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オグナ 小説(8)

↑ここまでのお話

両手首を2回振る
シャンシャンと鈴が鳴る
そのまま円を描くように回る足運びは巫女特有のもの。
歩くたびに鈴の音が追いかけてくる。
手を大きく振るたびにヒラヒラと体に巻き付けた裳が舞う
緩急をつけながら優雅に
鈴の音が静かにまわりを浄化して行くよう。それから段々と激しくしていく
夢中で舞っている内に視界の隅にキラリと光るものが映りハッとして避ける
隣にタッと音がして振りかえると皇子が抜き身の剣を構えていた
えっえええっ
なに、今光ったの剣?
この皇子、もしかして丸腰の女に向かって剣を向けてきたの?
怖っ
「皇子!」
「ミヤズ!」
父や兄、皇子のお供が立ち上がっていた
「控えろ!」
大きな声を出す皇子
「姫、そのまま思うように舞ってくれ。合わす。」
うわー、何こいつ、
やっぱりやばいやつじゃん。
真剣で向かってくるとかゾッとするわ。
っ、振り回すなよ。
当たったらどうすんの。
怪我なんかしたくないって。
腹の中で悪態をつきながらさっきと同じような舞を舞っていく。
隣で皇子は剣を振りながら
あー、剣舞か。
私のさっきの巫女舞に合わせて剣舞を舞っているの?
今の一瞬で合わせてるってこと?
背中合わせでくるりとまわり、目が合うとニッコリと笑う。
私と皇子は初めてなのにピッタリと息が合った。
給仕や護衛も手を止めて見入っている
「そこまで!」
父が声をかけたので止まる
私は優雅に皇子に一礼し、正面に向き直ってもう一度礼をして部屋から出ていく。
人目が無くなったところでへたりと足から崩れ落ちる。
いや、怖すぎるだろ。
まだ震えてるよ。
殺されるかと思った。
何あいつ。
自信が有るとしてもダメだろ。
でも、楽しかった。
そう、私は愉しかったのだ。
怖くて震えてるのか、楽し過ぎて震えてるのか。
そのままごろりと床の上に四肢を投げ出して寝転がると雲の間から上弦の月が顔をのぞかせていた。

続き↓


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