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音楽療法×介護#2「”365歩のマーチ”を使った歩行介助」

―音楽療法×介護ー
特に介護職、在宅介護をしている人に介護ケアで活用してもらいたい音楽の活用方法をご紹介。
音楽療法では様々な音楽の特性を活かし、実施していきますが、日常生活や介護現場でもその特性を利用することができます。

「”365歩のマーチ”を使った歩行介助」

介護施設に付き物なのが、歩行介助
筋肉の衰えや疾患で足が動きにくい方の歩行を支えるのは、簡単なことではありません。
そんな歩行介助がやりやすくする、魔法の歌があります
「365歩のマーチ」はご存知でしょうか?

♪幸せは 歩いてこない
だから歩いていくんだね
1日1歩 3日で3歩
3歩進んで2歩さがる

昭和43年に水前寺清子さんが歌ってヒットした曲です。

これをもじった牛乳のCMもありました。

カルシウムは 歩いてこない
だから毎日飲むんだね
1日1本 3日で3本
3歩進んで2歩さがる

この歌詞に象徴されるように、高齢になると骨が脆くなり、体の色々な筋肉が衰えやすくなります。
特に足の筋肉が衰えると、足が上がりにくくなり小股ですり足の歩き方になります。
このような歩き方は疲れやすいですし、転倒のリスクもあるので、足を高く上げて歩くことはとても重要です。

【立ち上がり】


まず、立ち上がる時。
長時間座っていて立ち上がる場合、筋肉が硬直して動きにくくなっているので、転倒のリスクが高くなりがちです。
そこで立ち上がる前に軽く足踏みをします。

ここで一緒に365歩のマーチを歌います。
最初は「1,2,1,2」と掛け声を入れて、ある程度リズムが掴めてきたら歌い始めましょう。

≪実演≫

こうすることで足の筋肉をほぐし、転倒のリスクを減らすことができます。
さらに「だから歩いていくんだね」と歩行を促す歌詞が「これから歩きますよ」という意識を強めます。
足も気持ちも、歩くための備えが十分にできるんです。
この曲、なかなか便利です。

【歩行介助 ①小刻みに足が出る場合】


ひとくちに歩行介助といっても、対象の方の歩き方によって方法は様々です。
足がなかなか出てこない方、逆に足が小刻みにどんどん出てしまう方など相手によって介助方法は変わってきます。

まず考えるのは、足が「ツツッ」と小刻みにでてきてしまう方。
歩幅の間隔が均等にならず、詰まったように歩いてしまう形です。
この足の出方だと転倒しやすく、バランスを崩した時に踏ん張りにくいので、リスクのある歩き方と言えます。

この場合はまず、一歩ずつしっかりと踏めるよう「1,2,1,2」と声をかけます。
リズムが安定してきたら、介護者が365歩のマーチを歌います。

≪実演≫

こうすることで、安定したリズムのまま足が動き、詰まったような歩き方を避けやすくなります。
もちろんカウントのままでも効果はありますが、知っている曲を使うと歩くリズムが掴みやすくなります。
ここに音楽を使う意味があります。

他にも「スキーの歌」「汽車」などの曲は歩行介助におすすめです。

【歩行介助② 足がなかなか出ない場合】


逆に1歩を出すのに時間がかかる方もいます。
なかなか足が出ないと歩くのが億劫になり、歩かなくなるとさらに足が出なくなる、という悪循環に陥りやすい例です。

そういった方には、ゆっくりとしたリズムで「1,2,1,2」と声をかけ、その後に歌を入れていきましょう。
先ほどの例が早すぎるリズムを安定させるためだとしたら、こちらはリズムに乗せて足を出やすくするイメージです。

≪実演≫

ここで試して欲しいポイントが一つ!
相手の方にも歌ってもらいましょう。
人は歌のリズムに合わせることで体を動かしやすくなるので、足も出やすくなります。

【応用篇】


慣れてきたら、歌に合わせて立ち上がりから歩行介助まで一連の流れでできるようになります。
こんな感じです。

(手を取りながら足踏み)1,2,1,2
♪幸せは 歩いてこない
だから歩いて…1,2の3!(立ち上がり)
1日1歩 3日で3歩…(以降歩行介助)

曲を途切れさせることなく、歌いながら歩行介助ができる訳です。
最初は相手の方も介助者も慣れるのに時間がかかると思いますが、慣れるととてもスムーズに歩行介助が行えます。

【まとめ】


いかがだったでしょうか。
今回は「365歩のマーチを使った歩行介助」についてご紹介しました。
他にも「隣組」「ソーラン節」「リンゴの唄」など合う曲は色々あるので、バリエーションを替えながらトライしてみてください。
それではまた。


【 音活研究部 ― 投稿者 】
Leaf音楽療法センター
音楽療法士 上田 将来
シンガーソングライター/音楽療法士として音楽活動の傍ら、介護職員としてデイサービスに勤務。幅広く音楽を届けるために活動しながら、シニアの毎日を介護ケアという面からもサポートしている。

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