中で、トレバーは実に健気に、そして懸命に、共に心が通じ合っている母親(ヘレン・ハント)とシモネット先生(ケビンスペイシー)を結び付けようとする。

しかし、子供の頃の体験から愛する人にさえ心開けなくなってしまった先生に、自らの怖れを乗り越えてもらえるよう促すことができなかった(途中までは)。

他にも、ホームレスになった男性、いじめられていた友達に対しても、トレバーは、自分は結局何も出来なかった、と感じていた。

最後、インタビューでも自身の「ペイ・フォワード」は失敗だった、一生懸命努力したけど、何もできなかった、と話している。

(でも、時間差はあれど、シモネット先生も、母親も、ホームレスの男性も、トレバーからの「ペイ・フォワード」は実はしっかり受け取り、次へ渡していたのだけれど)

そこで、トレバーにもう一度「ペイ・フォワード」実行のチャンスが訪れる。

しかし皮肉にも、その懸命な想いは、“命を奪われる”という悲しい結末を引き起こした。


私は、ここにこの映画の最大のテーマを感じた。

すなわち

「ペイ・フォワード」は決して“見返りを期待するものではない”ということ。

「善行すれば、いいことがあるよ」ではない。

「見返りを期待してはいけない」でもない。

この「ペイ・フォワード」の世界には「見返り(言い換えれば、ギブ&テイク)」はそもそも存在しないのだ。

そしてそれは、頭でなく、心でおこなうこと(感じること)なのだ。

シモネット先生は、最初、課題を出したとき「不可能を可能にするのは“頭”だ」と言った。

そうではなかった。


不可能を可能にするのは「心」なのだ!


トレバーは、頭で「ペイ・フォワード」のしくみを考えたけれども、これを実行するにあたり、「心(感じること)」で行い、「心(感じること)」に働きかけるものだ、とわかっていたのだと思う。

それを、身をもって教えてくれたのだ。


「ペイ・フォワード」の肝は「心(感じること)」。

「心」で動いたものは、他者の「心」も動かす。


実にものすごい原動力になる。

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私はもうひとつ、シモネット先生の心の変化にも注目していた。
最初の頃、先生はトレバーの言葉を、いちいち変化球で受け取っている。
それも彼の子供の頃の原体験を知れば、疑り深くなるのも頷ける。

シモネット先生のように、良くない(変えたい)と思いつつも、変えられないでいる人は多い。私自身にもいくつか、、、ある。

トレバーは言う。

その不自然さに慣れてしまっていたり、変化を恐れている人もいる、と。

そして続ける。

「諦めては負けなんだ」


波長はいずれ共振する。

波が大きくなればなるほど、伝播する範囲は大きくなる。


やがてシモネット先生は、トレバーの、純粋な魂からの声に促され、気づき、そして自身の鉄のように凝り固まった心を最後は溶かすことができたのだ。


そして、トレバーが命にかえてでも変えたかった世界は、見事に、とてつもなく大きな範囲にまで亘り、変化したのだった。


世界が変わる」ということは、

自分の世界が変わる」ということでもある。


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最後に、トレバーのことばを・・・


周りの人がどういう状況か、

もっとよく見る努力をしなきゃ

守ってあげるために

心の声を聞くんだ


そして


世界は 思ったほど クソじゃない


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今こそ、ペイ・フォワードを。

私自身も、これを少しずつでも意識して、2021年~を過ごしてみようと思う。

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