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空間認知をドローンで鍛える方法

子供が4~5歳になったころ「この子はモノの形をとらえるのが苦手だ」とか「空間認知の能力が低い」と言われることが多く、「空間認知とはなんぞや」と思って調べ始めました。

そしてそのうち「感覚統合」という言葉を知り、たまたま通っていた放課後等デイサービスの先生がその専門家だったのであれこれ話を聞いていたのですがなんだかよくわからない。そのわからない理由は、「表現がふわっとしていて、具体的なことを誰もきちんと説明してくれないのにそれが存在するということだけ一生懸命言っているジャンル」という印象しか私に与えていなかったからです。空間認知を鍛える方法とその原理は誰も正しく理解していないし研究はまだ発展途上で正直アテにならない、という感じでとてもモヤモヤしていました。

それでも何かできることはないかと自分なりにヒントとなるものを探していました。うちの近所の図書館はとても大きく立派なので何かしらあるだろうと思って行ってみるとこんな本を発見。

これはお医者さんが書いたものではなく教育学の先生の本です。医学的なことは何も書いていないのですが、実際に子供を育てるときに何をしたらどんなことが起きたのかということがとことん書いてあります。理系ではない人間にとってはつらい本ですが頑張って読みました。この本はとても古い本ですが、私の疑問にすべて答えてくれるような本でした。

「空間認知」は「脳の問題」であるような印象が強かったのですが、「目と脳の問題」だということが何となくわかりました。

そして「脳を育てるにはまず目から」ということも。

見る能力が知能であると。



一時期私は一生懸命画像制作をしていた時期がありました。それは子供がある絵本を見たときにスーパーサイヤ人のようにシュワワワワワと覚醒して、その後滑舌が良くなって低緊張が改善したんです。それでその絵本の映像を真似して自分でも作って見せていたんです。

それは錯視画像でした。拡大してみたらチカチカします。

これらの画像を見るとうちの子供の身体の状態は良くなっていました。よだれも少し減っていたんです。それで病院で相談してみたところ「あるかもしれないけど僕は詳しくない。錯視というのは脳に誤作動を起こしてそう見せているものだから、誤作動とはいえ作動しているわけだし脳に何らかの変化があったとしてもおかしくない。」とは言われました。

こちらのページには錯視画像がたくさん紹介してあるので勉強になります。ただすべての錯視でも良いというわけでもなさそう。

  • ヘルマン格子錯視

  • Yジャンクションの錯視

  • オオウチ錯視

  • フレーザー・ウィルコックス錯視

特にこれらの錯視に対して子供は反応しました。


私はこの発見に対して「凄い!」と自画自賛していたのですが、「空間に生きる」という本には錯視画像に対する効果を説明してありました。あっけない…。大昔にわかっていたんですね。

なぁんだ。でも一歩大きく前進するような変化かと言われると半歩程度。錯視画像だけではなかなか凄い効果は見込めない。


その後、この本の後半部分は私には難しすぎてなにがなんやらわからなかったので読むことを諦めてただ本をじっと持って念じてみました。私は知性も教養もないバカな母親ですが、観察力とひらめきと得体のしれない予感だけが頼り。考えてもわからぬ。感じろ、感じるんだ…。

そこでピンときたことが1つありました。


それですぐに私は習いに行ったんです。ドローンを。



ついでにインストラクターの資格も取りました。滅茶苦茶過酷だったけど。

なぜかというと、子供に空間認知の能力がないからと私が習いに行ったら私にも空間認知の能力が欠落していてドローンの操縦がへたくそだったんです。いろんな先生にたくさん教わって何とか試験は合格したけどその間大変でした。ほかの人が簡単にできることがなぜか私にはできないんです。

例えば左の奥の青いコーンの上1.5mの場所に停めてくださいという指示が出たとします。私の目には正しく止まっているように見えるけど1mくらいは軽くズレている。

雨が降っていたから仕方なく体育館で練習

「ちゃんと私の目では正しい場所に止まっているように見えるのに、実際にその場所に行ってみると大幅にズレてドローンが止まっている」んですよ。ショックだし、私がアホに見えます。何十回してもズレるんです。私はだんだんと自分の目を信用しなくなりました。

そもそもドローンって「飛ばすもの」だと思っていたんですが、実際は「停めるもの」だったんです。飛ばした経路を1本のラインとしてみるなら、それは点の集まりであって、結局ドローンは離陸させてから着陸するまで無数のポイントを正しく見切ることで操縦できる。

