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女性画家とフランス語

日めくりルーヴル 2021年5月16日(日)
『ヴィジェ=ルブラン夫人と娘』(1789年)
エリザベト=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン(1755−1842年)

私がヴィジェ=ルブランについて知っていることは、
① フランス人の女性画家
② マリー=アントワネットと同じ年齢で、彼女の肖像画を多く描き、

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③ 自画像も描いている、美人さん

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④ 【ロココ芸術】かしら?
くらいです。

『名画100選』類の入門書(初心者用)にあまり掲載されていない画家である
 + 個人的に【ロココ芸術】に興味がなかった
 = これまでヴィジェ=ルブランについて深く知ろうとしたことはありませんでした。
それどころか、彼女が描くマリー=アントワネットの肖像画を見て
「女性が描く、女性的な作品だなぁ」と、
そして彼女が描く彼女(自画像)を見て
「誰よりも自分自身を愛していたのだなぁ」と、失礼な見方をしていました。
そんな偏った感想を持つ原因は、彼女とそして私が「女性であることを強く意識」して生きてきたことにありそうです。

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20〜30代前半、私のモットーは、
「女性であることに甘えずに、女性であることを忘れずに。」でした。
… 仕事でもプライベートでも「女性だから仕方ない」と諦めないこと、ただし、女性ならではの気配りや包容力を大切にすること。

女性であることを意識しないようにすればするほど、自分が女性であることを思い知らされましたが💦。

そのせいでしょうか。「女性らしい何か」を見つけると、敢えてそこから距離を置き、嫌悪感すら抱いていたような気がします。その対象は
パステルカラー、フリフリ・キラキラ✨(←まさにロココ⁈)。
同世代の女性たちが興じていた合コン、海外旅行。
そして花嫁修行と呼ばれていた お茶・お花、料理まで…(こらこらっ💢)。

中型二輪の免許を取って、洋服はダークな色ばかり、趣味は釣りにゴルフ…。
昨今 世間から批判を受けた広報官ではありませんが「飲みに誘われたら断りません」(笑)。
肩で風を切って歩く…ツッパリでした、若かったのですね。

今は肩の力が抜けて、とても楽に過ごしています。仕事もプライベートも。
そして、性別を意識していない人が生み出すもの(音楽、映画、芸術作品)に触れると、ニュートラルな鑑賞者としてすんなり受け入れることができます。作者の性別など全く気にならないのです。
しかし今でも、表現者がことさらに “女性” を意識していることを感じ取った途端に、急に肩の力が入って “ガラスの壁” を作ってしまうようです。これは癖ですね(笑)。

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さて、ヴィジェ=ルブラン。
「女性が社会に出て仕事をする⁈ ましてや画家⁈。とんでもない!」とされた18世紀後半・フランス。男性が築き上げた芸術界に飛び込んで成功を収めるため、彼女にどれほどの試練と苦労があったのか…、想像することもできません。
自分のことを美しく描く自画像は、画家としての自分を売り込むためのプロモーション的な役割もあったと聞きます。女性であることを受け入れ、ときにはそれを武器にして生きていく以外に道はなかったのですね。

もっと彼女のことが知りたい!
と思ったのですが、自宅の本棚にあまり参考資料がありませんでした。
そこで、久し振りに “パリBag”(2019年秋に訪れたパリで購入した、本、書類、お土産などを入れている大きな袋)を開けてみました。

おっ。『Leplus Grand Musée Monde』(世界最大の美術館)が出てきました。

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パリで自分用に購入した美術書。
縦10㌢×横14㌢のミニブックながら、ジョットからアンディ・ウォーホールまで100人の画家100作品を紹介している優れもの。
見開きページ右に作品、左にその解説が書いてあります。

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解説が フランス語と英語で書かれているので、これを教科書にしてフランス語の勉強をしよう!と意気込んで購入したのを覚えています。
それきり “パリBag” で眠っていたのね…ごめんなさい(涙)。

ページをめくると、やはり素敵✨。
そして見ているとフランス語の勉強がしたくなります(笑)。「じゃあ、やりなさい!」とどこからか声がします💦。

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本日のカレンダー作品『ヴィジェ=ルブラン夫人と娘』も発見しました。

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作品のフランス語 解説がこちら。

Une mère et sa fille enlacées devant nous... Ce ne serait pas très original, se nous n’étions pas au xviii siècle. En effet, Vigee Le Brun montre à quel point la tendresse est importante. Dans un contexte philosophique où l’amour maternel et l’éducation des enfants sont placés au premier plan, l’artiste devient la spécialiste de ces scènes affectueuses. Elle représente même la reine Marie-Antoinette avec ses enfants. Un portrait officiel incompris : pour tous, la reine n‘est pas une mère, elle est le pouvoir!

英語版がこちら。

A mother and her daughter embrace before us. This would not be very original were it not for the fact that this is the 18th century. Vigee Le Brun shows us the importance of tenderness. In a philosophical context in which maternal love and the education of children were deemed important, the artist specialized in such scenes of affection. She even depicted Queen Marie-Antoinette with her children. This official portrait was misunderstood: in everyone’s eyes, the queen was not a mother, but rather the embodiment of power.

これを私流にザックリ日本語にすると、こんな感じでしょうか。

それまでは子供に無関心であった18世紀後半に 新しく提唱された家族観が、
「子は国家の宝。愛情を注いで教育することが重要である」というもの。これに基づいて多く描かれるようになったのが、母と子供の慈愛に満ちたシーン。
ヴィジェ=ルブランが自分と娘を描いたこの作品もまさにそんな一枚です。
一方で彼女は、子供たちと一緒にいるマリー・アントワネットも描いています。そこに描かれている王妃は、誰が見ても母親でなはく権力の象徴!と誤解されています。

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左)『マリー=アントワネットと子供たち』

いやぁ〜。勉強になりますね。
フランス語と英語を並べて見ていると、共通する単語(太字)も多くて面白い!。
英語をしっかりマスターしたならば、フランス語の習得も夢ではないかもしれません。

と、話を作品に戻します。
短い解説ですが、絵画鑑賞をする私にとっても いろいろ勉強になります。
確かに 王妃の表情やポーズからは、愛情溢れる母親らしさを感じ取ることはできません。しかしこのとき王妃は、生まれてすぐ亡くなった次女を想い 悲しみに暮れていたそうです(画面右のベービーベッドが黒色ですね)。
ヴィジェ=ルブランは冷淡な王妃を描いたのではなく、親密な関係にあったマリー=アントワネットの “ありのままの姿” =慈愛に満ちた母親を描いたのかもしれません。

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“女性であることを強く意識” せざるを得なかったヴィジェ=ルブラン。
今回、勝手に共感を覚えて少し興奮しております。

彼女を知る人や美術史家が語るヴィジェ=ルブランではなく、
彼女自身が語るヴェジェ=ルブラン
のことが知りたくなりました。
80歳を超えて彼女が残した『回顧録』なるものが読んでみたい!!!自分の生き方についてどんな風に感じ考えていたのか…。
本を探してみます。

フランス語どころか英語もカタコト。未だに何の努力していない私に、ヴィジェ=ルブランのことを語る資格はありません。もっと彼女の作品を見て、彼女の『回顧録』を読んで 改めて投稿することにします。

<終わり>

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