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*簡単手作り療育グッズ【1】創作編*ソーシャル・ストーリーの作り方

自閉症スペクトラムの療育グッズ、ソーシャル・ストーリー。前回の投稿にて、ソーシャル・ストーリーの定義、テーマ設定、使用ソフトを紹介しました。今回は、簡単にできる創作手順とコツのご紹介(◆3から)です。

◆3:構想を決めて書き出してみよう

テーマが決まったら、いざ、構想を考えます!

◎まずは、テーマに沿ったサンプルを検索
 ソーシャル・ストーリーのサンプル、例文をインターネット上で見つけられたらラッキー。見本として幾つかダウンロードし、参考にできそうな例文やストーリーを取り入れれば、構想を練るのが簡単です。
 残念なことに、英語では沢山無料のストーリーサンプルが挙がるのですが、日本語のソースは限られているようです。これから、Noteでも少しずつサンプルの訳をUPしていければ、、、と思いました。
 サンプルがない場合、以下のように構想を決めます。

◎代表的な流れ:(1)タイトル→(2)イントロ→(3)中身→(4)結論
 少し、Noteにも似てるかもしれません。正式なメソッドでは、この流れをおさえればOK。
 【例】幼稚園の一日
 イントロ:幼稚園という場所や先生の紹介(本物の写真があればベター)

スクリーンショット (14)

 ↓
 中身:登園から退園までの流れを時系列で記述

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※靴箱やバッグの置き場など、注意することを書き込むこともできます

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 結論(まとめ):「こうやって、一日たくさん遊んで楽しく過ごします」※娘の場合には、頑張ったご褒美も伝えたかったので、「終わったらマミーと一緒にケーキを食べようね」と簡単に付け足しし。

スクリーンショット (16)

 テーマによっては、イントロからまとめまで、かっちり型にはまらない場合も。例えば、会話のキャッチボールや、友達について、プロのストーリーを見た場合、起承転結というよりも、ひたすら会話の行ったり来たりを図式化し、ところどころ「ここで黙るとK君は悲しいね」とか、補足の感情を入れ込んでいく形式的なものでした。(下の写真は「友達」のストーリーの一部)

スクリーンショット (18)


 正式な理想の流れは心に留めつつも、柔軟に構想を決めていいかなと思います。
 迷ったら、以下の点を考えます。

◎主要な6要素:
 テーマについて、以下の6要素に答えられるような構想を考えると、組み立てやすい。

①どこで?
②いつ?
③誰が?
④何を?
⑤どのように?
⑥なぜ? 


 しかし、必ずしもストーリー上で全部網羅しなくてもいい。そのストーリーで何を伝えたいかによって、優先順位が変わります。

 実際に書き出すとき、意識したいコツは以下の点。

◆4.写真やイラストを駆使:自作の最大のメリット❣

 特に、視覚優位のASDの人に向けて作成する場合、写真やイラストが肝だと思います。実際私も、本物の場所、娘、私の写真を使うことで、よりリアリティーをもって内容を伝えられることがわかりました。また、イラストで伝わる内容はイラストで伝えることを意識します。例えば、「皆にさようならと言って手を振るよ」だけではなく、手を振るイラストも添えてみたり。

スクリーンショット (19)

 ここで役立つのが、オンライン上にあふれる無料イラスト・写真素材。プライベート利用なので商用利用可の素材じゃなくてもいいですが、今回は商用利用も可能な、自分で使って便利だった無料素材サイトを幾つかご紹介。