・点で見る
・線でつなぐ
・面でとらえる

このことがすべてできていて初めてちゃんと操縦できるんだけど、理屈でわかっていてもこれが感覚で染み付いていないと実践できないんです。なぜ面でとらえられなければならないかというと、人の目は一度に1か所にしかピントを合わせられないからです。

・停めたい場所
・今ドローンがいる場所

この2つを同時にそれぞれにピントを合わせることができないけれど、この2つを結んだ線に加えて地上までの距離は面で捉えられたら簡単です。

ドローン見えにくい
まだ不安定


四角形が見えてたら停められる

面でとらえられるようになるとドローンと停めたい位置の2つがはっきり見えるようになります。

これが真正面の位置だとこう。こういう風に見える感覚が身についていないと正面のドローンを正確な場所に停められない。

正面の場合は三角形


うまく飛ばすってちゃんと停めることができてこそなんです。その位置に飛ばそうとしたらその位置までドローンを飛ばして持って行って、そこに停めないといけない。ちゃんと停めるにはそのポイントと自分の今いる場所からの距離を正しく見ないといけない。距離を見る能力のことを深視力と言います。私は深視力が欠落していたんです。

それで深視力眼鏡を作ってそれをかけてみていたんだけどそれを使うと吐き気が凄くて。1か月くらいずっと嘔吐してました。でも吐き切ったあたりから、ドローンの位置がちゃんと見え始めたんです。それ以前に木やビルの見え方が変わりました。雑誌を見ていてもなんか違う。

ものが立体に見えているんです。

私はずっとそれまで2Dで物を見ていたんです。でもドローンの操縦をするうちに脳が変化して3Dで見えるようになったんです。

そしてそれを法デイの先生に伝えたところ「感覚統合でもあるのよ、でんぐり返しをさせていると子供が嘔吐するの。吐き切ってもう吐けないっていうところまでいくと、ものが3Dで見えるようになっていていろんなことが改善してるっていう…。それに似てるね」と言うのです。

それからドローンは感覚統合そのものなのではないか、と考えはじめました。そして同時にビジョントレーニングに関しても勉強するようにしました。ビジョントレーニングは視界の中に見えている場所すべてをきちんと見えるようにする訓練があるのですが、ドローンは飛ばすためにドローンを見まくるので自然とそれができます。

それでドローンの先生にそれを相談してみたところ「旅客機や戦闘機の操縦をしたいと言ってるパイロットはもともと賢い人が多いけど、ただ賢いだけじゃ使えるパイロットにはならないから、もともと賢い人をさらに賢い脳みそに育てるために飛行訓練をするんだよ。それを教えてあげる」と言われて、「頭がよくなる訓練方法」というのをそこで習いました。

ドローン操縦を目と脳と筋肉で考えるならこのようになります。

・飛んでいるのを目で見る
   ⇩
・脳がそれを認識する
   ⇩
・脳がそれを判断する
   ⇩
・手にその情報を伝えて筋肉を動かす
   ⇩
   ⇩
   ⇩
最初に戻ってこの繰り返しを延々と続けます。

このサイクルが脳に良い。見学するだけでも脳に良い。見ているときに頭はめいっぱい考えるんですよ。でもそれは自分に自覚のない所で考えている。でも考えているから疲れる。ドローンを操縦するのに長時間はできません。思った以上に脳を酷使しているから。でもそれがいい。ドローンを操縦することは絶対脳に良い効果がある。

普通のドローンの先生じゃなくてもともとパイロットだった先生に習えたことは私の幸運です。そして同時に、同じ時期に習いに来ていたおじいさんが認知症だったことも良いひらめきを私に与えてくれました。

そのおじいさんは「右と左がわからない人」だったんです。そしてそのおじいさんがドローンの操縦で苦労するのは必ず「右の奥の上の方に停める」という課題でした。この人左は見えているのに右が見えていないんです。人は目の使い方に癖があって、全体が見えているようで実際は2つの目を工夫して何とか全体を見ているけど、「抜け」がある。その抜けを長年放置していると、認知症になったときに「症状」として現れる。

右の奥の上が見えていない人は左右盲という症状が出ていたんです。見えていない場所によって出てくる症状は違います。私は左の奥の上が苦手でした。私は曜日や時間の感覚がありません。そしてドローンの先生は「低緊張に効く場所」もちゃんと教えてくれました。

まずHの前に立ちます。ドローンを離陸させてHの位置にもっていきます。
そこからH→I→D→I→Hと動かします。この縦の動きが筋肉に直結します。

自分がいる場所からまっすぐドローンを前進させると、ドローンは遠くなればなるほどただ小さく見えるだけです。そしてDの位置に正しく止めようとすると距離があるので難しい。少し近いIのほうが簡単ですし、Hはすぐそばなのでもっと簡単です。

