今日覚えたい文法&言語レベル
アンバランス
『プチ・ロワイヤル仏和辞典』にこんな記述があります。
piger /pi-ʒe/
他動
1 (話)…を理解する,わかる
Je ne pige rien en informatique.
コンピュータ関係のことはさっぱりわからない
2 (話または古)…を取る,捕らえる
piger という動詞は広く話し言葉で使われ、今では市民権を得ています。(まあ、だから辞書に載っているのですが)
ただ話し言葉と言っても下品にはならないギリギリのところ(le Ciel フランス語教室調べ)なので、僕たち外国人は使わないほうが無難かもしれません。
ネイティブにとっては普段使いの動詞です。
話し言葉で使われているのに、この例文って…
2箇所にかなりの違和感を感じます。
Je ne pige rien en informatique.
動詞 piger を選択する人は、否定語 ne は言わないでしょう。そもそも21世紀の話し言葉では ne はほぼ聞かれないのですから、piger と ne はアンバランスに感じます。
Je pige rien en informatique.
2.rien でもいいのですが、pigerを選択する人は多くの場合、おそらく rien ではなく que dalle を使うと思うのです。
理由は単純で、piger と que dalle は同じ程度の言語レベルだと感じるからです。
Je pige que dalle.
うん、なんだかバランスが取れて気持ちがいいです。
que dalle も辞書で確認しておきましょう。
dalle /dal/
男(話)何も(…ない)(♦常にque dalleの形で用いる)
n’y comprendre [entraver] que dalle
何もわからない
ここにも否定語の ne があるのですね。
これでわかったことは、どのレベルの話し言葉の記述でも辞書には ne は書いてあるのです。「正しい」フランス語には ne は必要だけど、piger や que dalle レベルの話し言葉では ne は省略されますよ。
話し言葉(音)を書き言葉(文字)で記述するからバランスが悪くなってしまうのですね。
辞書は文字での記述だから仕方がないとはいえ、できれば Je (ne) pige que dalle. にはしてほしかったなぁ。
ご参考まで
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