ポメ部長の叱咤激励(仮題) 第2話 『新しい祭り』
「田尻町のまちおこし企画やってくれてるの誰だっけ?」
「私です」
「こたつ君か。進捗どんな感じ?」
「ほぼほぼ出来上がってます。こんな感じでどうでしょうか?」
「えーっと、<田尻町に新しい祭りを作ろう、だんじり祭り>?」
「そうです。やはり人が集うのはなんといってもお祭りだと考えました。それと”たじり”と”だんじり”で踏んでます。」
「で。なにやるの、え? 何これ、木製の巨大な山車で街を駆け抜ける?」
「そうです」
「ゼロから巨大な山車作るとかすんごいコストかかるよ」
「そのへんは寄付を募ってカバーできればと思っています」
「寄付ったって足りるの?」
「企業にスポンサーになってもらって、山車の側面に社名のロゴのステッカー貼るようにすれば。宣伝効果もありますので」
「F1みたいに?」
「あ、そんな感じです。うちにはスポーツ事業部のノウハウもありますし」
「そんな山車見たことないよ。いいの? 山車とか祭りとかもうちょっとなんていうか神聖なものっていうかさ、あんまり広告がばーんっていうのはさまずい気がするんだけど」
「ある意味、地域の一致団結感が出るかなと思いまして」
「ま、いいや。で、街の人がみんなで引っ張るわけ?」
「そうです」
「これさ、ルート案も描いてくれてるけど、めっちゃ住宅街じゃん。あのあたり狭いよ。ぜったい塀とか電柱とかぶつかって壊れるよ。ていうか、生活道路をクルマが暴走するって今絶対やっちゃいけないやつでしょ」
「そのへんは、お祭りなのでスルーしてもらうか、逆に縁起物だなみたいな雰囲気を作れればと思っています」
「この、交差点を直角に曲がるとこ、何箇所かあるけど、どうすんの?」
「そうなんですよ、そこはですね、一番の盛り上がりポイントですね」
「山車って曲がれるの?」
「勢いつけて車輪滑らせながら豪快に…いければって思ってます。なんかネーミングとか付けたりとかして」
「滑らす? できんの?そんなこと。最近さ、コンプライアンスとかリスクアセスメントとかすんごいうるさいの知ってるでしょ。こんな企画絶対当局が許可してくれないよ」
「そこはなんとか事前のネゴで」
「無理でしょ」
「とりあえず感触だけは探ってみます」
「しかもこれ、山車の屋根に人乗るの!?」
「そのほうがさらに盛り上がると思いまして」
「危険すぎるでしょ、ジャッキー・チェンじゃないんだから!」
「え、それ誰ですか?」
「え、いや、ジャッk、まあいいや」
「すいません、わかんないです」
「大体さ、こたつ君の企画、今までからも危険なの多いんだよ。どこだっけ、あの丸太にまたがって山から滑り降りていくやつ」
「長野県の御柱祭ですね。でもあれすごく好評で、市役所の観光課の人から、七年に一度と言わず毎年やりましょうよってメール来てましたよ」
「マジで? あと、あの、滝の上にしめ縄渡すやつも結構危ないでしょ」
「那智の滝のやつですね? あれはあれで結構観光客増加に貢献してるみたいですよ。テレビの取材も来てるそうですし」
「好評なら良いんだけどさあ、ほんと怪我とか事故とか勘弁してよな。謝罪会見とかやだよ、おれ」
「そこはノリでなんとか丸めこもうと思ってます」
「ノリじゃ無理だろ」
続く。