見出し画像

文化

わたしは田舎に住む人間である。お洒落な友達と遊ぼうとなれば軋む電車に30分以上揺られながら近くの都会まで出て、めいいっぱいのおめかしをして出かけるような人間である。遠い。

都会には「文化」が渦巻いているような気がする。ワクワクするような何か。誰かが何かを作り出し、それに呼応してさらに新しいものが生まれたり、古いものが生き返ったりしている。劇場、舞台、箱、喫茶店とか。何かを表現するために、もしくは湧き出る何かを形にしようと人がもがいてもいい場所がそこにはあるような気がする。

わたしの住む家の近くには、そういうものは全くと言っていいほど見当たらない。小さい頃からそういうものに触れる機会がなかったために、都会に出た時も、そう言った空間に憧れながらも怯える自分がいる。

何が言いたいかというと、都会に住処を構えてみたいということである。アイスコーヒーを注文して、悩み事をうんうん膨らませながらぼんやり時間を過ごしても許される空間が欲しい。時間ができた夜に、気になっていた展覧会に気軽に行ける環境が欲しい。小さな劇場で、めいいっぱいの演技に心震わせてつい通ってしまうような時間が、距離感が欲しい。

一度も都会で暮らしをしたことがないので、本当はもっと大変なことがあって、思い描いたような理想はないのかもしれない。けれどここにいては絶対に交わることのない「文化」に触れられると思うと、羨ましくて無性に悔しい。

田舎にもいいところはあるでしょ、と思ったそこのあなた。有名な展覧会はどこで開かれているか、やはり人が集まる場所のはずである。東京、東京、大阪、東京、大阪、名古屋。ポスターをみて心揺さぶられた展覧会、舞台は殆どが大都市と呼ばれる場所で行われているではないか!

コロナ禍で少しはオンラインで楽しめるものも増えてきてはいるが、その空間にいて、その時間を過ごして、その余韻を味わうというのは、実際に行ってないとわからないものではないか。

今都会に住んでいる人に、ああして欲しい、こうして欲しいと何かを望んでいるわけではなく、ただ現状に不貞腐れている人間がここにいるんだなと思って欲しい。これはただの愚痴である。

でもいずれ自分で住処を決められるようになったとき、やがてとても忙しく、日々を生きるので精一杯になっていたとしても、今感じている「文化」への気持ちを忘れないでいたいと思う。

もしこの文章をここまで読んでくださった、同じ田舎に住む皆さん。もし解決方法があるのであればぜひ教えていただきたいのです。頼みます。


今日もわたしは半分ヤケになりながら、iphoneから流れるジャズを聴きながら、家をカフェ風にして乗り切る。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?