温故知新 <日本人のための大麻の教科書 「古くて新しい農作物」の再発見> 感想

2021年6月24日に宮台真司・ジョー横溝、ダースレイダーが出演している番組、深掘りTVにある人物がゲスト出演した。
大麻博物館館長、高安淳一氏が出演した。
氏の肩書通り、大麻のことについて説明している番組である。
また、大麻博物館は「丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニー」というyoutubeチャンネルでも紹介されており、その動画では富野由悠季やGレコが大麻に関係のあるものとして、紹介された。
私は大麻博物館が執筆した<日本人のための大麻の教科書 「古くて新しい農作物」の再発見>を読んだため、その感想をここに記す。


1.本の目的について

一般人が大麻と聞くと何を思い浮かべるだろうか。
多くの人は危ない麻薬と思い浮かべるだろうし、興味を持っている人はCBD(カンナビジオール)を知っていたりするだろう。
だが、本書では向精神作用のTHC(テトラヒドロカンナビノール)とCBDではなくて、古くから日本の衣食住を支えてきた「大麻という農作物」について学ぶのが目的である。
70年前まで大麻は日本人にとって非常に身近な存在であった。それにも関わらず「危ない麻薬」になってしまった。そんな理由を知ることができる本である。

2.言葉の定義

「大麻」、「ヘンプ」、「マリファナ」は同じ植物を表している。
大麻とマリファナは危険な薬物、「ヘンプ」は衣服の原料であるというのが多くの人の認識だろう。

また、大麻を日本語辞典で調べると、麻の別称という言葉が出てくる。
他にも神宮から授与するお礼、神に祈るときに捧げ、祓いに使う幣なども意味として出てくる。
大麻は神道と関わりのある植物なのだ。

一般的には衣服の原料となる植物を麻と呼んでいるのだが、法律ではリネン、ラミーを麻と呼んでいる。
一般的な呼称と法律での呼称、麻薬としての大麻のイメージが「農作物としての大麻」の定義をややこしくしているのだろう。
本書の目的は「農作物としての大麻」を理解することであるから、麻を大麻と呼ぶのだ。

3.感想

大麻と神道に関係性があることは安倍昭恵の大麻合法化の動向を見ていたので、推測していた。保守政党の首相夫人が大麻合法化を応援していた、とあるから関係があるのだろうなと思った。

大麻と日本が関係があることが分かって良かった。
例えば、日本の地名や苗字と大麻が関係あることが分かった。
日本の苗字には地名と関係のあるものがある。
その中で「麻」と漢字の付くものは麻井、麻原、麻生、麻裏、麻倉などがある。
また、地名でも麻に関連のあるものは、北海道江別市の大麻(おおあさ)や麻織物が知られる岩手県雫石町の麻見田、東京都港区の麻布などがある。

ことわざにも麻が使われているものはある。
有名なのは快刀乱麻を断つ、や麻の中の蓬、である。
それらの意味は読者諸君に調べてほしい。

かつて大麻はコカインやアヘンなどのように麻薬の一種として、国際的に規制されていたが現在ではてんかんや緑内障などの医薬品として注目されている。
つまり、医療大麻だ。
だが、日本では中国から麻の体系的な知識が伝わり、日本においても百科事典が作られ大麻についてもまとめられている。
明治時代には西洋医学との融合が起こり、漢方は現在でも生き残った。
日本や中国では大麻が体系的にまとめられて、国際的にも麻薬として規制された大麻だが、現在は欧米では医療大麻として使われているものの日本では規制されているのだ。

4.結論

この本を読んで、古きものにこそ新しい知識が宿るのだなと思った。
地名だったり、人名だったりと日本の伝統や習慣にかかわりがあるのだと分かった。
ことわざに大麻由来の言葉があったりと、人々に危険な麻薬と思われても言葉が残っていることは、大麻と日本人は密接につながっているのだと思った。
また、現在では危険な薬物と思われている大麻がかつて日本や中国では薬として体系的に理解されていたこと、海外での大麻合法化よりも先に先人たちが医薬品としての大麻に注目していたことが分かって良かった。


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