号令

みんながんばろう、心をひとつに。一致団結して。

便利な言葉は、言葉というより号令だ。
ただの大きな音のひとつにすぎなくて、残響が耳にだけ残る。あるいは無言の号令もまた怖い。なにも言われていないのに、動かされてしまう、大きな力もまた号令ではないだろうか。私たちは号令に支配されて、号令のままに動くことを求めてはいないはずだ。そうして号令ではない、本当に必要な言葉を探している。

本当にほしい言葉は、そんな簡単には見つからない。

空白を埋める言葉がほしいのに、空虚な言葉だけが飛び交うのはうんざりだ。でも、テレビをみても、ネットを見ても、同じようにむなしい言葉が飛び交っている。大きな声にかき消されそうな小さな声を拾って集めていきたい。そうやって集めた言葉をどこかにおいて、ときどき取り出していきたい。

光をあつめるガラスの中身は透明で、だけど確かに目には見えない、いろんな光があることを教えてくれる。そんな、小さな声で語られる言葉をあつめることができる装置を探している。