◎写真:写真AC、ぱくたそ、pixabay

 ↑ まず、写真AC。とにかく量が豊富。無料ですが会員登録する必要はあります。

 ↑ ぱくたそは、場所に関してはACより少ないけれど、シチュエーションの写真が充実。登録しなくても使えるのが便利。

 最後は、pixabay。英語のサイトですが、日本語でも検索ができます。アートっぽい写真が多いです。

◎イラスト:イラストAC、いらすとや 

 パワーポイント内にもアイコンが豊富で便利。本格的なイラストでは、

↑ まず、イラストAC。写真ACのイラスト版でこちらも量が多い。無料で会員登録し、利用します。

↑ 登録しなくても使えて、多くの人に有名な、いらすとやも便利。

 このように、視覚素材を駆使することで、伝わりやすく、楽しいソーシャル・ストーリーができあがります。

 さらに、ナレーションや会話にもコツがあります。

◆5.ナレーションや会話のコツ

◎1人称が使えたら1人称
 当事者の立場に立ったストーリーなので、「私・ぼく」といった一人称の語りが効果的です。とはいえ、他者との関係に焦点をあてるトピックなどで、場合によっては3人称ベースで書く場合もあります。

シンプルかつ具体的な表現を
 よく言われることですが、自閉症の特性に、言葉を文字通り捉える、という特徴があります。「文脈から察する」のが苦手、とも言えます。なので、直接的で、具体的な表現を選んで作成します。
 また、私の娘の場合は、まだ複文などの理解に戸惑っていることが多々見受けられます。なので、できるだけ、単文かつ短文で、シンプルな表現を心掛けるようにしています。
 当事者の言語理解に即した表現を使用できるのも、自作のメリットです。

◎ファクト・ベースの記述が大事
 言葉を文字通り捉える、のと似て非なるコツ。書き手の主観的な思いを自閉症スペクトラムの当事者に押し付けないために、事実の記述に終始する、という点です。
 これは、創始者キャロル・グレイが強調している注意点の一つでもあります。なぜなら、彼女はソーシャル・ストーリーの定義の中でも「当事者にとって、感情的にも身体的にも負担のない安全な学びの場」となることを強く主張しているからです。ソーシャル・ストーリーが無理な押し付けになってしまっては、元も子もありません。
 なので、物事に対する感じ方については、あくまでも当事者の思いを否定せず尊重することが重要となります。そのために、ファクト・ベースの記述的表現であることが推奨されるのです。

 個人的には、このファクト・ベースというのが難しい点でした。というのも、客観的な事実しか記述しないとなると、伝えられることが大幅に限定されるからです。厳密になると、例えば、「べたべたになった手は洗うとスッキリするね!」というのもNGだと思います。なぜなら、当事者は「スッキリ」なんて思わないかもしれない。幼稚園で「楽しい遊びがたくさんあるよ」も押し付けかもしれない。本人が、楽しくない可能性も大いにあるから。しかし、書き手は、「手を洗う」ことや「幼稚園」のポジティブな側面も伝えたい。こうした葛藤がありました。
 

 この点、娘の特性もよく知っている言語聴覚士さんは、「楽しい・楽しくない/気持ちいい・悪い」を他者に意思表示する娘の場合、そこまで厳密に考えず、ポジティブな側面を書くのは悪くないと仰いました。
 大事なのは読むときで、この時、娘はどう思ったか、気持ちを受け止めてあげる作業を伴うことが望ましい、とのこと。それは、会話ができれば会話でも、うなずきがあればうなずきでも、サインをこちらが気に留めるということです。

 なるほど、当たり前のことですが、ソーシャル・ストーリーはストーリーそのものだけではなく、一緒に読むときの状況、読み方も含め、トータルの療育場面として考えるのが重要なのだと改めて思いました。

◆6:作ってみた感想

 以上、作り方のご紹介でした。療育グッズの作成というと、ちょこっと気合が入りますし、実際、気合いを入れるべきなのかもしれません。ですが、一度構成が決まれば、あとは色やレイアウトを考えたり、写真を選んだり、アルバムづくりのような楽しさもあります!また、娘を丹念に想う貴重な時間でもあります。
 これくらいの緩さで、娘に優しく伝わるストーリーを目指しながら、これからも作っていきたいです。

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