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ASDの子供が癇癪を起こしたら?怒りを自分で鎮めることを学ぶ方法(前編):3つの共通事項

 自閉症スペクトラムの子供で、特に、会話のやり取りがなかなかできない場合、子供の癇癪に対して、言葉で諭したり、思いの丈を言葉で聞いて受け止めてあげる、ということが難しいです。子供は、意思の疎通がままならないことでさらに混乱や苛立ちが募り、物にあたったり手が出たり、自傷行為にもなりかねません。
 そこで、ASDの子供に「嫌なときも、物を投げたり人に手を出したりしちゃだめだよ」ということをどう伝え、どのように別な気持ちの鎮め方を伝授するのか、親でも簡単にできる療育のコツを整理します。
 それぞれの子供に合った怒りのコントロール、すなわちアンガーマネジメントの方法は異なります。私も、沢山の候補の中から、これは効いた・効かないというものを選り分けて進んでいます。
 まず、すべての方法に共通する、サポートの留意点を書いてみたところ、長くなったので、そこまでを今日は前編とし、より個別の方法については、次回記します。
 以下、共通事項の概要になります。その下に、それぞれの補足を行います。

◎完全にパニックになる前に介入する
◎してはいけないことと、代わりにできることをセットで教える
◎癇癪の理由を予測する

◎完全にパニックになる前に介入する

 パニックになってしまうと、そこから何かを伝える・聞くどころじゃありません。私も経験があります。何かを教えるためには、できればその手前の段階で介入するのが必要と心理士さんよりアドバイスを受けています。パニックになってしまったら、その時はパニック対応に切り替えて、感情のコントロールを学ぶ機会は、また次回に。
 また、自閉症スペクトラムの特性により、記憶力が良く、トラウマに囚われがちな子供にとっては、パニックの体験自体もトラウマになり得ます。ASD育児では「なるべく失敗体験をさせない」ということが重要と言われます。これは、完璧主義という特性を鑑みると納得できる留意点ですが、手を出してしまったり、物に当たってしまったりして叱られる、という一連の流れ自体が嫌な失敗体験として刻まれる可能性もあります。これを防ぐためにも、事前介入が大事であるように思います。

◎してはいけないこと、代わりにできることをセットで教える

 ダメなことを伝えるだけでは、じゃあどうしたらいいのか途方に暮れてしまいます。子供の気持ちの持っていき場所を作ってあげるためにも、「何かを止めさせたら、代わりにこうしてみよう」という代替案をセットで伝えることが肝心であると、心理士さんからのアドバイス。将来的には自分でそれを見つけられるのがベストですが、それまでは、部屋の隅に行くとか、ボールを握るとか、その子供に合う具体例を示してあげるといいようです。
 因みに、ASDの人に対しては「NO」を言ってはいけない、というアドバイスをよく目にします。下に添付したPDF資料「 自閉症児童生徒への指導」は少し古いものの、現在のASD育児にも参考になるコツが簡潔にまとめられていますが、そこでも分かりやすく、

(×)「廊下を走ってはいけない」→(〇)「廊下を歩きましょう」

 というアドバイス例が載っています。肯定的に伝える方が、何をして良いか具体的に伝わりやすい、という大事なことを教えてくれています。


 ただ、アンガーマネジメントにおいて「代わりにできることを伝える」というのは、上の意味とは異なります。「物を投げてはいけない→物を大事にしましょう」という肯定的な言葉への置き換えのことを指すのではなく、「物を投げない/物を大事にする」という教訓と、「物を投げる代わりに〇〇の方法で気持ちを落ち着けよう」という代替案のセット、つまり、あくまでも行動の置き換えを指します。

◎癇癪の理由を予測する

 最後の留意点は、親が頭の中で行うことです。例えば、娘の場合「歌を歌われると泣く」という習慣があるのですが、漠然と「歌」だけではなく、もっと細かく理由を考えます。音が怖いのか、耳障りなのか、何のトラウマと結びついているのか、録音と肉声で反応が異なるのか、誰の歌ならダメなのか、静かな音楽もリズミックな音楽も両方嫌なのか、等々。
 子供がお話できない場合、過去の経験に遡って考えたり、セラピストさんとの療育の中で、敢えて小出しにしてみて観察する(子供に負荷を与えかねないので、子供とコミュニケーションをとりつつ慎重に)、といったことも行ったりします。
 理由に予測がつけば、子供が説明できなくても代弁してこちらの理解を伝えてあげる、そして子供の気持ちをより明確に受け止めてあげることができます。言語表出よりも言語理解が勝っている子供にはとても有効です。また、ピンポイントの療育もしやすくなります。

 さて、ここまでがアンガーマネジメントサポートの共通事項です。次回は、個別の色々な対処法をまとめます。

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