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MJ系のデフォルト崩しテクニック

niji・journeyのバージョン5が公開されたのが今年の4月ごろでした。生成された絵のタイプがV4までとは違っていました。

プロンプトの技術を必要としない仕様に変更され、誰でも簡単にかわいい絵を描けるようになったかわりに、「nijiっぽい絵」しか描けなくなってしまっていたんです。そこでAIアートガチ勢の人たちはプロンプトを工夫して何とかnijiのデフォルト絵ではない画風を出すことに夢中になりました。

その行為が「デフォルト崩し」です。

・ネガティブプロンプトにデフォルト感をなくすワードを入れる
・人名の組み合わせを駆使する

このような手法がありました。こちらに簡単に説明してあります。


コツをつかめばそれほど難しいものでもありません。

人名は著作権の関係で何が何でも使いたくないというこだわりを持っている人もいますが、人名を使わなくても要素は含まれていてデフォルト絵にこそ特定の絵柄が浮き出てきます。AIアートがはやり始めたころは「人名を使わないことがリスクを避けられる方法」として有名でしたが、今はむしろ人名を使いこなす方がトラブルを避けることができるとわかってきました。

このデフォルト絵を

こういう絵にできるかどうかはやはり人名を使いこなせるかどうかにかかっています。


その後「デスクライブ」という「絵からプロンプトを作る機能」がMJ系に加わりました。これはAIが作り出すプロンプトなのでデフォルト絵の一種です。この機能はそれまで人間が知らなかった単語を沢山含んでいたので、AIアートに使える新しい単語を学習できるチャンスでした。正しく使えた人は語彙力を増やして凄い絵を描けるようになりましたが、その努力を面倒に思った人たちはただ単にデスクライブして作った絵を公開するだけになってしまい、プロンプトに向き合うことをやめてしまいました。

このころからnijiを使う人達は二極化しました。

画風を決めるベースとなるプロンプトを自力で組む人とそうでない人の2つのジャンルに分かれていったんです。

インターネット上のものは何でもそうだと思うんですが「誰でも簡単に作れる仕組み」と「めちゃくちゃ高度で細かい技術を駆使して作る難しいもの」の2つが同時進行で開発されて進んでいく傾向がありますよね。AIアートも実際はそういう傾向があってMJ系統のAIは「みんなが使える簡単なツール」になろうとしているのかなと思っていました。

だけどそれにしてはnijiは高機能なんですよ。使い方を間違えなければめちゃくちゃ難しいこともさらりとこなすAIなんです。でも人間がそれを知らなければ誰もそういう使い方をしないので宝の持ち腐れですよね。

MJ系の絵を描いている人はこの4つのタイプの絵を描く人に分類されるはずです。

①簡単な単語を入れるだけで勝手に作られる独特の画風=デフォ絵
②デスクライブによってAIに作られた画風=デスクラ絵
③discordのフィードを流れている絵=フィード絵
④自力でプロンプトを組んだ絵=オリジナル絵

難しい順で並べると、オリジナル>デフォ絵>フィード絵=デスクラ絵です。フィード絵とデスクラ絵は他人の絵のプロンプトで生成するだけなので人間が脳みそ全く使わずできます。今日AIアートを始めても最初の10分ですぐにできるくらい簡単です。SNSで有名な人でも、NFTで沢山売ってる人でも①~③の人が大勢います。でも自分が同じAIを使っていなければそれを見抜くのは難しいでしょう。

だから他のAIを使っていた人が自力で書いたプロンプトで生成した私の絵を見て「これはSDですよね?どのモデルですか?」と質問してくるほどです。「これはNijiで描きました」というと「nijiでこれは描けないでしょ、嘘言わないでくださいよ」と激怒されました。

嘘つき呼ばわりされるレベルでnijiの実力が知られていないなんて!!!これはショックな出来事です。


そしてAIアートをやる人の中には「難しいプロンプトを理解して凄い絵を描く」ということよりも、「簡単に早くそこそこの絵を描いてSNSでいいねを沢山もらいたい」という人もいます。そういう人は「AIがデフォルト絵として認定した画風は人間に人気があるからデフォルトになったのだ」という事実を利用し、「工夫しない絵のほうが人気が出る」と割り切り完全に努力と対極にある方面へと旅立ってしまいました。

