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農家戸数の減少への対応

日本の農業者人口は1960年ごろには600万人もいました。60年経って2020
年には最近の数字では174万人と1/3以下に減少しました。農研機構の予測によれば2035年には、さらに1/3の64万人にまで減少するとしています。

今回は、農家戸数が減少する中で日本の農業がどうなっていくのか考えてみたいと思います。

いうまでもなく農業は国民の食を保障するための重要な産業です。国が主導して農業という産業を管理し、国民の生命をまもるために計画的な食料生産を実行していかなければなりません。その中で、個々の農家(農業経営体)は経営的に再生産可能な利益を出し、さらに次世代に豊かな農地を継承していかなければなりません。

さらに大きな問題は、農業者の超高齢化です。農水省の調べによると2020年の基幹的農業従事者数のうち、65歳以上の階層は全体の70%(94万9千人)を占める一方、49歳以下の若年層の割合は11%(14万7千人)となっています。一般企業は最近は定年が延長されてだいたい65歳ぐらいでリタイヤするのですが、農業は65歳以上の方が主力なのです。

このような状況を反映してか、食料自給率は低位でとどまり、最近はずっと40%程度で先進国の中では最低です。政府は食料自給率を向上が課題になっていてさまざまな施策を講じているのですが一向に上昇しません。

それもそのはずで、食料自給率が低いのは、戦後、日本人の食生活が激変したからで、これまで食べていなかった畜産物や乳製品などを輸入して食べるようになったからです。つまり、畑で取れる作物と実際に我々が食べている食材との乖離があるのです。

米と近海でとれた魚、野菜など日本で作りやすい食材を中心に食べていたら食料自給率はもっと高くなるでしょう。もっとも人口も増えているので100%というのは無理だと思いますが。

輸入しているのは食材だけでなく、農業生産には欠かせない肥料原料もほとんどが輸入です。最近は海外で紛争が相次いで起きており、アジア地域でも有事のリ発生スクが高まっているような話も聞きますが、もし、肥料原料が輸入されたなくなったら農産物の生産量は大幅に下がるでしょう。

さらに、家畜の飼料も多くは輸入に頼っています。もちろんエネルギーも輸入ですから、もしも何か有事があって日本が世界から何も輸入できなくなった途端に食料危機が発生します。令和の時代に日本は飢餓に襲われるのです。

そこに農家の減少です。有事でなくても農産物を作る人が減って食料危機や農産物の高騰が発生するリスクは極めて高くなっているのが現状だと考えられます。

食糧危機への不安は農林水産省も危機感を持っているようで、今国会で農業基本法(食料・農業・農村基本法)の見直しを閣議決定していますが、その見直しの方向性の一番最初に、食料の安定供給をあげています。しかも不測の事態も想定しています。

農林水産省の資料

かつて、農業従事者が多い時には、政治家にとっては農家の組織票は大きかったため、手厚い農業政策が行われてきました。例えば1960年の日本の就業者数はおよそ9,400万人いて、農家は600万人なので6.3%でした。2020
年はおよそ、6,700万人の就業者のうち農家は174万人で、2.5%です。農家はこの60年間で7割減りました。

農林中金のWebサイトより (基幹的農業従事者は普段の主な仕事が農業の人)

農地面積で考えてみましょう、1960年の農地面積はおよそ609万haでしたが、2021年には435万haとおよそ3割減っています。作業効率の悪い中山間地の農地が放棄され、都市化によって農地が減少したと考えられます。

農林中金のWebサイトより

このかんに農地が3割減少しましたが、農業者の減少はその倍以上の7割減ですから農家一人当たりの経営面積は2.5倍になっています。トラクターや農機の導入によって生産性が著しく増加したと考えられます。

さて、農研機構では2035年には農家はさらに減って、今の1/3の64万人になると予測しています。農地の減少率はこのところ少ないのですが、農業生産性を上げないと農地を農地として活用できないことになってしまいます。

前述したように、農家の多くは65歳以上の高齢者です。若い後継者がいなければ早々にリタイヤされると思いますし、今後の営農期間が少ないと感じれば生産性を高める機械などへの投資も消極的にならざるを得ないでしょう。

今の30歳代、40歳代で農業経営の能力が高い人に農地は集約されていくでしょう。その際には今の3〜5倍の農地を管理することになって、大型の機械や最先端の情報技術を活用した営農システムを導入することにになります。

政策的にはそのような大型化を目指し、集約的な農業を実践する若い経営者に資源を集中させることになるので、これといった特徴のない、小規模な農家は淘汰されることになるでしょう。

経営規模が大きくなれば、雇用労働も確保しなければならず労務管理も必要になります。これまでになかった新しい仕事も増えることになります。外部の専門家に業務を委託する機会も増えるでしょう。

農協のあり方も今とは変わってくるでしょう。力をつけて組合員をサポートする立場になるでしょう。このあたりの考察はまた別途行いたいと思います。

いずれにしても統計を見ながら将来を予測し、仮説を立てて経営に臨むことが求められるでしょう。もちろん、地域の状況や作付けしている作物によって仮説は大きく変わると思います。そのような仮説に基づいた経営計画を立ててみましょう。



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