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『ブラックパンサー』 アイデンティティの転倒と使命感

正月休みにDVDで観たマーベルの『ブラックパンサー』。原作全く知らずに観たんだけど、のっけから展開が劇早で正直何が起きているのか分からない。そのまま怒涛の展開のなか、アフリカのワカンダ王国という超未来都市に舞台が移り、初めて主人公がどういう人物で何を起こっているのかが分かる。でも面白い。

本作は美術演出が秀逸で、ワカンダ王国はアフリカ諸国の文化や民俗の推を集めたようなビジュアル。エキゾチックでパワー溢れ、(東洋人の目には)度肝を抜かれる個性があり、カラフルでモダン。ここは一つの見所だろう。

そして最大の見どころは、スペクタルなアクションバトル!と言いたいところだが、違う。本作はSFアクションの衣を着てはいるが、極めて効果的な社会的メッセージを伝えてくる作品だ。

アフリカ人として、あるいはアフリカ系米国人として、苦難の歴史やルーツ、貧困、矛盾、葛藤を現すのだが、それをワガンダ王国内部の路線闘争(王位争奪)という構図にすることで、いわば転倒させ、非アフリカ系の人間(特に白人系米国人)に考えさせるというストーリー形式になっている。そこが驚くほど効果的に響く作品だ。マーベルの使命感のようなものを十二分に感じた。演技や演出に関わったアフリカ系米国人の気持ちたるや如何程のものであったろう。

とはいえ、途中途中、え?と思うような換骨ユーモアが入っており、あくまでエンターテイメントとしての体は崩さない。そこがまた良し。

#ブラックパンサー #マーベル #映画 #映画レビュー

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