でもこれを繰り返し練習しているとDに停められるようになる。そうするとIに停めることの方が難しくなってきて、最後はHが難しくなる。Dに停めるのがあんなに難しかったのに停められるようになったとたんに簡単なはずのHが停められなくなって困惑します。

でもこれはすべての人に起きる現象で普通のことです。大事なのは「できたことができなくなった」という実感です。これこそが脳で変化が起きた証拠なのですから。そしてこのAからHまでの位置を仮に地上1m、2m、3mというように高さをつけて、D3(Dの位置の上空う3m)からH1(Hの位置の地上1m)に斜めに操縦させてみるとさらにその効果がわかります。(実際治療に使うレベルでは10m以上の高さが必要ですが。仮にわかりやすく説明するならそういうことです。)

そして人の目というのは近くから遠くに進むものを見るときちゃんと目で物を見ているのですが、遠くから近くに近づいてくるものを目で見る能力はありません。見えているように思っているものは実際は、脳が計算して目に見せているだけなんです。そしてそれが高速だと低速の時よりも計算速度が速くないとうまくいかない。野球選手が高速のボールを打つのが難しいのはそのせいです。

速度と距離の関係を脳に計算させることが脳を賢くさせます。

ただ面白いことに訓練ではこのD→Hの動きを「早く動かすことで能力を上げる」ということはできません。むしろゆっくり動かすことで目と脳の能力は上がるんです。DからHにドローンを戻すときのほうがHからDに向かわせるよりも難しい。スピードがあると案外タイミングがあっただけで上手くできてしまうことがあります。でもそれじゃだめ。ゆっくりがいいんです。ちゃんと計算するから。

難しいことをゆっくりやっているとだんだんと気持ち悪さを感じてきます。私はそういったことに敏感なのと深視力眼鏡をつけていたので普段とのギャップになれず嘔吐しました。

この気持ち悪さと、「なんでうまく飛ばせないんだ~!」という違和感を繰り返すことが有効な訓練そのものなので気持ち悪さを感じたら成功です。

この気持ち悪さそのものが「感覚」が「脳」と「統合」する瞬間なのですから。

Hの位置の前に立って、HとDを往復させることがドローンを使ったビジョントレーニングの基礎になります。この後ACEGなどの角の高い場所からそのほかの場所に斜めに下げたり上げたりすることで脳の違った部分を動かすことができます。

ただフリーで適当に飛ばすだけならそんな効果はないのですが、決められたルートに沿って飛ばすドローンは脳トレですね。


ドローンの操縦には「できる限り首は動かさずに目だけで見て」と指示が出ます。普段目を正しく動かして見れていない場所も首を動かして反対の目で見れば見えてしまいます。でもドローンの操縦でそれをやると距離感がズレてしまうのでやらないほうがいい。正しい姿勢で正しい視線のまま操縦していると自然とビジョントレーニングができてしまっていたんです。

人は普段の生活の中で自分の目で使っていない場所があるということは気づきにくいものですが、ドローンを操縦するとそれがまるわかりです。

「空間に生きる」という本にはそのことも記載されていました。

「見えている場所」と「脳のどの部分が対応しているのか」ということがしっかりと。

ドローンの操縦をすると誰でもどこかに「空中でうまくドローンを停められない場所」というのを発見できます。これは「自分の脳の働きの弱い場所」と対応します。そしてしばらくそこに停められるようになるように練習しているとだんだんとできるようになってくるので、「操縦するだけで検査ができる」と同時に「訓練ができる」ということです。

ただひたすら同じ場所に停められるように訓練するのは時間もかかるし体力的にも大変で、非常に効率が悪い。

そこで先生は「あなたの苦手な動きは平面上でやっている限りなかなかうまく停められないけど、高さのある場所からやってみるとその後平面でやるのが意外と簡単にできるようになる。それこそが賢いパイロットをさらに賢くするための秘訣そのものだよ。みんなはこの訓練をする、やってみたらいい。」と言い出して、私に特定の動きを指示しました。