そしてそれ以前はもっと頑張ってプロンプトに取り組んでいた人もお友達がデスクラ絵でバズっているのを見ると「流れに乗らなければ!」とか言いながら同じように流行りの絵をデスクライブで複製して公開する人が増えてあちこちでトラブルに。

中級・上級者がそんな状態なので、新規でnijiを使い始めた人はnijiで遊ぶときに「どの人の絵柄が自分の好みかな?」と言いながら探して、他人の絵をデスクライブして公開しているんです。まるでSDのモデルを選ぶ感覚で他人の絵を複製していて、悪気のないままパクりまくっている。

何日もかけてやっと組んだプロンプトが数秒でデスクライブ盗作されてしまうとみんなやってられないですよ。当然パクられた側は腹を立てて去ります。気が付くと本当にnijiでちゃんとした絵を描いている人が激減してしまったんです。AIが上手かった人から順番に「最近は別のAIで遊んでる」「もうAIアートはやめた」「最近は動画で遊んでる」「新作ゲームで忙しい」と言ってnijiから離れていってしまいました。

AIが「人気のある絵」を描こうとするのは当然のことだと思います。でも人間が描きたい絵は「人気のある絵」だけでしょうか?

承認欲求の強い人ばかりがAIアートをやっているわけではありません。絵を描くのが好きな人は「自分らしい絵」を描きたいと思っているはずです。自分のための絵ですから、それは「いいねが沢山もらえる絵」の何倍も価値がある。

でもAIは人間の評価の高かった絵を優先的に描くので「みんなに同じ絵」を描きます。このAIは海外で作られたもので利用者も日本人以外が多いので「外国人に沢山いいねをもらえる絵」です。それでもワッと人が飛びつくのは最初だけ。しばらくすると全然知らない人が自分とそっくりな画像を公開して沢山いいねをもらってるわけです。次第にデフォルト絵を見ていると息苦しくなります。毎回同じで毎回自分の趣味ではない絵に、胸やけするんです。

統計的に人気があるとされる絵が自分を満足させるとは限らない。だって絵は自分が描いているわけだし、自分が見るものだし、人のために描いていたとしても自分のためにも描いているはずです。



こうして「簡単に誰でも描ける」「プロンプトに頼らなくても簡単」というコンセプトは「盗作天国」「飽きやすいAI」というデメリットがあるのだとわかりました。

その問題があちこちで語られるようになってからAIは頻繁に小さなアップデートを繰り返して絵の作られ方が少しずつ変わってきました。AIはちゃんと人間に寄り添い自分の欠点を過改しています。

--s --c --wのようなパラメーターを操作できるようになり、バリエーションで描かれる絵の内容も以前とは少しずつ変わってきました。この技術を正しく使えば単純な絵ではなくなります。それはAIがユーザー一人ひとりが個性的な絵を描きたいと思っているという需要に適応してきている証拠でしょう。


「他人にマネされない自分だけの絵を描きたい」と思うなら、バリエーションの引き寄せの技術を身に着けるのが一番でしょう。

世の中にはプロンプトの技術力の高い人が大勢います。一発で狙った絵を出せる人達です。でも私はそういう能力がないので、バリエーションの引きの技術を高める方を選びました。時間がかかってもいいので狙った絵を出したい。プロンプトだけではなく私の「選択と集中」で絵を引き寄せるのです。

その引き寄せ方を実際に見てみましょう。

私が最初にプロンプトを入れるとこのような絵が出ました。3枚目なんて失敗画像ですね。

1,2,3,4

この絵の2枚目(右上)を無改変でバリエーションをかけます。そうしてできたのがこちら。1回目よりも2回目のほうがAIも描くのが上手くなっています。

1-1,1-2,1-3,1-4

同じことを数回繰り返します。

1-5,1-6,1-7,1-8
1-9,1-10,1-11,1-12
1-13,1-14,1-15,1-16

この中から次のバリエーションをかける絵を選びます。この時のポイントが「要素と画風で選ぶ」です。必ず「絵の仕上がり」ではなく「要素と画風」で選ぶんです。要素は言葉で指示した具体的なものです。描いてほしいもののことです。画風とは線や塗りの種類や構図などです。指や花がきれいに描かれていないとか髪の毛がバサバサしていて綺麗じゃないというのは「仕上がり」なので、パッと見て綺麗に描けている方ではなく失敗していてもいいので思う画風に近いものを選びます。

