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YOUR TIME ユア・タイム 4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術


【書籍情報】

タイトル:YOUR TIME ユア・タイム  4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術
著者:鈴木祐
出版社:河出書房新社
定価:1,672円(税込)
出版日:2022年10月19日

【なぜこの本を読むべきか】

世の中には無数の時間術があるにも関わらず、今日も大勢の人が時間の悩みを抱えているのはなぜか。

それは、万人に効果がある時間術は、いまだひとつも見つかっていないからである。

私たちが本当に気にすべきは、時間術ではなく、時間感覚なのだ。

本書は、科学的根拠に基づき、時間不足を解消して有意義な時間を増やす方法を紹介した一冊だ。

本書は以下のような方にオススメしたい。

■いつも時間に追われている
■口ぐせは「時間がない」
■もっと大切なことに時間を使いたい

人生の時間は限られており、私たちはみな、いつか終わる。

だからこそ、本書が解き明かした「時間の正体」を理解し、最後まで有意義な時間を過ごそうではないか。

【著者紹介】

鈴木祐

科学ジャーナリスト。
1976年生まれ。慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。
10万本の科学論文の読破と、600人を超える海外学者や専門医へのインタビューを実施。
ブログでは心理、健康、科学に関する最新の知見を紹介し、月間250万PVを達成。
著書に『最高の体調』『科学的な適職』他ベストセラー多数。

【本書のキーポイント】

📖ポイント1

人間の脳はつねに確率を計算しており、「過去または未来の出来事としての確率が高い世界」が時間の正体である。

📖ポイント2

予期が薄すぎると時間の見積もりがゆがみやすくなるため、「タイムボクシング」という技法をおすすめする。

📖ポイント3

想起の誤りが大きすぎると現実味のない計画を立ててしまうため、「タイムログ」という技法をおすすめする。

【1】時間の正体を知る

人間の脳はつねに確率を計算している


ここ数年の認知科学の研究により、時間の謎を解き明かすのに役立つ新たな考え方が登場した。

ズバリ、「人間の脳はつねに確率を計算している」。

本書で意味する確率とは、自分でも気づかないうちに脳が無意識下で行う計算のことだ。

たとえばあなたが文化のまったく異なる国へ、ガイドブックなしで旅に出たとする。

言葉も習慣もすべて異なり、手探りで現地のルールを学ぶしかない状況。

そんな中、目の前に現れた男性がこちらの手にツバを吐きかけてきたら、あなたはどんな反応をするだろう。

実際にケニアのキクユ族などは、相手の手にツバを吐く行為を「歓迎」の表現として使っている。

しかしそんな風習を知らない場合、怒りを覚えるのではないだろうか。

このような感情が生まれるまで、あなたの脳は以下の思考プロセスをたどっている。

➀相手の意図がわからないため、記憶をもとにヒントを探ろうとする
②「日本ではツバを吐く行為は侮辱」というような情報が脳から取り出される
③「であれば、今回も侮辱されている確率が高いはず」と推測する

脳がこれらの複雑な処理を行う時間は1秒にも満たない。

そんなわずかな間で、脳は瞬時に記憶のデータベース(データの集まり)を使って計算を行い、目の前の現象に過去の体験が当てはまる確率を見積もり、その結果から自分のリアクションを組み立てている。

さて、話を戻そう。

怒りを覚えたあなたが男性を睨みつけようとすると、相手は笑顔を向けてあなたの手を取り、急に周辺を案内し始めたのだ。

そこで、脳は再び計算をスタートさせる。

➀男性の反応が予想と違ったため、「ツバを吐く行為は侮辱」という最初の推論を修正し始める

②「この国でツバを吐く行為は好意の表れかも?」という新たな仮説を立て、最初の推論に組み込む

③男性の行動だけで結論を出すのは危険なため、当初の確率から割り引き「この国では80%くらいの確率で『ツバを吐く行為=侮辱』かもしれない」と見積もる

上記では80%の確率としたが、あなたの頭に蓄積されたデータによって数字は変わる。

いずれにせよ重要なのは、意外な出来事が起こるたびに脳は確率を再計算し、確率のデータベースを更新していくという点だ。

いわば、脳は「推論マシン」といえる。

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あなたが体験する「時間」の正体とは?


古代の哲学者たちは、「人間は“現在”を体験する機能しか備えていないのに、過去から未来へ続く時の流れとは意識の錯覚に過ぎないのではないか?」という謎を示した。

そしてたどりついた答えは、人間は「時間の流れ」など実感できておらず、世界の変化率を「時間」と呼んでいるということ。

たとえばビルの解体業者が巨大ビルを破壊し、後に瓦礫の山ができあがったとする。

瓦礫の山を見た人が「破片が宙に浮いて組み上がり、いずれ立派なビルができる」と思うはずもなく、みな「ビルが壊れて瓦礫の山ができたのだろう」と考える。

このときの脳の動きは、以下の通り。

➀「瓦礫の山がある」という情景が視覚情報として脳に送られ、「瓦礫」に関する情報が記憶のデータベースから取り出される

②記憶のデータを使って確率計算を行い、「瓦礫の山は建築物だった可能性が高い」と推定する(過去)

③再度同じような計算を行い、「瓦礫の山が自然に組み上がることはないため、誰か片付けない限りは今後も同じ状態が続く確率が高い」と推定する(未来)

過去と未来どちらの場合でも、「瓦礫の山」という現在の情報をもとに計算が行われる。

そうして生み出された、「過去または未来の出来事としての確率が高い世界」こそが、あなたが体験する「時間」の正体なのだ。

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時間管理のフレームワーク


脳が時間を生み出す仕組みは、1枚の写真を眺めながら過去と未来を思い描くことと似ている。

【写真】
我が子の1枚の卒園写真を眺めながら複数のイメージを広げ、「こんなに小さかったのが来年は成人か」というように、当人の意識に過去と未来が広がる

【脳】
「目の前に広がる一瞬の情景」という1枚の映像をもとに確率計算を行い、要求に応じて過去と未来を作り上げる

しかし処理のスピードにおいてはまったく違う。

人間の脳は過去と未来の変化率を高速で計算し続けており、そのプロセスを「時間が流れる感覚」として体験している。

そして脳が持つ確率の計算機能を考慮したとき、あなたが感じとる過去と未来は以下のように表現できる。

■過去=いまの状態の前に発生した確率が高い変化を、脳が「想起」したもの
未来=いまの状態の次に起きる確率が高い変化を、脳が「予期」したもの

前項でたとえた「瓦礫の山」で考えてみよう。

「ビルが壊れて瓦礫の山ができたのだろう」といった過去を生み出す作業が想起。

「誰か片付けない限りは今後も同じ状態が続くだろう」といった未来を作り出すのが予期だ。

さて、ここまでくればいいだろう。

あなたは、過去から未来へ続く時の流れなど体感していない。

人間が認識できるのは今の変化だけであり、そこにあなたが「時間」の概念を後から当てはめただけに過ぎないのだ。

そして導き出された時間管理のフレームワークが、「正しい時間術とは、あなたの『予期と想起』を調整するものである」。

つまり、「予期と想起で時間管理せよ!」ということだ。

【2】未来をやり直す

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