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思い出 映画「オズ Return To OZ」

 不気味。恐い。なのに、何度も見ずにはいられなかった作品。幼い私に妖しさという魅力を教えてしまった作品。ついでに洋画=ホラーという偏見も植え付けた作品。それがタイトルの「オズ Return To OZ」(以下『オズ』)である。
 因みに私が見ていたのは市販のビデオテープで、日本国内向けにはDVD化やBlu-ray Disc化がされていないようである。そのビデオテープもウン10年前に貸したきり返ってこなかったため現在手元にない。映画配信サイト等で視聴可能かどうかわからないが、私個人に限って言えば二度と見ることができない名作である。
※海外版のディスクはあるらしい。

 ストーリーは、「オズの魔法使い」のその後。しかしここでジュディ・ガーランド主演の映画や原作のイメージをすると、ショックを受けることになる。そのショックはストーリー上必要かもしれないが、とりあえず子ども向きではない。子ども向きじゃないものを何故子どもに見せていたのだ我が家よ。

 ストーリーに戻る。オズの国からカンザスの家に戻ったドロシーは不眠症になっていた。おまけにオズの国のことを、叔父と叔母から「ハリケーンのショックから生じた妄想」と思われ半ば精神病扱いされていた。ドロシーのことを案じた2人は、電気で精神病を治療できると謳うドクターにドロシーを託す。入院することになったドロシーは、そこで不思議な少女と出会う。その晩、ドロシーが治療を受ける寸前に停電が発生。不思議な少女に助け出されたドロシーは少女とともに逃げ出す。実はドクターの治療法は危険であり、既に何人も犠牲者が出ていたのだった。追っ手から逃れるため2人は川に飛び込み、流れてきた檻状の木箱に入る。ドロシーはそのまま眠ってしまい、目が覚めたときにはあのオズの国に流れ着いていた。
 この導入部分で十分恐い。何せオープニングもおどろおどろしいメロディーと真っ暗な夜空に輝く星。ドクターの施設は不気味で、輪をかけてそこのスタッフが不気味で恐い。唯一の救いである不思議な少女も、何故か鏡の中にいたりふと目を離した瞬間にいなくなったりする。しかもオズの国に流れ着いたときにこの少女はおらず安否不明。幼いドロシーの不安や恐怖をこれでもかと詰め込んだようである。
 ジュディ・ガーランド版との共通点もある。それは「一人二役」である。ジュディ・ガーランド版はこれにより「オズの国はドロシーの見た夢の話である」ということが示されているのだと思う。「オズ」の場合は「夢か現実かわからない」というのが私の感想だが、少なくとも「ドロシーの悪夢」がイメージされているのではないかと思う。何せカンザスで恐い思いをさせたドクターやスタッフたちが不気味で恐ろしい悪役として登場するのだ。この悪役たちのデザインがまた秀逸だと思う。特に「ホイラーズ」と呼ばれる兵隊たちが……本当にトラウマだった。演じるのもかなり難しそうなデザインである。

 本編はこれ以上進めるとネタバレになりそうなので割愛するが、児童書が原作であることを忘れそうな展開があり、私の最大のトラウマが登場する。私はこれで美容室のマネキン(?)を見て泣き出すようになった。本編を知っている人なら納得してくれるだろう。
 このようにたびたびトラウマを植え付けられた作品なのだが、同時にとても惹き付けられた。主役のドロシーが可愛いのもあったが、ストーリー、世界観、出てくるアイテム等々に不気味さと美しさを感じた。恐い、でも見たい。見たくない、でも面白い。相反する感情の中に娯楽性を見出だせるようになると、「恐い」は「だから面白い」となり「不気味」は「だからステキ」となった。結果お気に入りとなり、私の感性を育てる一端を担ったなんて。○○をねじ曲げられるとはこういうことか。

 童話モチーフのホラー作品が好きな人には是非オススメしたい作品である。何らかのフェチズムもくすぐられる。廃墟、城、鍵、鍵穴、鏡、美少女、美しい日替わり○○(私のトラウマ)、エメラルド、人力馬車、収集品、ネジ式○○○○etc.
 鬱と美しいをかけて「鬱くしい」という表現があるらしいが、「オズ」もそう表せるかもしれない。ドロシーは何故再びオズの国へ辿り着いたのか。カンザスへ帰れるのか。ところであのドクターやら美少女はどうなった? 気になった方は、どうにか頑張って本編を視聴してほしい。文字でストーリーを知るより断然本編視聴をオススメしたい。動くホイラーズに追いかけられる恐怖を是非共有してほしい。

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