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[論文自己紹介] バイオロギングしてない論文を書いた

(バイオロギング研究会会報 2015年7月号より)


つい先日、以下の論文が公開されました。

Shiomi, K., Lötberg, U. & Åkesson, S. (2015) 
Seasonal distributions of Caspi an Terns (Hydroprogne caspia) from Swedish populations revealed by recover ies and resightings of ringed birds.
Ringing & Migration, 30 (1), 22-36

この論文は、スウェーデンで1920年代から続けられてきたオニアジサシの足環調査の結果をまとめたものです。40 ヶ国以上から寄せられた 2000 以上の回収・目撃情報から、スウェーデンで繁殖するオニアジサシの渡りや越冬に重要かもしれないエリアについて考察しました。

個人的に興味深かったのは、足環の回収情報によると越冬地までの渡り距離が最大 6000km 以上で、北米など世界の他の個体群に比べると 2 倍以上にもなっていたことです。冬期にもっとも多くの足環が回収された場所はアフリカのマリで、サハラ砂漠超えをしている個体も多いようです。このように渡りの経路的にも(おそらく)スケジュール的にも他の地域より大変であることが、スウェーデンを含むバルト海域でだけオニアジサシの繁殖個体数が減少していることと関係しているんじゃないかと想像しています。

そのあたりをさらに詳しく調べるために、GPS ロガーで 1 年間の移動経路デ ータを取ることを目指しているわけなのですが、なかなかうまいこといかず、3 年目の今年の調査も収穫ゼロで終わってしまいました(※繁殖期のデータは取れています)。足環調査によって得られる情報はもちろん貴重なものであると思うのですが、例えば「2000年以降、オランダでの足環個体目撃数が急増していたのは、オランダで足環個体探しをものすごくがんばった人がいたせいらしい。」 ...というような知る由もないバイアスも多々あるようで、データから言えることの限界についても嫌というほど考えさせられました。やはり、渡り経路をばっちり再現したデータを早く見てみたいのです。

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↑ よく見ると足環がついているオニアジサシ。足環番号の読みとりもなかなか難しい。

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