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好きな氷菓子の話

 こう暑いと、ついつい冷凍庫に手が伸びる。食べ過ぎはよくないと頭にあっても、嗚呼アイスよアイス、どうしてそんなに魅惑的なの。

 幼い頃、祖父に連れられてデパートに行くお楽しみが地下で売っていたジェラートだった。コーンとカップが選べた。祖父が地下で買い物をしている間、店にぐるりと設えられた壁と一体化した椅子に座り、ジェラートを舐めて待つのがお決まりだった。
 幼い子どもにコンビニで買うアイスとジェラートの区別なんてつかなかったが、あの色とりどりの素敵な塊を金属の器具で掬って盛り付けてもらうワクワクは、確かに特別なものだった。
 もうあのジェラート屋は無い。今他のジェラートを食べたって、きっとあのワクワクは蘇らない。

 バニラ味があまり好きではなかった。ソフトクリームもアイスクリームも、選べるならチョコレート一択だった。一方で兄弟はバニラ味が好きだったので、「一つを半分に分ける」となるとどちらの味にするかでギャースカ争った。大抵私の負けだった。兄姉の権力は強い。今も好みは変わっていないが、兄弟は「一口ちょうだい」を使う。私は一口欲しくないので、やや不平等である。
 昔家族でよく行ったホームセンターの駐車場に、大判焼きとアイスクリームを売る店があった。いつもアイスクリームの食品サンプルに心惹かれながら、買ってもらえたのはバニラのソフトクリームだった。一人では食べきれないことを見越して、兄弟と半分こする前提で。
 そのホームセンターも今は無い。それに、今の私ならソフトクリームではなく食品サンプルのアイスクリームを選ぶ。昔はミントが苦手でどのみち食べられなかったチョコミント。因みに兄弟はチョコミントが苦手なので、一口残らず一人占めだ。

 アイス「クリーム」やソフト「クリーム」より好きなのが、シャーベットである。祖父のお土産の定番が柚子と葡萄のシャーベットだった。少々値が張るだけの濃い味わいで、私の大好物だった。
 思えばジェラートでも果物ばかり頼んでいたから、私はクリーム系より果物の味がダイレクトに伝わる方が好きなのだろう。あのスプーンを差し込むときのサクッとした手応えが、なんとも涼しさを感じて心地よかった。

 そんな私がもっとも愛してやまない氷菓子、それは「アイスクリン」である。
 まつわる思い出など何もないのだが、とにかく好みなのだ。あのあっさりしてくどくない玉子と牛乳の優しい味。シャリシャリしてすぐ溶ける食感。近所のスーパーでよく売っていたのに、あるときから急に見なくなった。カップの個別売りのはあるが、私が食べていたのは棒アイス状で箱入りのものだ。あんまりにも食べたかったので、自作しようとレシピを調べて……夏が過ぎていった。今年こそ作ってみようか。すぐ作れると思うものほど急に腰が重くなるのは何故なのか。

 憧れはババヘラアイスである。是非とも現地で食べたい。花の形に盛るプロの技を見たい。
 しかし、皆さんの稼ぎ時といえど最近の夏は暑すぎる。現地の気温がいかほどかわからないが、熱中症に気を付けてほしい。涼しい屋内で売ってほしい。涼しい中で食べるのも、何の問題もなく美味しいはずだから。

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