実際にやってみると、停めるのが苦手なポイントに私は簡単にドローンを停められるようになりました。

でもそれができるようになった時、私の眼は完全に正常になってしまったので1つ私の特技が失われてしまったんです。

私は子供のころから絵を描くのが上手かったんです。それがへたくそになってしまいました。今までは見たままを描くだけで良かったのが、今はそれが難しい。3Dで見えるようになってしまったら、木々の葉っぱはせり出してくるようで、ビルの建物はグワァァァっとちゃんと立体なんです。美しい風景も前は写真で見ても実際に見ても全く同じものだったけど今は違う。もう私は以前のように簡単には絵が描けません。音痴で運動も苦手で文章を書くのも下手くそで料理も下手な私に残された唯一の才能だったのに。


このことに気づいた当時、私の子供は当時4歳でした。ドローンの操縦はできません。でも「子供が自分で操縦しなくても、見るだけでも効果がある」とわかりました。実際に家で飛ばしていたら子供は喜んで見ていたし、飛行を見学した後は実際に体が変化していたからです。

「これは脳の病気の人に使えるドローン療法を開発できる!」と、思ってすぐにこのドローンを購入しました。部屋の中でも飛ばせるしプログラミングで操作できるからです。小さいので音もそんなにしないし、ある程度広い室内なら雨の日でも大丈夫。


そしてこういうカーペットをリビングに敷いてみました。ノートPCにソフトを入れて法デイの子にお願いしてプログラミングしてもらいました。

これをこんな形に設置します。

枚数があればこんなふうにでも。

PCがあるならよいですが、ないならラズベリーパイというのがあるのでそれを使っても安くできます。組み立てはとても簡単。


この地図の模様のマットの上を小型のドローンを操縦させるのでそれを子供に見せるんです。プログラミングなら操縦の苦手な私にもできる。パイロットの脳をさらに賢くする動きというのをこの上でやります。

ただ「治療に結びつくような動き」は平面では難しいので屋外でやりたい。となるともっとしっかりとしたサイズのドローンが必要です。

そして私はあることに気づきました。別に私が操縦しなくてもプログラミングでやらせなくても、法デイには発達障害の子供たちが大勢いるということに。

発達障害の子供たちの中にはドローンの操縦が恐ろしく上手い子がいるんです。学校にも行かずにゲームばかりしていたような子はゲーム機のコントローラーの扱いに慣れていて、操縦が最初から上手い!そして苦手なことがたくさんあっても「ドローンの操縦だけは得意」という子がいっぱいいたんです。

だからドローンをその子に預けて「この通りに操縦してそれをうちの子に見せてあげて」というだけで良かった。それでマイクロドローンをいくつか法デイに預けました。

法デイにいる子は「学校の勉強はしたほうがいいのはわかっているけど」できない子が多かったのですが、「ドローンの免許が将来取りたい、実技は楽勝で受かる自信があるけど学科が不安。漢字が読めない、問題が解けない。書いてあることは理解できるし問題は難しいとは思わないけど、学校の勉強を今までしてこなかったことが仇になった。ちゃんと勉強しよう」と言っていました。

ドローンの操縦を通して人の役に立ちたいと思う子供が学習意欲を燃やしている姿を見るのはとても嬉しかったです。


図書館で古い本を読み、ビジョントレーニングを勉強し、ドローンを習いに行って、パイロット専用の訓練を学び、それを子供にやって見せることで子供はとても喜びました。喜んでいる時子供の脳は発達します。

このドローン療育、子供だけではなく認知症の高齢者にも効果があると思います。ドローンに関わる人たちがこの法則をもっと研究して形にしていくことができたら、助かる人がたくさんいると思います。

高齢者の施設でドローンが採用されたらきっと楽しいでしょう。何か空にものを飛ばしたいと思うのは人類の本能のようなものだと思います。理屈抜きにただただ楽しい。車の運転が好きな人ならみんな楽しめるはず。そしてそれは男女の差などありません。みんなにとって楽しいものです。楽しみながら目と脳を使い、いつまでも元気で暮らせるならそれが一番だと思います。

・筋肉を発達させるドローンの動き
・物の名前を憶えやすくするドローンの動き
・言葉が出やすくなって会話が容易になるドローンの動き
・しっかり眠れるドローンの動き
・ストレスに強い心を作るドローンの動き

そういった操作方法をもっと研究して世のなかに広まれば本当に楽しい。

私はこのことを発見したものの、その後アンドロゲン補充を思いついてそればかりに時間を費やしたのでドローンを使って認知を上げる方法に関しては途中やめになっていました。協力してくれていたほかの先生たちも忘れてしまっているでしょう。

それでもうちの子がもっと発達して自分で操縦できるほどになってから、これは活きてくると思います。

しばらくしてからまたやってみたいと思います。


それと深視力眼鏡を使っていると老眼がひどくなるので恐ろしいです。

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