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オグナ 小説(5)

↑これまでのお話

兄は川岸の木陰に私を降ろすとスズを呼んで水と布を持ってくるように命じた。
「ミヤズ、顔とか腕とかだいぶ赤くなっている。木陰でちゃんと水分を取って休むように。あと赤くなった所は冷やさないとダメだ。」
言われて腕を見ると確かに赤くなっている
あー、やってしまった。
良家の姫なのに。
「ごめんなさい。」
「そうだな、迂闊だったな。今日は眠れないかも知れないぞ。
後、とんでもないやつに目をつけられたぞ、お前。」
兄は木陰を作ってくれている木の幹に手をかけて座っている私を見下ろした
「とんでもないやつ?それってあの皇子?兄さんがそんな事言うの珍しいわね。」
「皇子は一緒に戦うにはこれ以上ない大将だ。一度懐に入れたものは大事にする。気さくで優しい。」
そこで一度口を閉じた兄はそのあと
「敵に回したら鬼だな。その他はおもちゃだ。」
「おもちゃ…」
「そうだ。だから今日は大人しくしとけって言っただろ。なんで家の中でじっとしておけないんだ。」
年の離れた兄は私の事を大事にしてくれている。
普段冷静な兄の困り顔は珍しかった。
「ごめんなさい。」
「お待たせしました。」
スズが竹の器に入ったお水とサラシを持ってきてくれた。
お水を受け取るとスズは川の水でサラシを濡らして私の火照ったところを冷やしてくれる。
「起こってしまったことはしょうがない。それに天叢雲剣の件は館でも起こった可能性もある。どのみち出会う運命だったのかも知れん。」
天叢雲剣…、そんな名前のある剣だったんだ。
「まだ起こってもいないことを心配しても仕方がない。起こったことに善処するだけだな。」
「わかりました。」
「皇子を待たせているし、父にも相談しないといけないから戻る。お前はもう少し休んでから戻れ。」
「はい」
兄が足早に去っていった後
日に当たりすぎたせいか急にクラクラした。
スズに器を渡し、そのままゴロンと横になると木の葉の隙間から覗いた光がキラキラしていた。
「姫さま、行儀悪いです。」
スズが言う
「そうね。」
そう言って腕で顔を隠して目を閉じた。

皇子、顔が良かったなあ


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