オグナ 小説(4)
↑ここまでのお話
「終わったか?」
汗だくの男が手の甲で頰を拭いながらゆっくりと近づいてくる
「兄さん」
皇子が来たのを兄の所に誰かが知らせに行ったようだ
どんな知らせ方をしたのか、いつもはちゃんとしている髪や服が少し乱れている
全力疾走したらしい
兄はチラッと私に目を向けると皇子に向かい
「小碓命殿、オトヨが長子、タケイナダネが参上しました。ってか、なんでまっすぐうちに来てくれないんだよ。」
恭しく頭を下げたあと恨みがましく言った
あら、砕けた口調。意外に仲が良いんだ。
確かに何度か戦に合流してたけど。
「タケイナダネ、今回も戦の支援要請を受けてくれてありがとう。度重なる出兵でさすがに私も兵もぼろぼろで、どうなることかと思っていた。」
「いえいえ、ヤマトタケルの要請とあらばいついかなる時も馳せ参じますよ。とそんな積もる話は川から出てからにしませんか?」
タケイナダネは皇子の足元を指差して笑う
「ん、そうか?そうだな。その前に。」
タケイナダネに向き合っていた皇子は向きを変え私の方に距離を詰め、ニッと笑うとギュッと抱きしめた
不意打ちすぎて咄嗟に避けきれなかった
「何をするんですか!」
必死で抱擁を解こうとするけれど力が強く剥がれない
「タケイナダネ、お前の妹良いな。」
「い、良いなじゃないですよ。こんな公衆の面前で何やってるんですか。は、な、し、な、さ、い。」
タケヒノムラジが慌てて剥がしにかかる
そうすると皇子は余計に力を籠める
万力に挟まれてるような力だ
やめてー!
苦しいー!
乙女らしい恥じらいとかは無理
「は…、な…、して…。」
タケヒノムラジだけでは離れないと後ろで見守っていたお供2人も一緒に王子を私から離そうとする
「オグナさま、強いのはわかっていますからそういうのは他所で発揮してください。ミヤズが苦しそうです。嫌われますよ。」
兄は冷静にそう言った
いや、兄はもっと慌てろ。
「嫌われるのは良くないな」
やっと皇子が離れてくれる
私はそのままジャブンと川に座り込んでしまう
「姫さまっ」
スズが慌てて抱きしめる
「苦しかった。死ぬかと思った。」
私は小さく呟いた
横から出てきた腕にビクッとする
兄だった
兄は私を横抱きにすると川岸に向かって歩き出した
「それ良いなあ、私がやりたい。」
皇子は私をお姫様抱っこしている兄の周りをウロウロ
「オグナさま、私は妹に少し話が有るので先に家に行っていてください。後で伺います。」
あ、これヤバい、兄さんが怒ってる
え、私なんか怒られるようなことしたかな?
続き↓
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