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THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術

【書籍情報】

タイトル:THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術
著者:ジョーナ・バーガー
訳者:桜田直美
出版社:かんき出版
定価:1,980円(税込)
出版日:2021年3月16日

【なぜこの本を読むべきか】

人が何かを変えたいとき、説得したり、逆に圧力をかけたりと、「押す」という戦略を採用しがちだ。

しかし、それでは何も変わらない。

変化を起こすカギとなるのは、「障害を取り除く」ことなのだから。

本書は、科学的なエビデンスに基づき、人の心に変化を起こす方法を紹介した一冊だ。

本書は以下のような方にオススメしたい。

■組織を変えたいと思っているリーダー
■顧客の購買意欲を変えたいと思っているマーケター
■相手の態度を変えたいと思っているすべての人

本書の方法を活用すれば、組織の文化、新商品の売り出し、そして相手の態度さえも変えることができる。

まずは、自分の変えたい欲求ではなく、周りの心の声に耳を傾けよう。

【著者紹介】

ジョーナ・バーガー

ペンシルベニア大学ウォートン校マーケティング教授。
国際的ベストセラー『インビジブル・インフルエンス 決断させる力』の著者。
行動変化、社会的影響、製品やアイデアなどが流行する理由を専門に研究する。
一流学術誌に50本以上の論文を発表。
Apple、Googleなどをクライアントに持つコンサルタントでもある。

【本書のキーポイント】

📖ポイント1

行動の主導権は、「その人自身」になければならない。

📖ポイント2

保有効果を和らげるには、何もしないことのコストを意識させる必要がある。

📖ポイント3

不確実性を取り除く方法は、試しの場を提供することだ。

【1】心理的リアクタンス

変化を妨げる障害「心理的リアクタンス」


私たちは、自分の自由を奪う存在に反発する。

そもそも人間には、自分の行動は自分で決めたいという強い欲求があるのだ。

よって、「〇〇をしてはいけない」と言われるのは、個人の自主性に対する侵害となる。

そして侵害された側は、禁止された行動をあえて行うことで、自分のコントロールを取り戻そうとする。

心理学の世界では、何かを禁止されたとき「心理的リアクタンス」と呼ばれる現象を引き起こす。

心理的リアクタンスとは、自由が奪われた、もしくは奪われそうになっていると感じたときに生まれる、不快な状態のことだ。

さらに心理的リアクタンスは、「〇〇をしたほうがいい」と言われたときにも生まれることがある。

たとえば、あなたがハイブリッドカーを欲しいと思っているとしよう。

あくまで理由は、自分の意志と選択によるものだ。

しかしここで、「環境のためにハイブリッドカーに乗ったほうがいい」と他者から言われた場合はどうだろう。

多くの人は、「自分の自由を脅かされた」という印象を持つ。

もともとの純粋な「欲しい」という気持ちに別の要素が入り込むことで、「もしかしたら自分は誰かの影響を受けてハイブリッドカーが欲しくなったのかも……」という可能性を考えてしまう。

人はこのような可能性に思い当たると、奪われた自由を取り戻すために言われたこととは反対の行動、つまりハイブリッドカーを買わないという選択を取ってしまうのだ。

人はいつでも、行動の主導権を自分で握っていたいのである。

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伝え方を変えて障害を取り除く


心理的リアクタンスに対抗するには、「変化を仲介する」というテクニックが有効である。

相手が自主的に説得されることを目指す方法だ。

フロリダ州知事から未成年の喫煙対策を命じられた、チャック・ウルフ率いる対策チームの例から見ていこう。

これまでの喫煙対策といえば、健康面を強調したり、美的感覚(歯が黄色くなるなど)に訴えたりと、つまるところ「タバコを吸うな」というものばかり。

そもそも子どもたちだって、喫煙が健康によくないことを知ってるうえで吸っているのだ。

そこでチャックたちが採用したのは、子どもたちに指示を出すのをやめたという、非常にシンプルなアイデアだった。

まず、中高生がタバコについて自由に話し合う場、「ティーン・タバコ・サミット」を結成した。

チャックら大人たちの役割は、ただ事実を伝えることだけ。

タバコ業界の巧妙なマーケティング戦略や、タバコ会社と政治の癒着の様子などを、子どもたちに提示する。

そして問うのだ。

「これがタバコ業界のしていることだ。これに対し、きみたちはどうしたいと思うだろう?」

上記に加え、メディアへの新しいアプローチ法「真実」というCMシリーズも始まった。

CMには、2人の未成年が家のリビングに座り、雑誌の出版社の重役に電話をかける場面が映し出される。

10代を対象とした雑誌にはタバコの広告が載せられており、タバコに反対する広告も実際に掲載しているのかと未成年は質問した。

その後の様子は以下の通り。

重役「ビジネスだから儲けなければならないんだよ」
未成年「大切なのは人間ですか? それともお金ですか?」
重役「出版は商売だ」
すぐに重役は電話を切り、そこでCMは終わる。

「真実」のCMシリーズは、子どもたちに説教もしなければ説得もしない。

ただ真実を伝え、後は子どもたちの判断に任せるだけ。

そして数ヶ月後、フロリダ州では3万人の未成年がタバコをやめた。

さらに2年後には、半分の喫煙率になるという驚異的な数字を叩き出したのだ。

チャックたちのチームが成功したのは、子どもたちに「タバコを吸うな」と言わなかったからである。

子どもたちに自由な道を選ばせ、自分が主導権を握っていると感じさせることができたゆえの結果だ。

上から指示するでもなく、完全に放任するでもなく、その間でバランスをとる「変化を仲介する」という手法を、あなたはどのように感じただろう。

【2】保有効果

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