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映画『ROMA ローマ』 分厚い世界観とトランスレーション

先日も少し書いたが、現在ネトフリで公開されている映画『ROMA ローマ』。日本では東京国際で上映された以外は劇場未公開。それを韓国出張時に観てきました。『#ゼロ・グラビティ 』で有名なアルフォンソ・キュアロン監督の自伝的物語を、当時同居していた家政婦のメキシコ人女性の視点から描いた全編モノクロ作。泣かない人いないんじゃないか。すべてが詰まっている。ベネチア映画祭金獅子賞作。

実は言うと前知識はほとんどなく、冒頭は中々世界観に入れなかった。映画館に遅れて入ったこともあり、物語の舞台がどこなのか、どういう人間関係なのかもよく分からない。モノクロということもあり、スクリーンに映るのはちょっと退屈な映像だった。

しかし人間関係や展開が焦点を結ぶにつれ、退屈だった映像は、いつのまにか自分事になった。心のヒダや芯に当たるシーンが続くと、自分とスクリーンの関係は一体化する。これぞ映画の醍醐味だ。時代設定や国籍などが全く異なる世界であっても強く繋がることができる。

そんなことを改めて感じさせられた作品。

本作は、貧富、男女、年齢、生死などのコントラストが、ときに残酷に思えるほどくっきりと描かれており、それが作品としての格を押し上げている。両極があってこそ世界の奥行きが広くなる。起承転結の巧妙さにはしょせん限界がある。善悪や人智を超えた世界観のある作品に私は魅力を感じる。本作はどこか科学的でもある。


と、ここまでは真面目な話だが、実は本作には「圧巻」のシーンがあった。ホテルの一室で、全裸の男がいきなり棒術を披露するのだが、韓国の劇場では修正がなく、見事な棒術と共に左右に大きく振れる局部の映像を鑑賞することになる…。そして「ハァーッ!」という決めのポーズのあと、日本語で「ありがとうございました!」と男は言う。軽くパニックだ。

そして違うシーン。100人はいようか、村の若者たちと棒術の訓練に励む、例の男。少林寺のように統率の取れた動き。日本人らしき教官の「いーち!にー!さーん!」という号令とともに一つ一つの動きをこなす若者たち。訓練が終わり、教官が叫ぶ。「자렵〜!(気を付け〜!)」。まともやパニックである。観客もザワザワしだす。「え、韓国人なの?」。たぶんアクターがいなかったのかな。そんなロスト・イン・トランスレーションも味わえた作品でした。🤔


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