障害の課題を考えるには?
Ledesoneライターのしんちゃんです。
記事の一つ一つのトピックを掘り下げる前にまだやるべきことが多くあります。
まずは、障害って何?
ということです。
病気とか、動けないことや体の自由がないことが障害じゃないの?
と思う人もいるかもしれない。
障害にとって何が問題か?というと
私はアクセス(access=近づくこと)の問題だと思っています。
何かへのアクセスが妨げられた状態を障害だと定義できます。
前回のイントロで述べた項目がありますが、それらへのアクセスができないことや
やりにくいと感じる要素が障害なのだと思います。
全てのことを網羅しきれていないかもしれないけれど
前回挙げていたのは、
・教育ー教育を受けるにあたっての学びやすさ
・就労ー就職しやすさ、働きやすさ、仕事の続けやすさ
・日常生活のアクセシビリティ(衣食住での利便性)ー日常生活の困難への対処や住みやすい街づくり、介助などの支援
・共同体(コミュニティ)への参加ー当事者団体から社会全体との協調へ向かう課題解決
・友人などその他人間関係ー協調して理解し合って生きていく課題解決
・恋愛や結婚ーさらに上の関係から発展。これは健常者でも問題で、出会いの場所や障害を理解したり、友人関係から始めるより接近した関係性、広範囲の課題解決
・レジャー、観光、余暇活動ー「遊ぶこと→学ぶこと→働くこと」への発展が人間の人生のそもそもの段階的な発展です。色々な方向性からの余暇の捉え方を含めて教育や就労や人間関係との相互作用でも解決も視野に入れること
ですが、どんな事情でもこうしたことに近づく(アクセスする)ことが困難なのが
障害と言えるでしょう。
こうしてみると社会全体の課題解決にも寄与できるのではないかと思います。
アクセスは健常者目線でも課題が多いと思います。
つまり、病気が障害、怪我が障害ではなく、
それによってアクセスが妨げられた状態を障害と呼ぶべきだと思っています。
多くの人はそうだよね、と思ってくれると私は想像していますが…
すべての人のために?
ここに面白い図書があります。
『より多くの人が使いやすいアクセシブルデザイン入門』星川安之・佐川賢共著、2007年、日本規格協会
です。
この本では、アクセシブルデザイン(Accessible design)という、障害者を含めた生活上の困難や道具へのアクセスが困難な人向けの製品やサービスについてわかりやすく説明されています。
アクセスの困難=障害ということに限定されるならば、これこそ障害に焦点を当てたものの考え方です。
日本ではアクセシブルデザインのことを共用品と呼びます。
実は近年、いろいろな考え方が出されていて、バリアフリーやユニバーサルデザインという考え方もあります。
まず、よく知られたバリアフリー(Barrier free)。
日本では「ハートビル法」の制定からおなじみになってきました。
簡単に定義すると、
「障害者や高齢者などが社会生活に参加するにあたって、ものや階段など物理的な障壁(バリア=barrier 英語で「壁」の意味)や精神的な障壁を取り除く(フリー=free 英語で「取り除く」の意味)ためのサービスや施策やそれが実行された状態のこと」です。
壁=バリアを探してそこを取り除く、という考え方は画期的でしたが、これ見よがしにトイレを障害者専用にしたりして、一般の健常者がそうした器具を使い辛くなりました。
そこで登場したのがユニバーサルデザイン(Universal design)という考え方です。
これは健常者も含めて、誰もが簡単に使える設計・サービスのことです。
アメリカの学者ロン・メイスが考え出したものです。
例えば、妊婦も、骨折して数か月間松葉杖のお世話になる人も、一時的であるとはいえある一定の身体障害者と同じ条件にいることにもなります。
老化すれば、身体障害者のように体が不自由になることも想定されます。
つまり、状況によっては障害に限定しなくても同じように不自由な体験をすることがあります。
そうした状況も障害も含めて考えることで全体が使える設計やサービスを目指すことが理想とされたのです。
しかも、そこには身体に不自由のない人も当然同じ条件で使えて快適な設計・サービスということも含めていきます。
これは究極の目標と言えます。しかし、例えば本当に両手が使える人と片手の人が同じように使える道具をデザインできるかというと、それは困難かもしれません。
そこで、すべての人でなくても「できるだけ多くの人」に使えるように=アクセスできるようにする、というのがアクセシブルデザインの考え方です。
つまり、ユニバーサルデザインはアクセシブルデザインを含めた大きな考え方です。
ここで、もう一つ二つ、これらと似た考え方もご紹介しておきます。
デザインフォーオール
この考え方は、能力や年齢、障害など状況を問わず、あらゆる人々が使いやすい設計、サービス、システムを作ることを目指します。
この考え方が画期的なのは、あらゆる人々の中には、今後の未来の子孫のことも視野に入れるという時空も超えるということ、そして、システム、つまり、社会全体の体制にもアプローチするという壮大な理想だからです。
インクルーシブデザイン(Inclusive design=包括的デザイン)
という用語もあります。これはイギリスで考えられたもので、ユニバーサルデザインとかなり似ています。イギリスでは、障害者をもっと社会に参加させるために、産業の背中を押すという試みがあります。
民間主導というよりは国などからの支援のプロジェクトという意味では違いがあります。
これらの根底にあるのが、ノーマライゼーション(Normalization)というデンマークの福祉から来ている考え方です。
ノーマライゼーションでは障害のある人もない人と同様に普通の生活が送れるようにする条件を整えることを目指すことを指します。
また、そうした社会こそノーマル(normal=英語で「普通」の意味)だという理念です。
アクセスはどの方向からも柔軟に ―アクセシブルデザインの意義
アクセシブル=どのような立場の人もからも接近できる、という考え方はベクトル重視の考え方です。
色々なベクトルから接近可能なことは、その時々の状況に合わせてその設計やサービスを利用できるように工夫していく開拓の試みでもあります。
最初からすべてを網羅するという面で捉えるあり方よりも、新たなベクトルが発見・発生した場合にはそれに対応するという柔軟なアクセスを試みることを可能にできるのです。
つまり、多方面からのアクセスの発見や開拓を継続していくことで設計やサービスは限りなくユニバーサルに近づいていく、ということも意味するでしょう。
それがアクセシブルデザインの意義と言えるでしょう。
この記事連載の狙い
この記事連載では、障害の課題を発見したり、解決するアイデアを模索することを狙っていきます。
そう、つまり、この記事連載はアクセシブルデザインなのです。
色々な試行錯誤をしていく中で、課題のベクトルを探していきます。
課題に多方面からのアクセスを試みていくのです。
障害福祉の考え方を整理しつつの作業になりますが、整理していく中で具体的な課題へのアクセスの方法を試みていくのです。
日常の具体例に迫ることや抽象的な考えから具体的な事例にアクセスするなどベクトルは様々な形をとるでしょう。
きっと連載がうまくいけば、それは大きな地図に、ユニバーサルなものなっているかもしれません。
どこまでやっていけるか、それはトライですが、考えを整理してやっていきます。
次回から、それぞれの障害福祉分野の考え方を見ていき、具体的な事例に踏み込むことも少しずつ始めていきます。
よろしくお願いいたします。
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