一番最後の1-16を選んでみましょう。これをさらに無改変でバリエーションします。

1-16-1,1-16-2,1-16-3,1-16-4

そして出てきたのがこれです。

1-16-2-1,1-16-2-2,1-16-2-3,1-16-2-4

最後の画像の1枚目を選びます。1-16-2-1です。髪の毛がグチャグチャなのでこれをRegionで修正します。

でもなんだかちょっと違うなと思ったので花の種類を変えてみましょう。

同じ絵をひたすらバリエーションしていけば画風が固定するので花の種類を変えても同じ顔がすぐに出ます。かなり沢山これを繰り返していれば同じプロンプトを使って生成しても他人がこの画像をすぐに出すのは難しいです。

そして生成の過程で「ちょっとだけ柔らかい絵柄にしたいな」と思ったので別の絵をバリエーションしてみました。1-3をバリエーションするとこれが出ました。

何度か同じものを生成してみます。

これを5度ほど繰り返すとこれがでました。

最初のプロンプトを新たに入力してみましょう。ペッタリした絵がでました。

2-1,2-2,2-3,2-4

これに3d.という単語を足して2-1にバリエーションをかけます。
すると少し立体的に。

2-1-1,2-1-2,2-1-3,2-1-4

3枚目をバリエーションかけましょう。

2-1-3-1,2-1-3-2,2-1-3-3,2-1-3-4

2枚目がいいですね。

2-1-3-3

一番最初はこの絵からスタートしました。この絵が現代風の女性の顔になるんです。

でもこの絵ですら画風の指定を排除して主題に関する単語のみで生成するとこの絵になります。途中から花を減らしたくて花に関する単語を消したので花すら出てきません。


これがバリエーションの力!


花を変えて、影と光のコントラストを強くするプロンプトを加えてみました。

筆の質感をくっきりさせてみました。

微調整は簡単です。これらはバリエーションの過程で単語を足し引きしながら行います。

①プロンプトで1枚目の絵を作る
②仕上がりが悪くても画風の良い絵をバリエーションする
③途中言葉の修正を入れながら良い絵を数珠つなぎでバリエーションをかけていく
④狙った絵が出るまで繰り返す

という手法で引き寄せていくのですが、これはこのAIができた時から言われている「普通のやり方」です。裏技でも何でもない当たり前の生成方法。サイトのマニュアルに書いてある普通のことです。

でも案外みんなこれを適当にやっていて、上手に引き当てていないんですよね。理由は簡単。「この絵を描きたかったわけじゃないけどこれはこれで綺麗だからいいや」などというあいまいな選択をしているから。

でも正確に絵の要素と単語が一致した絵を選ぶ技術こそ個性的な絵につながるんです。


「頑張って描いた絵をデスクライブで他人にパクられるのは嫌だ」と思う人こそ、このバリエーションの技術を磨くといいと思います。なぜならバリエーションを繰り返しながらプロンプトの単語を入れ替えて作った絵はデスクライブで出にくいのです。

実際にデスクライブにかけてで確認してみましょう。

出来上がった絵は完全なデフォルト絵です。私が描いたような絵は出ません。

「人と違う絵を描きたい」と思うのであればぜひこの技術を磨いてみてください。

バリエーションは「好きな絵を選ぶだけ」です。

誰にでもできる簡単なこと。
だけど「仕上がりのいい絵」を選んでしまうと狙った絵は出ません。

手間はかかりますが脱デフォルト絵ができます。

「絵の仕上がりではなく、要素を満たしているか?プロンプトの文字が正確に表現されているかどうか」で選べばいいだけです。ぜひみんなやってみてね!!



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