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ASDの子供が癇癪を起こしたら?怒りを自分で鎮めることを学ぶ方法(後編):個別の対処法と対策*サンプル付き*

 自閉症スペクトラムの子供が癇癪を起こして物を投げたり他人をはたいたりしてしまった時、自分の怒りを鎮める方法をどうやって教えたらいいのでしょうか。前編では、すべての方法に共通する心得を書きました。

 今回の後編は、個別の対処法と対策を書き留めます。心理士さんの指導と、英語の既存サンプルなどを元に、娘用にアレンジした作業シートも添付します。超簡素でデザイン性皆無ですが、誰かの参考になりましたら嬉しいです❢

◎「落ち着くために〇〇シート」を見せ、作業を選択させる

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 これは、娘(4歳)にとって効果がありました。上の一枚目の写真のように、心を落ち着かせるための作業の絵カードが一枚にまとまっています。「心を落ち着ける作業」が何かは子供によって異なるので、アレンジして、効果的な作業を付け足していくと良いです。他の例として、

・キネティックサンドで遊ぶ
・つま先をタッチする
・ぷちぷち
・ニギニギできるボールを握る

なども心理士さんのオススメでした。

<使い方>
 癇癪を起こして、物を投げたり叩いたりしそうになったら、その手前で止め、ごく手短に言い聞かせたあと、さっとこのシートを見せます。
 自分の感情に囚われているときに、色々言葉で言っても入ってこないけれど、このシートを見せて、一瞬でも視覚的に気を逸らせれば、効果が期待できるチャンスです。
 この中で、自分でやりたいことを選べれば選んでもらう、自分で選べなければ私たちが気に入りそうなものを選択して誘ってみます。
 そして実際に、選んだ作業を行います。見守ることができれば見守って。できなければ一緒に作業します。
 2枚目の「おちつくために/I can calm down by」というページは、おまけです。この言葉も、子供にとって一番反応の良い言葉に適宜変えるといいかと思います。余裕があれば、1枚目の絵カードをコピーして(ラミネートするとなお使いやすい)切り離して、この2枚目の空欄に、選択したカードを貼れるようにします。これは、少しでも、一連の行動を視覚化、構造化する狙いがあります。でも、そこまでしなくても、1枚目のシートをプリントアウトして見せるだけでも、娘には効果がありました。
 落ち着いたら、褒めてあげて、後々、私たちの介入なしに、自分自身でもこの作業に取り組めるよう、徐々に促していきます。最近、娘はシートを見ると自分で気に入ったもの、できるものを行動に移すようになりました。

<ポイント>

 ● ご褒美(おやつやゲームなど)は避ける
 ・・・癇癪を起こすと良いことがあるという誤ったパターンを植え付けないようにするため
 ● 単純な作業にする
 ・・・後々、私たちがいなくてもできるような作業を見据えて考える。学校や幼稚園でも出来そうなことも望ましい

 この方法が効果を奏すのも、完全にパニックにならない段階での介入のとき。何かまずいことをしそうだ、といった雰囲気の段階で、子供の気持ちを受け止めつつ、望ましくない行動をとらせずにこちらの行動に置き換えて、気持ちの行き場を作ってあげることが目標です。

 サンプルとして、作業用PPTと、レイアウトが崩れてしまった時のための完成版PDFを、両方貼ります☟


◆作業用PPT:落ち着くために〇〇シート

◆完成版PDF:落ち着くために〇〇シート

◎ご褒美シールの導入

 子供が怒ったり苛立ったりしても、物を投げずに済んだ時や、心を落ち着かせることができた時は、ご褒美シールの導入を勧められました。シートにして貯めていくのも効果的とのこと。
 ご褒美シールは、かんしゃく対応だけでなく、色んな場面で使えるので便利ですね❢たとえば、下の写真は、ASDの子供にとって難しい場合がある「静かに座る」ことに使うご褒美シートです。

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 Wordのサンプルファイルはこちら☟

◆作業用Word:ごほうびシート

 娘の場合には、シールを貰えること自体は特に喜びません。ふだんのワークブックなどでも、「できたねシール」に興味を示しません。シールで達成感を得るより、作業そのものが楽しいかどうかが問題なようです。
 ですが、そのシールが娘の好きなキャラクターだったら、貰えて嬉しそうなので、用意できたらそうしたシールにします。さらに、娘の場合には、シールが5枚あるいは10枚貯まったらご褒美がある、というシステムは、目に見えて頑張れるので、上の表の一番右の部分が、大事です。

◎ソーシャル・ストーリーの読み聞かせ

 鉄板のソーシャル・ストーリーは、子供が落ち着いているときに導入します。パニック中はなかなか嚙み砕いた説明は通用しないので、「どうして叩いたらいけないのか」に関する細やかな伝達は、この機会に行うことを目指します。ソーシャル・ストーリーの創始者キャロル・グレイも、穏やかな環境で読むことを力説しています。
 感情のコントロール、アンガーマネジメントや、具体的に「叩かない」ことを教えるストーリーなどが適します。英語ですが、サンプルを二つ添付します☟

◎感情に関する絵本の読み聞かせ

 以前も、パニック対応の時にご紹介した、「気持ちシリーズ」は娘のおうち療育にとっては欠かせません。

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 「ハッピー・怒ってる・悲しい・寂しい・ラブ・がっかり」など、比較的細かく分かれた気持ちが一冊ずつになっています。可愛い絵と共に、気持ちの説明と、望ましい行動がセットになったストーリー。娘はこのシリーズのおかげで、ただ癇癪を起こすだけでなく、その中でどの気持ちなのか、本を持ってきたり、言葉で表したりして示せるようになりました。
 残念ながらこのシリーズは日本語に翻訳されていないのですが、日本語でも同じような絵本はあると思います。普段の読み聞かせでの導入をオススメします。

◎最後に 

 以上、感情のコントロールの仕方を学ぶ方法のご紹介でした。

 子供のかんしゃく、パニックは、子供も辛く、親も辛いものですよね。発達障害、定型発達問わず、育児をする上で、誰でも通る道かなと思います。その中で、自閉症スペクトラムの子供には、その特性に沿った対応の仕方が色々あるようです。幾つか対応策のストックがあると、親も、少しだけより冷静に対処できます。

 親子共々、心穏やかな時間が少しでも増えますように。

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