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【AND PET】#4 ビタミンDは足りていますか?

猫の毛づくろいは何のため?

猫は1日の半分~3分の2を寝て過ごし、そして残りの時間の多くを毛づくろいに費やすといわれています。我が家の猫を観察してみても、確かに毛づくろいが頻繁。時には私がなでたところを、すかさず、しかも念入りになめたりします。自分が汚く思われているようでちょっと切ない……。

そんな猫の毛づくろいには「体を清潔にする」「気持ちを落ち着かせる」など様々な理由が考えられていますが、「ビタミンDの補給」もその1つ。猫は紫外線を浴びると皮膚にビタミンDが生成され、毛づくろいでそれを摂取しているのだそうです。ただし、猫が体で作るビタミンDの量はあまり多くなく、食事で補わなければいけません。キャットフードにもビタミンDもしくはビタミンD3(ビタミンDの一種)が含まれています。

2020年11月に生まれた赤ちゃんパンダ、楓浜も、ビタミンDの生成や運動のために4月から1日20分ほどの日光浴を始めました。また、草食の爬虫類は食事でのビタミンD3の摂取が難しく、日光浴を行うそうです。

実は、人間も皮膚に紫外線を浴びることでビタミンDを生成しています。人間の皮膚にある7-デヒドロコレステロール(プロビタミンD3)に紫外線(UV-B)が当たるとプレビタミンD3が作られ、体温によってビタミンD3に変わるのです。猫のようになめて摂取する必要はありませんが、人間にとって大きなビタミンDの供給源が、この7-デヒドロコレステロール(プロビタミンD3)。そう考えると紫外線に当たらねば!という気持ちに……はなりませんよね。

これから夏にかけて強さを増していく紫外線は、お肌の大敵。紫外線を長期間、無防備に浴び続けることによるエイジング現象を「光老化」といいますが、肌のシミやシワ、たるみといった老化はこの光老化の影響が8割を占めるといわれています。

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出典:気象庁ホームページ (https://www.data.jma.go.jp/gmd/env/uvhp/link_uvindex_month54.html)「日最大UVインデックス(解析値)の年間推移グラフ」 ※UVインデックスとは紫外線が人体に及ぼす影響の度合いをわかりやすく示すために、紫外線の強さを指標化したもの。

私たちにビタミンDが不可欠な理由

紫外線にはUV-AとUV-Bがあり、波長の長いUV-Aは肌の奥の真皮まで届き、コラーゲンやエラスチンに影響を及ぼしてシワやたるみを引き起こします。ビタミンDの生成を助けるUV-Bは日焼けを起こす力が強く、メラニン色素を増やすためシミやそばかすの原因になります。しかも、年齢を重ねると肌の新陳代謝が衰えてメラニン色素を細胞の外に出す力が弱まり、シミができやすくなるのだとか。

夏になると日焼け止めや日傘、アームカバー、サングラスで対策を始める人が増えますが、紫外線は1年中降り注いでいるもの。通年で対策していくのがおすすめです。

とはいえ、日本人はビタミンDが不足気味。ビタミンDにはカルシウムやリンの吸収を助け、骨や歯を丈夫にする働きがあり、女性は妊娠に向けた体づくりや生まれてくる赤ちゃんの健康のためにも十分なビタミンDの摂取が必要です。現在ビタミンDは、糖尿病や動脈硬化、うつ、花粉症などへの効果について研究が進められている他、免疫機能強化の可能性も指摘されています。コロナ禍において、これは気になるニュースでしょう。

ビタミンD不足には、過度の紫外線対策と偏った食生活が影響しているとの見解があります。公益財団法人骨粗鬆症財団では、夏なら木陰で30分、冬なら手や顔に1時間程度、日光に当たれば十分としていますので、こちらを参考に、適度に日光浴をしながら食事でのビタミンD摂取を心がけていくのがよさそうです。ビタミンDが多く含まれる食品は、シラスやサケなどの魚介類と、きくらげやしいたけなどのキノコ類。ビタミンDを摂り過ぎると高カルシウム血症や腎障害などを起こす場合がありますが、日常生活レベルの日光浴や食事で過剰摂取になる心配はないとされています。

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シラスやサケなどの魚介類、きくらげやしいたけなどのキノコ類にはビタミンDが豊富。

東向きの窓で朝日を浴びるのが、我が家の猫のモーニングルーティン。UV-Bはガラスに遮られてしまうので、ビタミンDのことを考えると窓は開けた方がよいのでしょう。日差しの強さや時間に気をつけながら、私も猫と一緒に日光浴をしたいと思います。

文・横山珠世
女一人と猫一匹の暮らしから人と猫が共に健康で幸せに生きていく術を考える、株式会社ジャパンライフデザインシステムズの編集兼ライター。『セルフドクター』や書籍などの制作・発行に携わる。