見出し画像

自分の玉(ぎょく)を探す

 玉石混淆から掘り出し物を探し出すのが大好きである。だからお目当ての物があるなら整理整頓された店を選ぶが、お宝探しのときは雑多な並びの店がいい。
 古道具屋。古本屋。古道具屋。ディスカウントストア。値引き商品のワゴン。蚤の市。次来たときも売ってるとは限らない、一期一会の出会い。たとえ出会いを逃し空振りしても、「今日こそは何かあるかも」と再来店。最早ギャンブルである。
 それでもお宝探しはとても楽しい。探している時間が何より楽しいのだ。自分が見つけるのか向こうから呼ばれているのか。呼ばれていると考える方が好きなのだが、このあるかなしかの細い縁を手繰り寄せるように品物をかき分ける時間がわくわくする。玉と目が合い「これぞ」と震える瞬間、ドーパミンが溢れ出る。それに酔って気付くと余分な買い物をしていることもしばしばだ。売り手の戦略にまんまとハマっているが、それもまた良し。
 アイコンに設定した羊もそんな玉のひとつ。雑貨屋のショーウィンドウ越しに一目惚れした。よく見ると瞳孔が横長ではなく丸なので、他の動物用に作られた目をつけられたのかもしれない。体を押すと鳴くらしいが、店での動作確認のときから鳴かなかった。そんなところが愛おしい。買ったときに名前をつけたのだが、変に凝った名前をつけたせいで馴染まず今や覚えていない。アイコンで私の代理を務めてくれることから、改めて「メェ」と呼ぶことにした。10年近く昔の出会いが思わぬ形で現在に繋がる。こんな面白いことが起こるから、お宝探しはやめられない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?