見出し画像

「体験談」には要注意!

体験談は世界中で人気なコンテンツです。YoutubeではVlogが人気だったり、ブログやTwitterや掲示板でも「自分の身に起こった話」というものがよく見られます。Noteでもそうですよね。日記も体験談の一種です。

体験談という文脈を好むのは個人の趣味です。それ自体は大きな問題ではありません。怖い話とか、作り話とわかっていても誰かの体験談のように語られた方が面白いですよね。ギャンブルで負けた話とか、恋愛話とかも同様です。

体験談から現実は見えない

しかし、体験談を社会について学ぶ機会だと思って聞くことには大きな危険性があります。体験談とは面白いかつまらないかに関係なく個人的な体験に過ぎないのに、それがまるで社会を映し出す出来事のように語られてしまうからです。

例えば外国から日本に来た人が、アニメキャラのぬいぐるみを大事そうに抱えて歩く中年男性を見たとします。この人が写真を撮ってSNSにあげれば、それを見た海外の人たちは「日本人はやっぱり極度のアニメオタクばっかりなんだ」と思うでしょう。しかしそれは現実とは違いますよね。秋葉原に行っても数人程度でしょう。

差別や貧困問題のような人権に関わることでも同じです。例えば日本にいるギリシャ人が飲食店で他の日本人客と違う対応を受けたという体験談があったとします。その時にこのギリシャ人が「人種が違うから差別を受けた」のか、このギリシャ人が横暴な態度だったり無理なワガママを言ったから店側が追い出したのかは事実確認をしなければわかりません。しかし、事実に関係なく、「人種差別をされた!」という体験談のコンテンツにしてネットに出すことは出来てしまいます。あとはクリックされれば金になります。残念ながらこの手の記事はSNSの効果もあって過激化する一方です。

他のあらゆる体験談も同じです。一人の身に起こった体験談は現実についての理解にはつながりません

体験談は事実確認がなければ単なる設定でしかなく、いくらでも嘘を付き放題・脚色し放題
なのに、信じてしまう人がたくさんいるのが現状です。情報を発信する側からしたらこんな便利なものはありません。人情に訴えてしまえばなんとでも言えてしまうのですから。

体験談は人を騙す道具

この問題は当然昔から知られていて、特に広告宣伝によく使われています。特に危険なのが美容・健康・ダイエット商品です。ダイエット商品の広告なら「このピルを飲んだから痩せました」と文字を付けて、フォトショで痩せたかのように画像を加工すれば(もしくは別人の画像を使えば)「このピルを使ってダイエットに成功した体験談」の出来上がりです。

美容でも「この化粧水を使っていたらこんなに肌がきれいになった」と宣伝できますが、本当に使ったのかはわかりません。もし本当に使っていたとしても、人の体は個人差がありすぎて一人の体験談では全く参考になりません。しかし、「この人の場合は効果があったのは事実ですから」と言ってしまえば宣伝する側は嘘をついたことを追求されません。

残念な話ですが、近年では体験談は更に力をもっていく傾向にあります。これは広告業界では「インフルエンサー」や「ステマ」として認知されています。要するに「誰が誰を騙せるか」がデータ化されて、体験談を効率的に使う体制が強化されていったということです。

YoutubeやInstagramで明らかに宣伝で作っているものも体験談として出されますよね。有名な人の動画や写真はほとんどがそうですから、意識してみるとたくさん発見出来ます。試しに探してみてください。

本名顔出しでも嘘はつき放題

「匿名情報は信用できない」とは誰もが一度は耳にした事があると思いますが、本名顔出しの人でも嘘の体験談は無限に作り出す事ができます。体験談だと言い張るのは自由ですが、信用できるかどうかは別問題です。体験談が現実を表していると信じるのは非常に危険なことであり、常に注意しなければ騙されてしまいます。体験談は単体では絶対に信用ならないことを忘れないでください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?